整理券

がやがやと音がする。

少し薄暗い空間。

天井には明るすぎない照明が光っている。

通りすぎるでなく立ち止まっている人々は、思うがままにその時を過ごしている。

誰かと話す者
グラスを傾ける者
携帯を眺めている者
音楽を聴いている者

この時間、彼らの視線は不規則な方を向いている。

しかし全員が、ある時間を待っているのだ。

照明が照らす先、
たくさんの楽器と機材が並ぶ、そのステージが開幕するのを。

時間が近づくにつれて、人々は落ち着きがなくなってくる。

時計を気にし、ステージ上に出入りするスタッフをちらちらと眺める。

まだか?
まだだ。
あと少し。

時計の針が文字盤の数字の真ん中にきても、
ステージにはまだ動きがない。

でもその時、彼らの視線は揃っている。

喜びと期待をのせて、
照明のように彼らを照らすのだ。

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