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14. ブラジルでサッカーの話

ブラジル、と言えば「サッカー」を想起する人も多い。そのサッカーを語らなければいけませんが、僕はサッカーのことをよく知りません。高校時代、釜本邦茂が選手として活躍していたようですが、僕はそのこともよく知らず、「お前は釜本も知らんのか」とコバカにされたような記憶があります。それが、ブラジルのサッカーを語れるはずがない。

それで、唐突ですが、タクシーに登場してもらいます。

ある夜、イパネマの隣町へお酒を飲みに行きました。わざわざ出かけたのは、「Academia da Cachaca」(「カシャーサ学園」)というバーがあって、そこに行くと、ブラジル各地のカシャーサ(焼酎)が飲めるわけです。

その帰りのこと、タクシーを拾いました。距離は、乗車時間にして5分ほど、すぐ近くですから、まぁメーターでは最低料金、夜間なら8レアイス(500円)です。ところが、このタクシーのドライバー君、10レアイスだと言う。僕はこういうのがあまり好きじゃないので、「いーや、8レアイス」と言いながら乗り込んだわけです。ドライバー君は 10レアイスと言い張ります。

フト助手席の前を見ると、サッカーの人形が置いてある。サッカー好きならば名前を言い当てることができそうな3人の選手がボールを追っている人形でした。僕はすかさず、「あなた、サッカーやるの?」と尋ねました。(ポルトガル語は話せないので、知っている単語をとにかく繋げるだけということなんですが身振り手振りも手伝って、何とかなるものです。)

そうすると、このドライバー君、案の定サッカーには目がない。この人形の選手のことをニコニコしながら喋り始めました。どうも、チームの名前を言っているらしい。それはリオのチームらしい。しかし、ナントカというチームも、結構強くて、こちらのほうも好きらしい。「アー、ハァ」とか、「シン?(そう?)」とか、適当に相槌を打っていたら、どうも僕の返事を求めている、らしい。ナントカという選手を知っているかどうか、尋ねているらしい。僕は「ナオン(い~や)、でもペレは良かったねー」なんて大昔の人の名前を持ち出して話の方向を逸らせてみた。(僕でもさすがに、ペレの名前だけは知っています。)そうしたら、ペレのことを喋りだした、らしい。よくわからないけど、彼は声を大きくして、ゴキゲンです。ポルトガル語を聞いては英語で答えたりポルトガル語の片言で喋ろうとしたり、ワーワー言っているうちに、もうホテル。

そんなこんなで、帰りの車中はずいぶん賑やかなものでした。それで、ホテルに着いて、「はい、8レアイス」と言って10レアイス札を渡したら、ニコッとして2レアイスのお釣を出してくれました。今になって思えば、そこから1枚をチップであげればよかった。

ことほどさように、ブラジル人はサッカーの話をすると幸せになるようです。

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