古代の薩摩940年 #45

第二部 弥生時代 太郎の思いやり
次郎が志布志村立ち上げ企画の責任者に指名されたという。港の建設と周辺の森林地帯の開拓・開発をまかされたという。これは一家そろって次郎を男にするのが使命だと父に話し、母も三郎を連れて一家で志布志に行くことになった。四郎はおりょうおばさんがいるから大丈夫だろう。現場に行くと大勢の人がもう働いている。今回は隼軍団第3隊も応援にきていた。昼飯を済ませてさあ、と立ち上がった時、海岸に一隻の中型船が入ってきた。あれは漢の国の船だと誰かが叫んだ。それからはてんやわんやの大騒ぎになった。見る間に30~40人の漢人(かんひと)が上陸を始めた。武器を手にしている。しかし次郎は落ち着いている。漢の言葉も話せるが、ここは副長段小七が交渉に出向いた。倭の国に住むために来たという。戦いで決着をつけたいという。倭の国は戦いの経験はないが、どうしてもというのなら受けて立とうと小七は言う。しばらくにらみあっていたが、次郎が面白い提案をした。こちらは戦えるのは10人しかいない。そちらは30人以上だろう。ちょっと卑怯ではないか?よく見ると向こうの隊長らしき人物は物のわかる風貌をしている。

次郎の秘策
1対1の勝負。馬から落ちた方が負け。こちらが負けたらここ一帯を明け渡すというもの。そんなのに乗ってくるわけがない。戦いは圧倒的にこちらが不利だ。隼軍団は以前、筑紫の戦いは経験したが、あれは実際には史進と魏応の二人が戦っただけである。
さて訓練はしてきているとはいうものの実戦は皆無だ。おまけにこちらの槍は先に玉をかぶせ布で覆ってあるではないか。あれでは人は殺せない。もちろん、健や史進、松蔵などの考えはわかった。どうなることかとハラハラしていると、なんとこれに向こうが乗ってきたではないか!次郎が広場の真ん中にたち、旗を振ったら戦闘開始。こちらはもちろん小七。むこうはというと張徳とかいういかにも強そうな偉丈夫である。ところが馬上での戦いとなると全くの互角、いつまでたっても勝負がつかない。そこで次郎は勝負を止めて、お互いに2番手を出すように指示。こうして5番手まで戦ったが、どうしても.勝負がつかない。よし、6番手までで勝負がつかない時は引き分けにしようというと敵も納得。向こうはこれまででもっとも強そうな大男を出してきた。どうする、次郎。

戦いはいかに?
次郎は林菫(りん・すみれ)を指名。これには敵が驚いた。おいおいあれは女ではないか。わが国に女武者がいたか?である。
張仁とかいう大男笑っているではないか。旗が振られ戦闘開始。次の瞬間には大男が馬から叩き落されていた。なんという早業。
双方の誰一人声もでない。ところが次の瞬間、両方からいっせいに拍手が沸き上がった。敵の隊長張順が敗北を認め、立ち去ろうとする。次郎はにこやかに話しかけ、今夜は一緒に食事をしようと提案。敵もよっぽどうれしかったのか万歳をして喜んでいる。きっと長旅で本当はくたくたなのかもしれない。張仁は菫と握手をしているではないか!
この夜の宴(うたげ)は漢人の歓迎会になった。志布志開発をいっしょにやろうという話もまとまり、明日からもっとにぎやかになりそうだ。それにしてもあの早業、父親ゆずりだろうか?
次郎よ、兄は安心したぞ。と心で喜んで、いつの間にか眠っていた。

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