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「正義の反対は、もうひとつの正義」 「みんな違ってみんないい」「物事の答えはひとつじゃない」を自然に啓蒙するために~「10歳からの考える力が育つ20の物語/作・石原健次 絵・矢部太郎」~

「テレビ屋の声」

インターネットメディアの「マイナビニュース」で連載されている企画である。注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて\"テレビ屋\"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていくインタビュー記事。

私が始めて放送作家の石原健次さんを知ったのはこの記事だった。

放送作家・石原健次氏が語る…『行列』ピンチから進化の背景に“スーパーポジティブディレクター”の存在

鬼才映像ディレクターのマッコイ斉藤さんからの紹介で登場した石原さんの記事が面白くて、ここから私にとって気になるテレビ屋さんになった。

そんな石原さんが手掛けた本が2021年10月に発売された。


10歳からの 考える力が育つ20の物語 童話探偵ブルースの「ちょっとちがう」読み解き方/ 作・石原健次 絵・矢部太郎【アスコム】 

「行列のできる法律相談所」「人生が変わる1分間の深イイ話」「アウト×デラックス」といった人気番組の放送作家である石原さんの著書…それはなんと童話。

この本の内容紹介がなかなか興味深い。

内容紹介(出版社より) 
正義の反対は、なんだろう? 人気放送作家の石原健次さんがストーリーを書き、『大家さんと僕』を描いた矢部太郎さんが挿絵を担当するこのちょっと変わった物語は、そんなテーマの本です。 

誰もが自分を正義と信じて、相手を悪だと決めつける。 だとすれば、「正義の反対は悪」ではなく、「正義の反対は、正義」かもしれない。 とりわけ現代では、その視点が必要なのではないでしょうか。

 この本では、童話探偵ブルースと秘書シナモンが、世界の名作童話を「これまでとはちがう視点」で読み解いていきます。 

たとえばこんなふうに。 

各話の最後に用意されたブルースの読み解きに、「へぇ~」「そうだったんだ!」と納得したり、おどろいたりしているうちに、自然と「物事をさまざまな角度から見る力」が育っていきます。 物事をさまざまな角度から見る力。 それって、こういうことです! 

● いろんな考え方を理解できるようになる! ● 興味の幅がどんどんひろがる! 
● 想像力がぐんぐんのびる!
 ● 思いやりの心が芽生える! 
● つらいことや悲しいことを乗り越えられる! 
● 読解力が高まる!
 ● 自分で考えて答えを見つけられるようになる! 

つまり・・・これからの世の中を生きる力が身につく! のです。 この本は「10歳から」のお子様におすすめです。 

学校の授業の難易度が上がり、抽象的な思考を学びはじめる10歳(小学校4年生)という年齢は、この本を読みはじめるのにぴったり。 もちろん、小学校高学年や中学生、あるいは大人でも十分に楽しめます。

 むしろ考え方が固まってしまった大人にこそ、この本の「ちょっとちがう読み解き」が役に立つかも! 

ひとつご注意を。 この本に書かれているのは、ふつうとは違う角度から考えるためのヒントです。 

だから、ブルースの読み解きが正解だとは限りません。 大切なのは、自分の頭で考えて、自分だけの答えを見つけ出すこと。

 この本は、そのきっかけになってくれます。 子どもと一緒に読んで、それぞれの読み解きを話し合ってもいいですね。 ブルースの悲しい過去や、シナモンの成長していく姿など、ストーリーの面白さもバツグンです!

ここまで書くのかという具合に丁寧に、細かく本をプレゼンされていて、なかなか凄い熱量。ここには出版社であるアスコムさん、及び編集者さんが「いいお仕事」をされているなと感じる。気になる、買いたくなる、読みたくなるという興味を高める効果のある本の内容紹介。それだけでこの本に対する期待が大きくなる。

そこで今回は、石原さんが手掛けたアスコムさんから発売された「10歳からの考える力が育つ20の物語」のレビュー記事を書くことにした。

内容紹介で感じたようにとても興味深い本。そしてどこか優しさと暖かさを感じてしまう。そこにも作者の石原さん、絵を担当された矢部太郎さん、アスコムさんの思いが共有された上できちんと作者として昇華されているように思う。

それでは、この本の論評を始めることにしよう。

はじめに

まず作者の石原さんによるまえがき。とても分かりやすくこの本を出した経緯について書かれています。

石原さんは、昔のお付き合いのある加藤浩次さんが語った「正義の反対は相手の正義」という言葉に痺れ、その考え方を多くの皆さんに伝えるためにどうすればいいのかとなった時に童話で伝えると分かりやすく伝わるのではないのかと考えたのだ。

この発想は実に放送作家的視点。自分が伝えたいことを広角的にストレートかつ的確に伝わるにはどうすればいいのかをきちんとエンタメできるわけである。ただ「正義の反対は相手の正義」という言葉だけを教えるだけでは意味はない。この言葉にはどのような深さがあり、凄さがあるのか。それを子供から大人までに伝えられるかもしれない童話を選ぶことで目的を果たそうとした石原さんはやっぱり凄い。

正義の反対は悪。
それはきっと間違っていない。
でも正義の反対はもうひとつの正義なのではないかと…。

主人公の童話探偵ブルースの言葉として自身の思いを乗せた石原さんの優しさと暖かさに心がホッコリした私は、この本をじっくり読み進めることにした。

まずこの本を読む上で抑えておきたいのが以下の通りである。

【童話探偵】
世界の名作童話を読み解き、現代に活かす新しい解釈を見つける探偵

【ブルース】
ちょっと違う視点で童話を読み解く童話探偵。クールに見えて実は熱く、悲しい過去を持っている。

【シナモン】
ブルースの秘書。素直でやさしいリスの女の子。思い込みで人とぶつかってしまうこともあり、そんな自分の性格に気づいている。童話についてどんなふうに読み解きを受け止めているのかを記すために毎日かならず日記をつけている。

【ミートバン】
ブルースが持つ不思議な乗り物。童話の名前を入力すると、時空や世界のパラレル空間を超えて、童話の物語が終わった直後の世界に移動できる機能を持つ。

【4つのパートで童話を読み解く】
① プロローグ
② 童話のあらすじ
③ 読み解き
④ シナモンの日記

第1話 アリとキリギリス~キリギリスは本当になまけ者だったのか?~

この本に登場する童話はどれも有名な作品ばかり。初回で取り上げられたアリとキリギリス。あらすじをよくよく読んでみると童話はどこか残酷だったりするものだ。

童話探偵のブルースはこの物語はアリの視点で書かれていることを指摘し、キリギリスの視点になって考えることにした。するとキリギリスはキリギリスでバイオリンを演奏することで、周辺の生き物たちを楽しませようとしていたのじゃないのかと読み解いた。

そこから「好き」や「得意」を否定してしまったら、個性のない同じような人ばかりになってしまい、世の中も進化しづらくなると。

童話は正しい教訓に導くために物語が構築されている。基本的に、結論や教訓がAパターンだとすると、この本ではいやいや待てよ、Bパターンもあっていいんじゃないのかという考え方の多様性を教えてくれている。

全般的にこの本ではそのような展開である。ただし、ここでポイントなのは、石原さんはBパターンが真の答えなのだということにしていない。だから最後に秘書のシナモンの感想を入れることで、読み手に色々と考えてもらってCパターンやDパターンの答え探しをしもらえたらという配慮も感じてしまう。

恐らくシナモンは、読み手自身の既存の価値観そのものなのだ。だからこそ親近感が沸く。

この本の特徴はよくわかったので、残りの物語に関しては、読み進めて感じたことを記していきたい。

第2話 ウサギとカメ ~もしウサギが寝なかったらどうなった?~ 

冷静に物語の謎解きをしていくブルース。だか読み結果を発表するときは、やけに熱を帯びている印象を感じる。

持っている能力は、人の数だけちがう!
人からバカにされた言葉など、自分自身が真に受けなければ、 まったく関係ないのだ!

これはなかなか心にきますね。子供向けなのだが、実は大人向けの本なのだ。


第3話 3匹の子ブタ ~オオカミだって生きなきゃならない!~

一方の視点だけで物事を考えることの危険性を説くブルース。「正義の反対は、もうひとつの正義」という本のテーマとなった言葉もこの回では登場する。

「3匹の子ブタ」という有名な童話を通して、説明するのはとても分かりやすく伝わりやすい。

ただし、ブルースは最後の読み解きで、この考え方が広まれば、今より少しは争いはなくなる!と言い切るのではなく、…かもしれないと言ったのは、やはり物事を決めつけることはできないという石原さんの思いもあるのかもしれない。


 第4話 鳥と獣とコウモリ ~なぜぼくたちはコウモリの悲しみを理解すべきなのか~

この回で印象に残ったのは、ブルースの「その人の本質を見極める力」というのは、人がこの世の中で生きていく上で最大の課題。自分ひとりだけでは人間は生きていけないわけで。対人関係な大切にしないといけない。

あとこの本を読み進めていく上で面白いなと思ったのは、最後の一文が心地よく締まることである。不快や変な余韻が残らない。ここら辺りも読み進める上でとてもありがたい。


 第5話 さるかに合戦 ~子ガニの復讐で悲しむのはだれ?~ 

「さるかに合戦」はさるにカキの青い実をぶつけられたお母さんガニに、復讐するために子ガニたちが協力してサルに仕返しをするという話なのだが、サルの気持ちと殺されたお母さんガニの気持ちを考えたことはあるのかとブルースは語るところは印象に残った。

復讐しても、天国のお母さんは喜ぶのか。
サルに復讐して、それが正義なのか。

子供達を教える童話の内容がこれでよかったのかという疑問を抱いたのだが、物事を深掘りすると知らなくていい話もあったりもするので、そこは取捨選択が必要かもしれない。

取捨選択…これがなかなか難しい。


第6話 こぶとりじいさん ~おどりが苦手なおじいさんに伝えたいこと~ 

この回では「こぶとりじいさん」の現場にいくのではなく、近くの幼稚園にいくことにしたブルース。そこにはかけっこをする子、砂遊びをする子、ボール遊びをする子、絵本を読む子がいる。人それぞれ好きなことは違うからこそ個性は育まれるのだとブルースは語る。

それでも時には自分が向いていないことに挑むこともあるが、事前にしっかり準備して挑めば結果は好転するかもしれないと。

なかなか深い。それにしても10歳の子供がついてこれるのかという疑念はあるが、知っておいて損はない考え方ではある。

学校のテストに挑む子供たち、がんばれ!

第7話 裸の王様 ~王様でさえ逆らえないおそるべき力~ 

この回で「同調圧力」という今の時代らしいパワーワードが飛び出す。

「同調圧力」とは、組織において意思決定、合意形成を行う際に、少数意見を有する者に対して、暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導することである。

ブルースは空気を読むことは大切だが、自分の意志を持ちつつ空気を読むことが大切だと説く。

自分を貫くタイミング、周りに合わせるタイミングを見極めるってなかなか難しい。

大人でも難しいのだから…。


第8話 雪女 ~しあわせな時間を終わらせてしまう心のすき~

この回は最後のシナモンの日記に書かれていた「冷静に浮かれる」という一文に尽きる(笑)なんだそりゃ(笑)

幸せなときほど気が緩むから、冷静を保ちつつ浮かれるんだと…。

シナモンって可愛いな(笑)


 第9話 王様の耳はロバの耳 ~王様とみんながしあわせになる方法とは?~

「自分のものさしにおさまらない人をおかしいと非難したり、笑ったりしては自分の成長も止めてしまう。自分の常識がすべてではないことを知り、相手の個性を『いろんな人がいるからこそおもしろい』と受け止めると、視野をひろく持つことができる」

ブルースの読み解きには心当たりがあるので、自省を込めて、気をつけたいと思う。多感な時期の子供も色々と考えることもあるけど、大人も色々と大変なのよ…。

そしてここで「みんな違って、みんないい」という言葉が登場。物事の多様性を受け入れるためにはこの考え方だよなと思うのだが、これをどううまく伝えるべきかを私の場合はストレートに伝えてしまうのだが、やはり物語に昇華してしまうとより伝わりやすいものである。


 第10話 三年寝太郎 ~寝太郎に足りなかったたったひとつのこと~ 

この話、個人的に申し訳ないが、あまり知らない。私は意外と童話にはあまり接していなかった。それよりも子供の時は学校の図書館にある歴史漫画ばっかりいたなぁ。

「伝わっているだろう」「結果さえ出せばいい」ではダメなんだ…という読み解きがあるのだが、「男は黙って背中で語る」というスタイルは今の時代は淘汰されていくのかな…。あれ、かっこいい生き方なのになぁ…。

やっぱり伝えたいことはきちんと言葉にしないと…。

第11話 3つの願い ~君が手にするチャンスには種類がふたつある!~ 

ここで面白かったのが、ブルースが語った「チャンスには思いがけないチャンスと、自分で手に入れるチャンスがある。思いがけないチャンスは冷静ではいられなくなって思わぬミスをしてしまうことがある。自分で手に入れるチャンスは努力した結果なので、あわてて無駄にはしない」。

これはそうだよね…。

チャンス、ほしいなぁ。

でもチャンスはなるべく自分で手に入れたいものだ。思いがけないチャンスというものは、早々来ない。



第12話 泣いた赤鬼 ~ウソをついてはいけない理由と友だちのつくり方~ 

この回はブルースの「ウソは他人だけではなく、自分自身をも傷つけるもの」というパンチラインが胸に響く。

あとシナモンの日記で書かれていた「ウソは自分に返ってくる」というもの強烈。

ウソはいけない。
そうだと思う。

それにしてもこの本、どこまで読み手の心にズシンズシンと重いパンチを放っていくのだろうか…。

それにそのパンチをファンタジーやメルヘンチックの世界で打っているのだから、やけにシュールでもある。

第13話 北風と太陽 ~童話探偵ブルースの誕生と、心の落とし穴~ 

この回では童話探偵ブルースが生まれた経緯について書かれている。以前、学校の教師だったブルースがいる図書館に通いつめるようになって、今まで人を見下すような態度が消えたプライムという青年がいる。プライムの父であるデーブはなぜ息子は図書館に通うようになってから、変わったのか。その理由が知りたくなり、ブルースがいる図書館を訪れる。

ブルースはデーブに「北風と太陽」の読み解きを聞かせる。ブルースの読み解きに関心したデーブは今を生きる子どもたちに、新しい解釈と気づきを与えるために、うちの会社から読み解きを、発信してほしいと依頼したことにより、童話探偵ブルースが誕生したのである。



第14話 ごんぎつね ~子ギツネごんはだれのために贈り物をしたのか~ 

「ごんぎつね」…。プロレス好きの私からするとDDTプロレスリングのアントーニオ本多が試合中に相手に読み聞かせる創作「ごんぎつね」を思い出すのだが、あれは大体、下ネタがオチなのだが(笑)

なかなかこの回も重い。
「罪のつぐないは、自分の気持ちを軽くするためにやってはいけない」
「おわびの気持ちは相手に伝えてはじめて価値がある」

そうだよね…。
反省する私だった…。
なんだか胸が痛い…。

第15話 ウサギどんとキツネどん ~だから、敵をつくってはいけないのだ~ 

この回もなかなかズシンとくる。

「仲が悪いというのは、相手のいやな部分をどんどん育て合うようなものだ」

憎悪の栽培かぁ。
考えたくもない悪夢だぁ…。

だから敵をつくるというのはそれだけ自分にピンチが訪れやすいわけですよ。

その通りですね!

第16話 ハーメルンの笛吹き男 ~とても大切で、すごくむずかしいたったひとりの勇気~

サブタイトルの「とても大切で、すごくむずかしいたったひとつの勇気」というのがかなり気になったので読み進めていく。

勇気ってなかなか持てないものだ。

ブルースは、「悪いことはちゃんも悪いと言える勇気を持たなければならない」と説く。「臭いものに蓋」をすればいいのではない。

これまた難しい。政治家や官僚に聞かせたいものだ。

でもそれだけではやっていけないのも、世の中だ。

第17話 鶴の恩返し ~鶴との別れはまちがいなくハッピーエンドだ!~ 

これはシナモンの日記にある「約束よりも大切なその人を思う気持ち」という言葉が印象に残る。シナモンの日記って実に分かりやすくて、子どもでも大人でもスッと考え方の啓蒙がされやすい。つまり読み手に伝わりやすいのだ。

「鶴の恩返し」の読み解きはめちゃくちゃ面白いので、詳しい内容は是非読んで確認してください。

第18話 北風がくれたテーブルクロス ~少年ハンスが身につけるべきは問題解決能力~ 

素直でやさしいシナモンは、思い込みで人とぶつかってしまうこともある。
だが、ブルースは一緒に仕事をしていくに、問題解決能力に優れた女性だと感じるようになる。

そこには、どうすればいいかを自分で考えさせ、行動させる。その繰り返しでシナモンの問題解決能力は育まれたと。それは両親が導いたものだったと知ったシナモンは嬉しくなる。

問題解決能力は世の中で生きる上で大切である。子育てで大変で苦労されている親御さんにはためになる回。

第19話 ヒツジ飼いとオオカミ ~オオカミ少年の悲しすぎるウソの理由~ 

シナモンの姉モンローの結婚を祝うために、実家を訪れたブルース。実はブルースはモンローの担任の先生だった。そこでブルースの悲しい過去が語られる…。

これは是非読んでほしい。個人的には泣きましたね…。

ああここいう展開もあるのね…。

「こうなるだろう」というパターンを崩してきましたね。

この本の中での神回ではないでしょうか。

第20話 梨売り仙人 ~去りゆくブルースが一番伝えたかった最後の読み解き~

ここもネタバレになるので、あまり深く言及しないでおこう。

19回と20回はセットで読んだ方がいいかも。1クールや2クールのドラマも最終回になるに連れて、クライマックスに向かって激しく物語は動くのだが、そのムードを感じる。

「見えるモノだけがすべてではない」
「正義の反対は、もうひとつの正義。他人と自分とは、違う価値観を持って生きている」

石原さんがこの本で伝えたかったことが最後にきっちり出してきた印象を受けた。

この本は最後も読み心地がいいフィナーレを迎えた。最高である。

そして最後のページを開くと、そこには「作・石原健次 絵・矢部太郎」の下に、「本書プロジェクトチーム」という名目で多くの人たちが関わっていたことがわかった。発行人を含めると46人。

それはまるでひとつのテレビ番組で流れるエンドロールのようだった。

石原さんひとりで動いていたわけじゃない。みんなが動いてこの本は生まれたわけだ。

そこに数々のテレビ番組を放送作家として関わった石原さんの「テレビ屋」としての矜持が見えた。

また絵を描かれた矢部さんのほっこりする暖かいタッチも印象的だった。確実にこの本は矢部さんの絵があってこそ成り立つものだった。

「正義の反対は、もうひとつの正義」 「みんな違ってみんないい」「物事の答えはひとつじゃない」を、強制ではなく自然に啓蒙するための工夫と努力が詰まった一冊。

これは学校の図書館や本の読み聞かせに使ってほしい。
生きていて辛くなった時、苦しくなった時に活用してほしい。
物事がうまくいかずに足掻いている時に読んでほしい。

個人的にはきちんと漫画やアニメ化すると、より啓蒙できるかもしれない。


最後に、ここで書かれているブルースの読み解きもすべて正解かというとそうではない。あくまでも正解のひとつ。この本をきっかけに物事を考える楽しみ、人に対する優しさ、好奇心や想像力を養ってほしいというのが製作サイドの意図ではないだろうか。

10歳からの 考える力が育つ20の物語 童話探偵ブルースの「ちょっとちがう」読み解き方/ 作・石原健次 絵・矢部太郎【アスコム】 

とても素敵な本でした。

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