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「逆境上等!」時代に立ち向かった男  【歴史奉行通信】第二十四号

こんばんは。
伊東潤メールマガジン
「第二十四号 歴史奉行通信」を
お届けいたします。

〓〓今週の歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓

1. はじめにー夏の京都へ

2. 「逆境上等!」時代に立ち向かった男

3. 幕末、明治期の快男児が見せる
「責任感」というリーダーの資質

4. 伊東潤Q&Aコーナー

5. お知らせ奉行通信

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1. はじめにー夏の京都へ

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七月末、
「中村芝翫(しかん)の京都ぶらり歴史探訪 
―織田信長と京都―」(2時間SP)
という番組の収録で、
京都に行ってきました。

比叡山延暦寺に始まり阿弥陀寺まで、
2泊3日で信長ゆかりの地をめぐり、
「信長の京都」を満喫してきました。

夏の京都はうだるほどの暑さで、
食欲もなくなるほどでした(苦笑)。

私はあまり汗をかかない質なので、
汗は目立ちませんでしたが、

説明するお坊さんと芝翫さんは、
汗がだらだら垂れていました。

放送日は9/4(火)の
19:00~23:00になります。
私は「信長編」2時間に出演します。
チャンネルはBS5です。

なぜ4時間枠なのかと言うと、
後半の2時間は秀吉編だからです。

この番組は旅と歴史がテーマですが、
今回は信長のイメージを
覆すものになったと思います。
どういう信長かは番組をご覧下さい。

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さて、前回のメルマガは、
10月発売の新作『男たちの船出』についての
書き下ろしエッセイでした。

実はこの作品には
原点ともいうべきものがあります。

それが『巨鯨の海』の姉妹編とも言える
鯨分限』です。

『鯨分限』は、
『巨鯨の海』の最終話『弥惣平の鐘』
にも登場した太地鯨組の棟梁・太地覚吾の一代記です。

先週8月8日、
『鯨分限』の文庫版が発売されました。

今回は、この作品を紹介する代わりに、
2015年11月に
東京新聞に掲載されたインタビュー記事と、
同時期に光文社の「小説宝石」に掲載された
ショートインタビューを再掲載します。

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2. 「逆境上等!」時代に立ち向かった男
(東京新聞掲載インタビュー)

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「今の世の中は
仕事への情熱とか責任感が欠けている。
誰が責任者なんだと思うことが度々ある」

新国立競技場の建設や
五輪エンブレムをめぐる混乱を
引き合いに出しながら、
作家は怒った。

「どんな苦難が待ち受けていようと、
嫌な仕事だろうと、
上に立つ者は逃げてはいけない。
それを伝えたかった」

今回の新作で描かれるのが、
紀伊半島の漁村・太地の
古式捕鯨集団「鯨組」の最後の棟梁、
太地覚吾という人物だ。

時は幕末から明治の激動期。
時代の変化の荒波とともに、
数々の試練が覚吾を襲う。

慢性的な鯨の不漁、

安政南海地震と津波による大被害、

蝦夷地(北海道)への進出を懸けた
資金調達の失敗。

そして「大背美流れ」
と呼ばれる大遭難事故では、
百人以上の部下が命を失った。

いずれも史実だ。

「どんな不運に遭っても神頼みはせず、
正面から立ち向かうのが覚吾。
結局時代には勝てなかったかもしれないが、
戦い抜いたという事実が大切」

同じく太地の鯨漁を描いた
『巨鯨の海』(2013年)の取材を通じ、
その存在を知った。
決して偉業を成し遂げたわけではない。

一見、歴史小説の主人公に据えるには
難しそうな人物だが、
「今の時代、夢を実現した成功譚より、
絶対にあきらめない男の話の方が
共感してもらえるんじゃないか」と考えた。

図らずも刊行の直後、
環太平洋連携協定(TPP)が
大筋合意に達した。

開国で海外捕鯨船の乱獲による
鯨の減少に直面した太地の苦悩は、
近い将来、海外との激しい競争にさらされる
日本の姿とも重なる。

「時代の激変期には、
ピンチをチャンスに変えようとする
発想の転換によって道は開けていく」

外資系企業に長く勤め、
四十二歳で初めて小説を書いたという
異色の経歴。

「ビジネスマン時代の経験から、
『本は売れてなんぼ』という考え方は
一面正しいとは思う。

ただ、次の世代に伝えていきたいことは、
それを度外視して書いていきたい」

「出版不況、結構じゃないですか。
私の座右の銘は『逆境上等』です」。

そう語る姿は、
太地覚吾その人とも重なって見えた。

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3. 幕末、明治期の快男児が見せる
「責任感」というリーダーの資質
(小説宝石 掲載インタビュー)

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――連作短編集「巨鯨の海」と同様、
紀州・太地の組織捕鯨が題材です。
今回、太地覚吾という実在の人物に絞って
描かれた理由は。

「以前から私は、
島崎藤村の「夜明け前」のような
時代の変革期を舞台にした作品を
書きたいと思っていました。

たまたま「巨鯨の海」の取材で、
幕末から明治維新にかけて
太地鯨組の棟梁だった
太地覚吾という男を知り、
「よし、この人物を通して
時代の変わり目を描こう。
海の『夜明け前』を書こう」
と思いました。」

――どんな苦難も強い意志を持って
乗り越えていく覚吾の姿は、
ビジネスパーソンへの
エールにもなります。

「覚吾について調べていくうちに、
信念を持って生きることの大切さ、
リーダーとしての責任について、
私自身も深く考えるようになりました。

今の時代も一つの大きな変革期。
そういう時代だからこそ、
ブレのない生き方をすることが、
とても大事だと思います。」

――今まさに、さまざまなところで
責任問題が問われています。

「今は当事者意識を持つ人が少ないですね。
責任の所在について
事なかれ主義が横行しています。

太地覚吾のすばらしさは
「俺が責任者、すべての責任は俺にある」
ということを、
常に念頭において行動していることです。
それが言動に表れているから、
周りも付いてくるわけです。」

――現代の写し鏡でもあると。

「歴史・時代小説は、
現代社会の写し鏡であらねばならない
と思います。

覚吾を深く知ることによって、
とくに現代は他責社会だと痛感しました。
あらゆることに責任の所在があまいです。
人は悪いことが起こると、
すぐに他人か環境のせいにしようとします。
そこで立ち止まり、
自責で考えることによって、
修正点が見えてきて大きな成長ができるのです。」

――もちろん、ドラマとしても、
エンターテインメントとしても
面白く読めます。

「この作品には、
作家伊東潤の持っている
情熱や技術のすべてを叩き込みました。

これまでは史実に縛られる
題材が多かったのですが、
今回は徹底的に面白さを追求し、
長編ストーリーテラーとしての
本領が発揮できたと思います。

「巨鯨の海」の雰囲気を踏襲しつつも、
全く別の物語になっているので、
「鯨分限」から読んでいただいても問題はありません。
予想もつかないストーリー展開を、
存分にお楽しみ下さい。」

***************

さて、インタビューはいかがでしたか。
ほんの三年前のものですが、
英気に溢れていますね。

『鯨分限』は、
『巨鯨の海』を読んでいてもいなくても
楽しめる作品です。
ぜひお手に取ってみて下さい。

また、いつも伊東潤メルマガ
「歴史奉行通信」を
お読みいただき御礼申し上げます。

当メルマガの感想は
是非ツイッター等のSNSでツイートください。

ハッシュタグを
「#伊東潤メルマガ」「#歴史奉行通信」
と付けていただければ幸いです。

歴史奉行通信は、
読者の方々の意見を取り入れながら
内容を変えていきます。

ご意見やご希望、
また質問もどんどんお寄せ下さい。

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4.伊東潤Q&Aコーナー

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いつもQ&Aコーナーにご質問をお寄せいただき
有難うございます。
今回はナナ様からです。

Q.
ツイッターで、京都へ
番組の収録に行かれたと拝見しました。
その時の撮影秘話などがあったら
お聞きしたいです!
(ナナ様)

A.
とくに裏話的なものはありません。
中村芝翫さんが子供を見る度に声を掛け、
「どんだけ子供が好きなんだ」
という感懐を抱いたくらいですね。

もう一つ言えば、
比叡山延暦寺を案内してくれたお坊さんが、
私を見て「思っていたよりフツーですね」
と言ったことくらいかな。

私の作品を読んでいて、
もっと気難しい作家を
イメージしていたようです。
これには笑いました。
(伊東潤)

インタラクティブを心がけている
伊東潤のメルマガでは、
皆さまからの質問に最大限にお答えします。
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オープンしました。
ファン同士の会話を楽しみたい方や、
ニュースをいち早く知りたい方は、
是非こちらよりご参加ください。
私も不定期で登場します。
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5.お知らせ奉行通信
新刊情報 / 読書会 / その他

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【新刊情報】

☆『鯨分限』(光文社)文庫版 好評発売中

紀州太地の捕鯨集団
「太地鯨組」棟梁にして快男児・太地覚吾。
斜陽の村を救うべく日本全国を駆け巡る。
だが未曽有の海難事故が、
激変する国の有り様が彼を襲うー。

今回の単行本化にあたり、
大幅に手を入れているので
格段に読みやすくなったと思われます。

解説は、和歌山県出身の坂井希久子さんです。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
https://goo.gl/5ozXFN
アマゾンURLはこちら
https://amzn.to/2P5AMPk

☆『ライト マイ ファイア』
(『アンフィニッシュト』改題) 
(毎日新聞出版)好評発売中

伊東潤の全知全能を傾けた
社会派ミステリー超大作です。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
https://goo.gl/ZVrmqm
以下よりご購入も可能です。
https://amzn.to/2IocxYX

【読書会情報】
<第十一回読書会>
10月13日(土)13:00開始
テーマは、デビュー作『武田家滅亡』です。

十一回はスペシャル・イベントとして、
新宿アルタのHMVにて
金属恵比須のミニライヴを見た後、
会場(コルク)に移動し、
いつものように読書会を行います。

*タイムテーブル(予定)
12:50  新宿アルタ9階HMVに集合
13:00  ライヴ開始
14:30  ライヴ&サイン会終了、会場へ移動
15:30  読書会開始
18:00  懇親会開始
20:30頃 終了
お申し込みの開始は
9月上旬を予定しております。
伊東潤のHPおよびSNSに注目ください。

また、現在ディスクユニオンで
ニューアルバムと
『武田家滅亡』のコラボセットも
予約受付中です。
是非チェックください。
https://itojun.corkagency.com/media/2028/

【TV出演情報】
「京都ぶらり歴史探訪」
9/4 (火) BS5 19:00~23:00
19:00~21:00までの前編に登場。
http://www.bs-asahi.co.jp/kyoto_burari/

【ラジオ出演情報】
NHKラジオのレギュラー放送は、
いつも通りあります。
私の担当は土曜日で隔週です。
だいたい朝の7:30から始まります。
今は第二と第四土曜になります。
「マイあさラジオ」
http://www4.nhk.or.jp/r-asa/

【講演情報】

8/25(土) 
「新視点・幕末伝 諸藩の明暗と津和野藩」
https://goo.gl/mbWQCT

こちらの講演は、
メルマガ読者様を抽選で3名ご招待予定です。
ご希望の方は、
以下のフォームよりお申し込みください。
(締め切り:8/7(火))
*当選者のみご連絡させていただきます。
https://goo.gl/NFynaV

9/15(土) 
「戦国時代の鎌倉と玉縄城の発見」
13:30~16:40
場所 : 鎌倉生涯学習センター 
キララ鎌倉ホール
演題 : 「伊勢宗瑞と後北条氏」
https://itojun.corkagency.com/event/2017/

9/22(土) 
「明治維新150年記念歴史講演会」
(入場無料) 14:00~17:00
(伊東の講演は1時間ほど
「幕末の動乱と水戸藩」)
場所 : 水戸市三の丸1-5-18 
常陽郷土会館内常陽藝文センター7階ホール
https://goo.gl/XaP4d7

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