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【デ・ゼルビ参考】 プレーアイデアが瞬時に仕込まれるチームの練習方法とは?

「やりたいチームプレーが現象として出ない…」
「チームの構築には一定の時間が必要だから…」

なかなか結果がすぐに出ないようなチームにおいて、よく聞くフレーズだと思います。チーム構築において一定の時間を要するという点に関しては僕もそう思います。

実際にバルセロナの育成現場でも同じ監督がシーズンをリピートするようなチームの方が完成度が高かったりするし、結果も出ている印象もあります。

ただそうは言いつつも、まだ就任して数試合しかこなしていないのにも関わらず、監督のアイデアがすっかりチームに浸透して結果を出してしまうようなチームもあるわけですよね。

例えば、三苫選手も所属するデゼルビのブライトン。彼が就任してから、彼自身のアイデアがチームに浸透するまでのスピードには驚くものがありました。

そんな光景を見てしまうと、やっぱり普段行うトレーニング内容に秘訣があるんだろうなと思わされますし、スピードを持ってプレーの現象を出すということもトレーニングの行い方次第では可能なのかなと思うわけです。

ということで、今回は実際にデ・ゼルビ率いるブライトンが行うトレーニングをピックアップしながら、なぜこのTR方法を用いれば試合において現象が起きやすいのか?までを具体的に解説していきます。

皆さんの指導方法のヒントにもなるかもしれません。

当記事の内容を動画で視聴されたい方はコチラ.

【この記事を書いてる人】

今回紹介するトレーニングは以下の自動化トレーニングの一種。まずはコチラの動画をご覧ください↓

※自動化トレーニングに関してはこちらの記事にて解説しているので、定義がイマイチわからないという方は初めにご購読ください↓

TR構造と配置について

それではトレーニングの構造と各チームの配置の話から入ります。まずは、各チーム(攻守)の配置と役割について。

まず攻撃の配置から見ていきます。結論、以下の画像のように2-2-3-3のような配置からスタート。両サイドバックはやや内側にポジションをとっていることも見れます。

※見方によっては2-3-2-3とも捉えることもできますが、正直ここの数字はそこまで重要じゃないです。

次に守備側チームの構造は最終ラインの4枚(ポールを立てている)を省いた2-3-1となっています。なぜ最終ラインのみポールを使用しているのかは後ほど解説します。

トレーニングの流れとしては以下の順序。

①CB間でパス交換をする
②SBが近づくデスマルケをしたのを合図に縦パスを入れる(監督が縦パスの合図を送っている可能性もあり)
③逆のCBが3人目としてボールを受ける(ボールの循環を早めるためにCB2枚と一列前の2枚の距離感は短め)
④相手2列目の真ん中がプレスに出る→その背中をアンカーの選手が追うようにサポートを作る
※以前紹介したシャドーアタックのサポートを参考に

⑤CBからインテリオールに縦パスが入る
⑥シャドーアタックをしていたアンカーが3人目として受ける
⑦逆側のインテリオールがボールを受けたと同時に、FWが裏を抜ける動きからフィニッシュ

ここまでがこのトレーニングの一連の流れになるわけですが、このくらいは皆さんも動画を見ればなんとなく理解ができると思います。

今回の記事で一番に話したかったのはこの構造の部分ではなく、冒頭にも言った「なぜデ・ゼルビのブライトンはあんなにも早くアイデアが現象として出たのか?」です。

自動化トレーニングの根本的なメリットを理解する

今回ブライトンも動画上で行っていた自動化トレーニングの根本的なメリットを理解すると見えてくるものがあります。

以下の画像上にも書かれている通り、自動化トレーニングは頭で理解をする理論というものを実際にピッチ上で行動に移す(意識的トレーニングと呼んでいる)最適な手段だと理解しています。

自動化トレーニング=情報発信機

おそらくですが、今回紹介しているデ・ゼルビのブライトンにしても、実際にグランドに出る前に選手たちと、プレーアイデアをまとめたようなビデオセッション等を行っていると思います。

確かに指導者によっては、選手たちが何か一種のロボットのようにプレーをしているのを見て「不確実性の多いフットボールにおいて意味がないんじゃないか?」と言われる方もいますが、自分の中ではやっぱり理論を行動に移すという意味では、利用シーンさえ間違えなければかなり有効なトレーニング形態の1つになるのかなと思っています。

自動化トレーニング ”ミックス形式”

もう少し具体的に見ていきます。結論、この自動化トレーニングの形態の中にもさらに細かなタイプの定義分けが可能になるのですが、今回紹介したのはその中の”ミックス形式”と言われるものに当てはまります↓

簡単にミックス形式の説明をすると、動画上でもあったように守備チーム4-2-3-1の2-3-1は実際の選手が配置され、一番後方の最終ライン4枚は選手ではなくポール設置されていたと思います。

ここの対峙する守備チームが、選手とポールでミックスされていることから、自動化トレーニングの敵ありver→ミックス形式と定義ができます。

動画を見る限り、DFの選手はボールを奪うことは禁止されていたように見えましたが、かなり強度高くプレスに出ていることから、上図❸が当てはまることが分かります。

今回の紹介動画が少し短かったのでアレですが、おそらくこのトレーニングを開始する前に、DFチームに対して「このようなプレスの掛け方を行ってほしい、このような方向性でプレスに出てくれ」と具体的な注文が与えられていると思います。

正直いうと、この形式は僕の中でもかなり好みではあって、「TRの中でリアリティ、再現性を持つ」とはよく言われることだと思いますが、そのような側面でも非常に効果的なトレーニングの1つと言えると思います。

もちろん、100%相手のプレス,ビルドアップの方法を想定することは不可能なわけですが、ある程度のプレスカウティング(事前データ,分析)から、相手がどのような出方をしてくるのか?の情報を選手に与えた上で、それに対して自チームはどのようなソリューションを持ちながらプレーをするのか?を簡潔化するためには有効だと考えます。

なぜ最終ラインはポールでの設定が有効なのか?


あとは今回のポイントでもあった、最終ラインをポールで設定していた点。

デゼルビに限らず、ルイスエンリケやグアルディオラなどもこの最終ラインのみポールを活用する光景は多く見られます。

やはり相手最終ラインにおいて、重要になる動き出しの1つに「DF間を突く動き出し」(SB-CB,CB-CB間)がある中で、その相手選手間をより明確に想像するために、初めはポール設定をするところから徐々に難易度を高めるという意味でも選手への設定に変えていくことは1つ有効な手段なのかなと思っています。

https://youtu.be/DOt-reyYP4c

その背景と意図を理解した上でTRを観察する


指導者をするにあたって、TRが大事ということは皆さんも十分にわかると思います。時間があるときに違うチームのTRを覗きに行ってみたり、運が良ければトップの公開トレーニングを見に行ったりする指導者も多いと思います。

ただなんとなく見てしまったり、「このトレーニングすごいな!」だけの感想で終わるのではなく、今回説明をしてきたようにそのチームの背景や監督が持つ意図までも把握して見ることができると、学びの深さや楽しさが増します。

バルセロナの指導者学校でもTRメソッド科目の受講が必須で、トレーニングの形式を整理する学びを1年間かけて進めるわけですが、ここが整理されるとやはり目の前のTRに対する見方がかなり変わります。

なのでやはりこの各トレーニング形式のメリット・デメリットを整理しながら自分の形を確立していくことは非常に重要なことだと感じます。

最後に少し余談ですが、僕自身もフットボールシアターというサッカー指導者のためのオンラインスクールというプラットフォームを作って、このメソッド分野に関しても整理したものを生徒の方々にも発信したりしているので興味のある方はぜひ以下のリンクより覗いてみてください!

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