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ブロックチェーンユースケース②:保険×ブロックチェーンについて

ブロックチェーンユースケースシリーズ第二弾です。

●はじめに

最近、保険業界におけるブロックチェーンニュースリリース を目にすることが何度かあったので、保険×ブロックチェーンの情報をまとめてみたいと思う。まとめるにあたっては、今回も「WhyBlockchain観点」を重点に置く。

なお、保険×ブロックチェーンの概説は、既にわかり易くまとめてくださっているサイトがあるので、重複する内容はなるべく割愛する。

●保険×ブロックチェーン

保険領域の課題とWhy Blockchain
ブロックチェーンの活用することで、解決しようとしている保険領域における課題としては以下が挙げられる。

煩雑なバックオフィス業務
保険契約における不正(例:既往歴を秘匿するなど)
申込み手続きの複雑さ、契約締結までの期間の長期化
より適切な保険料の算出要求
保険金支払までの期間の長期化

出典:baasinfo.net

上記の課題が、なぜブロックチェーン以外では解決できず、なぜブロックチェーンだと解決できるのだろうか?(Why Blockchain?)
本記事をまとめるにあたり、保険×ブロックチェーンの情報をいろいろインプットしたのだが、その中で、一番しっくりきたフレーズが、「Distributed Single version of the Truth」であった。(分散化した最新バージョンの真実) 
次項で説明しようと思う。

B3iコンソーシアム
B3iは、アジア・北欧・ヨーロッパの各保険会社が出資して作られた保険コンソーシアムである。
B3iは、以下のように保険業界における課題を述べている。

保険業会は他の業界と比べて特にデジタル化が遅れている。 
・マニュアル手動作業 
・PDFドキュメントのやりとり
複数のステークホルダー間で、書類がやりとりされるが、ぞれぞれの会社で管理され、リコンサイル(照合業務)が自動化されていない。なぜなら、標準化されていないから。  
上記により、 「再保険」のコストのうち、管理費用に相当するコストは35%に相当し、保険商品自体の値段に反映されている。 

B3iは、従来の中央集権方式(プラットフォーマーもしくは、大手保険会社1社が管理するRDBにてデータを集中管理する)の場合、結局中途半端な集中管理になってしまうということを指摘している。
中央集権方式の場合、原本の情報は各社が持っており、プラットフォーム上の情報が最新のバージョンの情報である保証がないため、集中管理された情報の価値が落ちてしまうということだ。
つまり、各社は、「Distributed Single version of the Truth」へのアクセスが叶わない。
一方で、ブロックチェーンで管理することで、各社は、各社が持つノードに迷わず原本情報を管理することができ、また更新が入った際は、他のノードにも自動で伝搬するため、「Distributed Single version of the Truth」が実現できる。

(中央集権プラットフォームの例:Swift)
中央集権方式で、既に実現しているプラットフォームとしては、Swift(国際送金プラットフォーム)がある。これはある意味中央集権的に成り立っているプラットフォームの一例だが、Swiftが管理している情報は、送金トランザクション情報であり、バージョンが頻繁に上がったりするような情報ではないというところが、保険プラットフォームで管理したい情報との違いである。(時系列管理したい情報か否か≒ブロックチェーンで管理したいデータか否か)

B3iは、保険業界における、上記課題を解決するために、プロトコル・ネットワーク・インターオペラビリティをFLUIDITYというプラットフォーム上に提供するビジョンを掲げており、つい先日(2020/9)、B3i Reという再保険用プラットフォームをプロダクトとして発表している。

FLUIDITYは、利用社は自社のアプリケーション・UIと接続することにより、他社に情報を共有することができる。もしくは他社の情報を自社アプリケーション・UIより参照することができる。
ブロックチェーン基盤にCordaを採用しており、情報共有先は限定することができる。

Etherisc
次に紹介したいのは、Etheriscだ。
Etheriscは、Decentralized Insurance(非中央集権での保険)の実現を目指している。
従来の保険業では、申込や保険申請時の手続きなどにおける、非効率な作業が挟むことが、コストに繋がっていた。
EtheriscではパブリックEthereum上に保険契約情報を記録し、保険適用時の出金手続きもスマートコントラクトで自動で判定し、自動で送金することを目指している。
現在は、取り扱い通貨には仮想通貨が含まれていないため、スマートコントラクトによる自動送金までの実装はされていないと思われるが、次のリリースではEthereumによる申込、保険適用時の返金が可能となるようだ。

このモデルは、既存の大手保険会社が採用した場合は、単純に業務効率化によるコスト低減(ブロックチェーンである必要性は高くない)に留まるが、DAO(自律分散型組織)が運営することにより、既存保険会社とは全く異なるコスト構造(人件費がかからない)により圧倒的なコストメリット出せると思われる。
そうなると、業界構造を変える可能性も秘めている。(実際は、生命保険などは参入ハードルが高いため、急激にディスラプトすることはないと思われる)

●終わりに

今回は、ブロックチェーンユースケース②:保険×Blockchainを考察してみた。
今後も、B3i既存保険会社を中心としたコンソーシアムからの既存の保険スキームを効率化するための動きと、Etheriscのような既存保険業界をディスラプとするような新しい保険を生み出す動き の両面からの動きが加速することが予想される。
短期的には前者、長期的には後者が伸びてゆくのではないかという私見である。
(引き続き、ツッコミ・ご指摘は歓迎しますので、noteへのコメントやTwitterでのご連絡をお待ちしております。)

次回も、別のBlockchainユースケースを挙げて、同様に考察してみようと思う。


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