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10. イパネマ ビーチの物売りたち

これまでは、ビーチで海と太陽という自然を楽しむ人のことを書いてきました。しかし、その一方ではビーチで働く人々もいます。モノを売って回る人々です。


さまざまな商品があります。飲み物屋さん、お菓子屋さん、パイナップル屋さん、ココナッツ屋さん、パラソル屋さん、サングラス屋さん、イヤリング屋さん、バーベキュー屋さんにタオル屋さん、などなど。こういう人たちが、天秤棒に商品をぶら下げて、声を張り上げながら、太陽の照りつける、片道4kmの砂浜を行ったり来たりするのです。真っ黒に日焼けして歩くのは、若者だったり、中年のオジサンだったり、あるいはお婆さんだったり。そういう人がひっきりなしに、
「アッグワ・ミネラウ!(ミネラル・ウォーター)」
などと声を張り上げて、汗ダラダラでビーチを往復しています。
そして、そういう声も耳に入らないかのように、快適そうに肉体をビーチに横たえている人々。
そういう中にあって、何をどう考えればいいのか、僕にはわかりません。僕は、お婆さんが来るのを待ってお菓子を買ったのですが、それを偽善と言うなら、そうなのでしょう。しかし、それが僕の選ぶことができた行為でした。

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さて、ある日の午後、ビーチに出ました。もう夕刻に近く、太陽の光は盛りを過ぎていたというものの、まだパラソルは欲しい。そこへ、若者がパラソルとビーチ・チェアを2つ持って寄ってきました。
「○○ホテルのお客様ですね、だったら、これをどうぞ」
僕たちは、ホテルが貸してくれるタオル一式を、ホテルの名前がでかでかと書かれたバッグに入れて持っていたので、それと気付いてくれたわけです。
「料金は、いくら?」
「○○ホテルのお客さまなら、お金は心配しないで結構です」
というわけで、僕らは悠々、パラソルの下でチェアに寝そべって、これも同じ若者がもってきてくれた缶ビールを2本飲んでは快適な数時間を過ごしました。
(やっぱりホテルは選んでおくべきだなぁ、こういうところでサービスが違う)と、いい気分でしたね。

で、ホテルに戻ろうとして、さきほどの若者にチップを渡そうと思って彼のところへ行くと、
「60レアイスです」
と言うではないか!これは、およそ4000円弱。いや、金額の問題ではない、これは詐欺である。当然、僕は怒った。
「ばか言え!料金を取るとは言わなかったではないか!」
「取らないとも言ってない」
「ホテルのサービスだと言ったではないか!」
「そんなことは言ってない、心配するなと言っただけだ」
「心配するなとは、無料ということだろう!」
「いや、後で払ってくれればいいということだ」
というバカみたいな口論になって、僕は情けなくなった。
「あのなぁ、アンタ、よく聞けよ。(この場には、彼の仲間が5、6人いたのです。僕らの口論をジーッと聞いてた。)僕はこのリオが大好きなんだよ。ここへ来るために数千ドルを掛けているのだよ。それなのに、10ドル、20ドルのことで喧嘩なんかしたくないんだよ、わかるかアンタ。お金が惜しくて言ってるわけじゃない(←ウソ)。いいか、こういう商売をペテンと言うんだよ。僕は、僕の好きなリオでこんなことをされるのが残念だ。僕がアメリカに帰ったら、何と言うと思う?リオではこうやって騙された、と言うことになるだろう?僕はそんなこと言いたくない。リオはいい所だよと言いたい。アンタ、そんなペテンはやめなさい。確かに、僕はビールも飲んだ、チェアもパラソルも使った、しかしそれはせいぜい10レアイスだろうが。その分は支払う、ほら、これで十分だろう」
と言って、彼に10レアイス札(600円強)を1枚渡し、彼の手を取り握手して「オブリガード(ありがとう)」と言ってスタスタとその場を去ったのでした。実は、10レアイス札しか持ってなかったんだけど。ほら、危険だから大金と貴重品は持って歩かないように、という注意事項がありましたからね。こういう食わせ物もいるわけです。


まぁ、10レアイスでチャラにしてしまうという図々しい男もいるので、バランスが取れているわけでしょうけど。また、往々にして、こういう食わせ物ほど、英語を喋るのでつい気安くなってしまうのですね。観光地では、親切な人に注意することも忘れないようにしましょう。


これも、イパネマの一幕です。

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