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路上のおっちゃんたちへ(給付金をきっかけに)

10万円。

もうすぐ2度目の産休が近づいており、収入の減少が確実な我が家にとってはありがたい臨時収入だ。

そういう事情なので、できるだけ出費をセーブしておきたい気持ちもありつつ、消費を喚起したいという給付の意図も汲んで、検討中だった色々の購入に半分くらいは活用した。

リモートワークがメインの働き方に変わったので、エアコンを1台買い足したり、登園自粛要請のために家で退屈していた子どもに自転車を買ったり、月並みだが個人としては満足な使い途。

そして、家族のあれこれのために消費した残金。各自が自由に使う用として私の手元に残ったお金は、ある団体の支援に使うことにした。

路上のおっちゃんたちへ

BIG ISSUEというストリートペーパーがある。
私はこの雑誌のファンだ。

BIG ISSUE

路上生活者の方が雑誌を仕入れ、1冊450円の売上のうち230円が彼らの収入になる。

最初の10冊は団体から無料で手渡され、以降は売った雑誌の利益を元手に雑誌を仕入れてまた販売する。
そうして自分の力で商売をして、資金を貯めて路上から脱出していくのだ。

路上で販売をしている「おっちゃん(と親しみを込めて心の中で呼んでいる)」たちは、厳格な行動規範を守って雑誌販売をしている。

路上で販売に立つ姿は礼儀正しく、購入時のやりとりはほんの僅かな時間だけれど、とても心地よい。

BIG ISSUEの誌面では路上のおっちゃんたちの話を紹介するコーナーもあって、彼らにとっても販売時のお客さんとのやりとりは大切なものだと知って、「ああ、その感じもいいな」と思って一層この雑誌と仕組みが好きになった。

雑誌の中身も面白くて、ついじっくり読んでしまう。様々な社会問題に関する緻密な記事や、著名人へのインタビュー(これもソーシャルな話題に絡んだ内容で読み応えがある。最新号のアダム・ランバートのLGBTQ+の話も興味深かった。冒頭の写真は最新号の表紙です。かっこいい)。

なんといっても一番好きなのは「ホームレス人生相談」。路上のおっちゃんが様々な悩みの相談に乗ってくれるこのコーナー。答えてくれるおっちゃんの言葉一つひとつに味わいがあって、深い愛を感じて心があたたかくなる。雑誌を購入したら真っ先に読むコーナーだ。

そう言いつつも、実はここ最近、雑誌を買う機会が無く過ごしていた。

販売者が立つエリアは限られている。仕事が変わったり、引っ越したりしているうちに、私の行動範囲が販売エリアと重ならなくなってしまったのだ。

そんな中での今回の新型コロナウイルスによる外出自粛要請。
ステイホームが叫ばれ、自宅にこもりながら頭に浮かんだのは、ステイする「ホーム」が無い路上のおっちゃんたちのことだった。

緊急3ヶ月通信販売

なにかできないかとBIG ISSUEのサイトに行くと、ちょうど「コロナ緊急3ヶ月通信販売」が始まったところだった。
月2冊×3ヶ月分の通信販売。すぐに申し込んだ。

6冊なので、送料込みで3千円強。私の購入でおっちゃんに渡る金額は1,380円にしかならない。

団体に向けてお金の寄付もできるし、その方がまとまった金額を支援できるけれど、あえて雑誌の通販を選んだのは、雑誌なのでやっぱり「購読数」を支えたいという気持ちと、おっちゃんたちが大切にしてきた「雑誌を売る・買う」というやりとりを遠隔でも行いたかったから。

「ほんとうは、直接買いに行きたいよ!」という気持ちを込めて。

申し込みが目標人数に達すると、おっちゃんたちへの分配額は月4〜5万になるとのことだった(4〜6月はこれを達成したとのこと)。

まだまだ続く、この生活

当初、緊急で4〜6月の取り組みだったこの緊急通信販売。収束まで長期化が見込まれるため、7〜9月に第二回も行われることになったそう。

もちろん、今回も申し込む。そして、これからも続く限りは継続したいと思う。給付金を一気に消費に回した方が経済全体にとってはいいのかもしれない。けれど私は、少額でも持続的な使い方をしていこうと思う。

もちろん、子どもが生まれて、世の中の状況も外出がしやすい状況になったら、直接買いに出かけて行きたい。

10万円。この金額が持つ意味。

人との接触を控えることが望ましくなってしまった今。
家で過ごす中で思った「家なき人たち」のこと。
そして手元に届いた決して少なくはない金額。

10万円が持つ意味は人によって異なるだろうけれど、私にとっては、より困難に状況に置かれてしまった人を思う「想像力」の助けになり、そしてそういう状況にある人たちに届けたいお金になった。

これから一層、経済は停滞する。いま路上にいる人たちが住まいや職を得るのはより困難になるかもしれない。新たに路上に出る人が増えてしまうかもしれない。

我が家も安泰かどうかはわからないけれど、不透明で苦しくて困難なときだからこそ、自分だけでなく誰かのことにも思いを巡らすことができる人でありたいと思う。


#給付金をきっかけに

ありがとうございます。 いただいたサポートは最近始めた某資格の受験料の足しにしたいと思います