見出し画像

Creality K1 自腹レビューとAnkerMake M5 / Bambu Lab X1 Carbonとの比較

先日のABSチャレンジでAnkerMake M5の限界を感じました。やっぱりこの子はPLA専用機だ。

そんな中、先日のAmazonプライム感謝祭でCreality K1が安くなってました。高速に趣味の出力をやりたい、ABSもCFフィラメントも使いたい、プリンターも改造したい…悩んだ末にCreality K1を買ってしまいました。
なお自腹で購入しました。

上位&大型機種のK1 MAXも少し安くなっていたので悩みました。300 x 300 x 300mmのビルドボリュームは魅力的ですよね。LiDARも付いてるし。
しかし定格電力1000Wという数字で正気を取り戻しました。これを何時間も動かすと電気代が大変なことになる…
K1なら350Wで済むので電気代がまだ安心です。

そして、なんか11月に入ってからなんかもっと安くなってきましたね…Aliexpressの11.11セールとかAmazonのクーポン割引とか…

というわけで、購入を迷ってる人が多い気がするので、自費購入らしい容赦ないレビューを書こうと思います。
比較対象はAnkerMake M5とBambu Lab X1 Carbonです。なんだかんだで2023年のトレンド機種を全部触ってるんですよね。


良い点

ABSが比較的安定して出力できる。

ちゃんと出力できます。AnkerMake M5のような積層強度の問題はありません。ただし、スライサーのデフォルト設定では冷却が強いので50%程度に控える必要があります。それでも造形が大きく乱れることはなかったです。強度もバッチリ出ます。

そこそこ速い造形速度

AnkerMake M5と同等かそれ以上の速度で出力が可能です。特に0.1mmピッチでの出力時に高速性が生きます。

多くの部品が購入可能

Aliexpressに沢山あります。フレーム以外は何度でも甦りそう。

社外品の強化パーツがある

同じくAliexpressに高流量ホットエンドや硬化鋼、銅合金のノズルが多数あります。

システムのroot化できる

これはセキュリティ的には良くないのですが、詳しい人にとっては魅力的なはずです。

悪い点

実際はそんなに速くない

カタログスペックでは600mm/sと謳っていますが、これはPLAを0.1mm積層する場合の速度であって限定的です。0.2mm積層の場合は300mm/sが推奨となっています。一般的な0.2mm積層の場合で語るべき数字なので「盛っている」印象は強いですね。
Bambu Labと比べると遅く、AnkerMake M5と同程度の速度です。

ヒートベッドが1.5mm以上傾いていた

オートレベリングの結果を表示する機能で確認しました。Creality K1としてはよくある話のようです。このままでも印刷出来るので気づかずにそのまま使っている人が多いかもしれません。
気になる人は底部を分解してZ軸を調整してください。または販売代理店に連絡しましょう。
なお、AnkerMakeではこの可視化機能がないので全く気になりません。知らないことは良いことでもあります。

こんなに傾いていた
底板を外して調整した結果
本当はもっと設定詰めれるけど妥協…

最新のファームウェアで故障報告が相次いでいる

自宅に到着した日にファームウェアのアップデートがあったのですが、SNSやコミュニティで故障報告が相次いで、最終的には公開が停止されました。(2023/11/18現在の情報)
Crealityはこういうことがある…ベースとなっているKlipperもそういうことがあるので要注意です。

純正のホットエンドは低寿命かもしれない

ABSを24時間ほど出力したところ不調に陥り温度が不安定になりました。ヒーターかサーミスタが断線しかけているのだと思いますが、原因は不明です。
瞬間的に指定の温度を20℃以上超過したこともあったので使用を中止しました。危なすぎる。

突然こんなエラーが出て…
温度変化が不安定
260℃に設定したところ、一時的にに280℃まで上昇、危ない!

社外品とroot化で性能を発揮する点

前述のホットエンドの問題の対策として純正パーツを交換し続けることも可能ですが、耐久性や性能の観点では社外品の方が優秀です。これを適切に使うには自身で部品を交換する必要があります。そしてプリンターの内蔵のLinuxのroot権限を取得しPID制御の再調整を実行する必要があります。
これらは全てメーカー保証の範疇外ですし、プリンターのセキュリティホールになりうるリスクがあります。
このためroot化の具体的な方法については言及しません。テクニカルディレクターという立場ではroot化は推奨はしかねるんですよね…
行う場合は自己責任で。ご自身で調べたり、SNS等で私に直接聞いて下さい。
性能UPの余地があっても、リスクを伴うのは大きなマイナスなんですよね。

不満だけどお金で解決すべきこと

カメラがついてない

4000円前後で純正カメラが売っているので必要であれば買うと良いです。私は買いました。普通の性能なので買って損はないです。

Flow rateとPressure Advanceの自動計測がない

LiDARユニットを追加すれば可能、K1 MAXだと可能です。LiDARユニットをいずれ買おうと思います。

印刷速度の向上

社外品のホットエンドに交換すると改善します。私の手元ではBambu Lab X1 Carbonと同等の印刷速度を達成しました。総額8万円未満でこの性能に至れるのはすごい。
繰り返しますが、メーカー保証外の使用方法なので自己責任で行って下さい。

具体的には、0.6mmノズルでeSUN PLAをフロー25mm3/sで安定して出力出来るようになります。Creality K1純正やAnkerMake M5の1.5〜2倍くらいの性能です。もっと攻めれるかもしれません。

AnkerMake M5と比べて

AnkerMake M5を導入した当初には多くのトラブルはありましたが、Creality K1と比べると故障の頻度は少なく、致命的なファームウェアアップデートのトラブルもありませんでした。
つまり、少ない手間で安心して使えています。
会社用の3DプリンターとしてCreality Ender 5SではなくAnkerMake M5の方を選定した理由がまさしくこれで、その点では期待通りだったな、とCreality K1を触っていて思い出しました。

ただし、開放型という構造のためABSが使えません。室温で出力が出来る素材の出力しかできません。実際に使える樹脂はPLAとPETGとTPUだけです。
つまり…

  • 予算10万円以内

  • 初めての3Dプリンター、または初心者が使用する。

  • 出力物に対して塗装や研磨を行わない。

  • 出力物の耐熱性は要らない。室温で使う。

  • 改造して性能アップはしない。

のであればCreality K1よりもAnkerMake M5をお勧めします。
AnkerMake M5Cも同じ傾向のモデルです。カメラが不要であればそれも良いでしょう。安定して綺麗に印刷できて使いやすいですよ。

Bambu Lab X1Cと比べて

私は持っていないのですが、BASSDRUMメンバーであるSiroの松山さんをそそのかしてX1CとAMSを導入してもらったので時々借りています。使用頻度は社外CFフィラメントの出力設定のチューニング中にノズルを詰まらせたことがあるくらい…あれは焦った。
というわけでX1 CarbonとCreality K1を比べると、

  • 出力物の表面の仕上がり

  • 耐久性とトラブル頻度

  • 流量とPAの自動計測の有無

  • 庫内の空気清浄機の有無

  • 純正スライサー、スマートフォンアプリ

これらの点においてCreality K1は劣りますが、他の点についても特に不満はないです。K1は1/2〜1/3の価格なのでコストパフォーマンスはとても良いと言えます。K1は安いからで納得できるか?妥協できるか?がポイントです。

なので、もし予算があるのであればX1 CarbonやP1を買うべきです。これらは現時点で最高峰の家庭用3Dプリンターです。多くの悩みから解放され出力に専念できます。そして本当の高速出力が出来ます。
X(Twitter)にはCreality K1を買った後にBambu Lab X1を買い直した人が沢山いて共感しかないです。

Creality K1を導入する場合のポイント

国内の販売代理店から購入する場合

販売代理店の手先ではありませんが、サンステラさん、SK本舗さんから購入する場合は十分なサポートが受けられるはずです。
このため、機能とコストだけで判断して良いと思います。ただし、初期不良のリスクが比較的高い点は想定した方が良いです。

  • ABSを格安で出力したい。

  • そこそこ高速に出力したい。

  • 出力できれば細かいことは気にならない。

  • 初期不良を許容できる。

  • 販売代理店と初期不良のコミュニケーションをする余力がある。

それ以外の購入の場合、細かいことが気になる場合

覚悟をして購入してください。ハードルは高いです。

  • 届いてすぐに動作確認が出来る。

  • 初期不良の場合にちゃんと返品できる、海外に返品することができる。

  • 自分で分解して調整や修理ができる。

  • Aliexpressで買い物ができる。

  • 自己責任で社外品のホットエンドに交換できる。

  • 自己責任でプリンターのLinuxをroot化できる。

これら全てを満たさないと1年以上使用するのは難しいと思いました。
少しでも自信がない場合、組織で導入するため自己責任で解決できない場合は国内の販売代理店から購入すべきですし、AnkerMakeやBambu Labの購入を検討すべきです。
個人でなんとか出来る人で、とにかく安く済ませたい人はチャレンジすると面白いのでオススメです。

あとがき

私は割と覚悟して買ったのと、すごいハズレの個体ではなかったので事なきを得ました。Amazonの場合、30日以内の返品がしやすいので、ホットエンドの不調の時点で悩みましたが改造欲が勝ちました。
そしてSNSで親切に教えてくれた皆様に救われました。感謝です。

次回はもう少し明るい話題、映える情報を紹介しようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?