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小説『武田家滅亡』にまつわる話    【歴史奉行通信】第二十六号

さて、いよいよ読書の秋ですね。
灼熱の夏も終わり、
仕事がはかどる季節になってきました。
いかがお過ごしですか。

伊東潤メールマガジン
「第二十六号 歴史奉行通信」を
お届けいたします。

〓〓今週の歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓

1. 10/13スペシャル読書会のポイントは?

2. 小説『武田家滅亡』にまつわる話

3. みなさまへのお願い

4. 伊東潤Q&Aコーナー

5. お知らせ奉行通信

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1. 10/13スペシャル読書会のポイントは?

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8/11に開催した読書会では、
参加者の皆様から数多くの
有益な意見をいただき、
深く感謝しております。

そのフィードバックを反映させた
『男たちの船出』(光文社)
の発売日が、10/18に決まりました。

読書会参加者の皆様のお名前も
巻末に記載させていただきます
(希望者のみ)。

おかげさまで『男たちの船出』は、
凄まじい荒海のような作品に
仕上がりました。

**********

今回は、10/13(土)に開催される
「伊東潤の読書会」
スペシャル・イベントについての
お知らせからです。

この読書会は、私のデビュー作
『武田家滅亡』にインスパイヤ―された
新作アルバム『武田家滅亡』を
発表したプログレバンド「金属恵比須」
とのジョイント・イベントです。

まず新宿アルタのHMVで
金属恵比須の無料ミニライヴ&トークショーを
見ていただいた後、渋谷のコルクに移動し、
いつものように読書会を開催する予定です。

もちろん読書会からご参加いただいても
構いません。

なおライヴは、お申し込み不要の上、
無料ですので、何かの手続きが必要だったり、
アルバムを買ったりする必要はありません。

読書会だけの参加か、
読書会と懇親会双方の参加かは
事前にpeatixにてお申し込みいただくだけで
結構です。
流れとしては、以下のようになります。

<タイムテーブル>
12:50  新宿アルタ9階HMVに集合
13:00  ライヴ開始
     (メンバーと伊東のトークショーあり)
14:30  ライヴ&サイン会終了、コルクへ移動
15:30  読書会開始
18:30  懇親会開始
20:30頃 終了

この読書会の申し込みは開始されています。
まだ空席がありますので、ぜひご参加下さい。
http://ptix.at/K4CWJQ

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2. 小説『武田家滅亡』にまつわる話

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ということで今回は、
私の記念すべきデビュー作
『武田家滅亡』にまつわる話を
していきたいと思います。

この作品を発表する前、
私はマイナーな出版社から
『戦国関東血風録 北条氏照修羅往道』
『悲雲山中城』
『虚けの舞』
という三つの作品を出していました。

自費出版ではないにしろ、
五百冊刷って百冊買い取りといった
類の契約です。
もちろん印税は出ません。

この頃はプロ作家になろうなどとは
考えてもおらず、
「地域史家のような小説家になりたい」
と思っていたので、
こんな条件でも願ったり叶ったりでした。

最初の本ができた時の喜びは格別でした。
帰りの電車で、
自慢げに本を開いていたのを
今でも覚えています。

私は当時、コンサルティング会社に
勤めていたのですが、
その時の社長に、
この中の一冊の『虚けの舞』を
プレゼントしたところ、
それを読んだ社長から
「君には才能がある」と言われ、
人を介して角川書店をご紹介いただきました。

たまたまその時、単行本部門の編集長が
『ダヴィンチ・コード』を
大ヒットさせた後で、
手すきだったこともあり、
『虚けの舞』を読んだ上で、
新作を書き下ろしで出してみようと
なりました。

その後2005年から
2006年にかけての約一年間、
編集長のコーチングを受けながら
書き上げた作品が『武田家滅亡』です。

本当は『獅子たちの落日』
というタイトルになるはずだったのですが、
公募新人賞さえ取っていない
新人のデビュー作なので、
何が書かれたものかを
タイトルで訴えようとなり、
直前で差し替えられました。

そんなこんなで2007年に発売された
『武田家滅亡』ですが、
単行本は初版刷数4,000部から始まり、
最終的には4刷まで行きました
(文庫版は現在12刷)。

当時は勝頼時代の武田家を描いた作品は
新田次郎氏の『武田勝頼』と
井上靖氏の『天目山の雲』(短編)
くらいしかなく、
目新しかったのも確かです。

構想段階での面白いエピソードとしては、
編集長のアイデアで
シェークスピアの『オセロ』を
ベースにしようとなったことです。

ちょうど『オセロ』の人物配置と
武田家末期の状況が似ていたからです。

オセロの勝頼、
デズデモーナの桂姫(桂林院)、
そしてイアーゴーに相当する
長坂釣閑を軸にして、
人物を配置していきました。

しかしこの三人の視点だけでは、
「滅亡」という一大叙事詩を
描くことはできません。
そこで私は、この作品を
「多視点群像劇」にしようと
思い立ったのです。

これは視点人物を多く設け、
それぞれの視点から、
一つの事象(この場合は滅亡)を
描いていくという趣向で、
駆け出し小説家には
極めて難しいものです。

しかも多くの「多視点群像劇」は
失敗に終わっています。

というのも、
人ばかりが多く出てきて
収拾がつかなくなり、
最終的に、それぞれの
サブ・ストーリーがうまく
噛み合わないからです。

しかし私は成功を確信していました。

武田家の場合、最終的に「滅亡」があり、
それに向かって一人ひとりが死んでいき、
なおかつ生き残った人々も、
すべて天目山麓田野の地に集結していく
という構成が取れるからです。

つまり武田家の場合、
いくつもの路線が並行して走っていき、
途中で死を迎えて途絶える線もありますが、
残った線は結合していき、
最後は一つの線になって終幕を迎える
という多視点群像劇にとって
理想的な構成が取れるのです。

かくして私は、一年近くかけて
この大長編を書き上げました。

そして2007年、
めでたく出版の運びとなりました。

幸いにして『武田家滅亡』は
諸方面から好意的な評価をいただき、
見事、デビューを飾ることができました。

しかしその二か月後に和田竜氏の
『のぼうの城』が出たことで、
私はずっと裏街道を歩くことになります
(苦笑)。

この八月、『武田家滅亡』に
インスパイヤ―された金属恵比須が、
同名のアルバムを発表しました。

私が二曲の作詞で
名を連ねていることからも分かる通り、
このアルバムの制作には
準備段階から加わり、
メンバーに作品を読んでいただき、
そのコンセプトを十分に理解して
いただいた上で、
レコーディングしてもらいました。

それゆえ私は、このアルバムの出来には
たいへん満足しています。

あまり軽々しい言葉は使いたくないのですが、
日本プログレ史に残る名盤と
言っても過言ではないと思います。

秋の夜長は小説『武田家滅亡』を読みながら、
同名のアルバムを聴き、
武田家の最後に思いを馳せて
いただきたいと思っています。

伊東潤「武田家滅亡」
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こちらから
https://amzn.to/2LNUqgb

金属恵比須「武田家滅亡」
アマゾンリンクは
こちらから
https://amzn.to/2C9nGyb

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3. 終わりにー
みなさまへのお願い

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ここまでお読みいただきまして
有難うございました。

最後に皆様にお願いです。
このメルマガの感想などを
ツイッター等のSNSに上げて
いただけないでしょうか。
尚、アップいただく際は
「#歴史奉行通信」
「#伊東潤メルマガ」
のハッシュタグをつけてください。

とくに今回はロックと小説の
コラボについてのご意見などを
お聞かせいただければ幸いです。

伊東潤のメルマガ
「歴史奉行通信」は、
読者の方々の意見を取り入れながら
内容を変えていきます。

ご意見やご希望、
また質問もどんどんお寄せ下さい。

次回のメルマガは10/3(水)予定です。

では、また!

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4.伊東潤Q&Aコーナー

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いつもQ&Aコーナーに
ご質問をお寄せいただき
有難うございます。
今回は小早川統景様からです。

Q.
近年、『応仁の乱』『観応の擾乱』
などの新書を始め、
一般向け最新歴史研究書の出版が
隆盛を極めている気がしますが、
歴史小説家として、
この現象をどのようにお考えでしょうか?

本格的な歴史小説が日の目を見る前兆か、
寧ろ歴史小説が取って代わられる前兆か…。
(10年前くらいの自分は、戦国武将の本を
調べてヒットしたのが歴史小説で、
それが歴史小説を読み始めるきっかけになりました。
ですが今では、マイナーな武将の研究書もたくさん出ていて、
自分のような趣向の人間が
歴史小説の存在そのものをスルーしそうな気がします)
(小早川統景様)

A.
仰せの通り、
歴史新書やMOOK本の普及により、
歴史小説は存在意義を失いつつあります。
そうした中で、
ファンから支持され続けるに
は、どうしたらいいでしょうか。

私は以下のように考えます。

・人間ドラマ部分を強化していく
(具体的にはキャラを際立たせ、感情描写を強める)

・独自の歴史解釈を物語として提示していく
(史実を外さないのが基本)

・現代社会の写し鏡として
注目に値する題材を選んでいく

逃げ出すわけではないですが、
他分野への進出も視野に入れねばなりません。
私の場合、自分の強みは近現代ミステリーに
あると見極め、
その手の作品を多く出していくつもりです。
(伊東潤)

インタラクティブを心がけている
伊東潤のメルマガでは、
皆さまからの質問に最大限にお答えします。
是非お気軽に以下のリンクより
お送りください。
https://goo.gl/forms/QC0Pu5E4B76NjAyg2

また、伊東潤のファンのための
Facebookグループ、
「評定衆(ひょうじょうしゅう)」が
オープンしました。
ファン同士の会話を楽しみたい方や、
ニュースをいち早く知りたい方は、
是非こちらよりご参加ください。
私も不定期で登場します。
https://goo.gl/KQV2zt

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5.お知らせ奉行通信
新刊情報 / 読書会 / その他

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【新刊情報】

☆『江戸を造った男』文庫版(朝日新聞出版)10月5日発売!

江戸前期に財を成した商人・七兵衛
(後の河村瑞賢)は
海運航路整備・治水・鉱山採掘
などの幕府公共事業を手掛け、
知恵と胆力で次々と難題を解決してゆく。
新井白石をして
「天下に並ぶものがいない富商」
と唸らせた男の波瀾万丈の生涯を描く
長篇時代小説。
(*HP、Amazon共に詳細ページ
近日オープン予定)

☆『男たちの船出』(光文社)10月18日発売!

「『男たちの船出』は、
イノベーションの生みだす
様々なジレンマを、
塩飽の船大工たちの視点で
描いた人間ドラマです。

この物語の主人公である
船大工の嘉右衛門と弥八郎、
そしてそれを取り巻く人々は変化に、
いかに対応していくのか。
彼らは変化を受け入れ、
適応していくことができるのか。

それは読んでからの
お楽しみとさせて下さい。」
(伊東潤)
(*HP、Amazon共に詳細ページ
近日オープン予定)

☆『鯨分限』(光文社)文庫版 好評発売中

今回の単行本化にあたり、
大幅に手を入れているので
格段に読みやすくなったと思われます。

解説は、和歌山県出身の坂井希久子さんです。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
https://goo.gl/5ozXFN
アマゾンURLはこちら
https://amzn.to/2P5AMPk

【読書会・主催イベント情報】
現在予定している、
読書会および主催イベント情報一覧です。

10月13日
第11回「伊東潤の読書会」は『武田家滅亡』が題材。

11月24日
コルクラボ文化祭でプチ読書会を開催予定。

12月8日
第1回「城めぐりオフ会」
小田原城日帰りツアーを
計画中(懇親会は新宿)。 

12月15日
第12回「伊東潤の読書会」は、
来年二月発売の『真実の航跡』が題材。

2月
第13回「伊東潤の読書会」は
第2回「ファンベース・セッション」の予定。

4月
第14回「伊東潤の読書会」は
連作短編集『家康謀殺』が題材。

5月
第2回「城めぐりオフ会」
『武田家滅亡』1泊2日ツアーを計画中。
一日目 : 新府城・武田八幡宮・躑躅ヶ崎居館・甲府城・恵林寺(宿泊は石和温泉)
二日目 : 勝沼氏館・天目山方面(大善寺・四郎作古戦場・鳥居畑古戦場・景徳院・栖雲寺)

【TV / ラジオ出演情報】

テレビ番組は収録予定があります。
放送予定が決まりましたらお知らせします。

NHKラジオのレギュラー放送は、
いつも通りあります。
私の担当は土曜日で隔週です。
だいたい朝の7:30から始まります。
今は第二と第四土曜になります。
「マイあさラジオ」
http://www4.nhk.or.jp/r-asa/

【講演情報(*主催イベント以外)】

9/22(土) 
「明治維新150年記念歴史講演会」
(入場無料) 14:00~17:00
(伊東の講演は1時間ほど
「幕末の動乱と水戸藩」)
場所 : 水戸市三の丸1-5-18 
常陽郷土会館内常陽藝文センター7階ホール
TEL.029-231-6611
https://goo.gl/9nr5JQ

10/28(日)
「海音寺潮五郎記念文化講演」
(入場無料)13:30~15:45
(伊東の講演は14:00~15:35
「幕末雄藩列伝 薩摩藩・佐賀藩・水戸藩」)
かごしま県民交流センター内県民ホール
TEL. 099-224-9514
https://itojun.corkagency.com/event/2127/

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一回ずつアップしていきますので、
お楽しみに。
https://note.mu/jun_ito_info/m/ma2f23f41e9b5

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