見出し画像

【試し読み】マッシュル-MASHLE- マッシュ・バーンデッドと復活の呪文

『マッシュル-MASHLE- マッシュ・バーンデッドと復活の呪文』発売を記念して、本編冒頭の試し読みを公開させていただきます。

あらすじ

魔法を使えないマッシュを魔法学校へ入学させた張本人であるブラッド・コールマン。魔法警察に所属する警察官である彼は、街をパトロール中、偶然、級友たちと一緒にいるマッシュの姿を目撃し、あとをつけることに。自分の計画のため、彼らに災いが降りかからないよう、陰から見守ることにするが......。選択肢で結末が変わるアブノーマル魔法ゲーム小説、ここに復活!?

それでは物語をお楽しみください。

第0章 冒険のまえに

 よくぞ探しあてた。
 この書は、数多あまたある魔法書のなかでも、特に価値の高い希少な1冊。
 開けばたちまち魔法界が眼前に現れ、
 生きとし生ける者を自在にあやつることができるのだ。
 彼らの1日が、おだやかに過ぎゆくか、はたまた惨劇となるか、
 物語は選んだ数字パラグラフ次第しだい分岐ぶんきし、変化する。
 すべては、読者であるそなたの選択にかかっていると言ってよい。

 待て。まだページをめくってはならぬ。
 はやる気持ちはわかるが、忠告というものは聞いておいて損はしないものだ。

 まず、そなたに魔力はあるだろうか。いや、気を悪くしないでほしい。
 この書に辿たどりついたのだから、相当な使い手であることは間違いなかろうが、
 一応、たずねる決まりとなっておる。
 力を持たぬものが、あのきびしい魔法界で生きられるわけがないからな。
 もし魔力がないのなら、そなたの世界で使われる筆記具を用意するとよい。
 羽根ペンでも筆でも、もちろんスマホでもタブレットでもかまわぬ。
 いや、急がずともよい。待つのは慣れておる。
 持ってきたなら、わしが魔法をかけてやろう。
 これでメモを取りながら進めば、
 数字パラグラフの魔法を破り、何度でも前に戻って、冒険をやり直すことができる。
 メモこそが、そなたにとっての復活の呪文なのだ。
 まあ、記憶力に自信があるのならメモなど取る必要はないし、
 個人的には、悲劇的な結末バッドエンドも人生の妙味みょうみと思っておる。
 言い古された言葉かもしれぬが、すべては気の持ちようということだ。

 どうやらページをめくる時間がきたようだ。
 なに、まだ準備ができておらんだと?
 魔法界では、もうそなたを迎える準備ができておるというのに。
 ほら――。

第1章 ブラッド・コールマンと見守りの職務

▽A―1

「出してくださいよ……。なんでスリくらいで何日もこんな目に……。もう出してください……、何か食べさせてくださいよ、ブラッドの旦那だんな……」
 鉄格子の奥から、男のすすり泣く声がする。
 留置所りゅうちじょなのだろうか、よどんだ目をした警察官がひとりいるにはいるが、煙草たばこをくわえたままだるそうに新聞を読むだけで、おりの中の犯罪者などいないかのようだ。
 暗く湿った部屋で電話が鳴る。
「ああ、オレだ。……はァ? よろい騎士きしが現れた? 知るかよ、切るぞ。……あァ? なんだって?」
 煙草をくわえたまま、もごもごと適当に応えていた警察官――ブラッド・コールマンの顔がくもる。
「政治家の視察だ? そんな茶番に関わってられるかよ。じゃあ、オレはパトロールで鎧のほう見とくから、署内のことはお前がやっとけよ。ヘマしたらタダじゃおかねえぞ、いいな」
 煙を吐き出して乱暴に電話を切ると、ブラッドは煙草をもみ消し、ため息をついた。
面倒めんどうくせえな」
 まちのパトロールなんてやりたいわけがないが、偉そうにふんぞり返った政治家連中を連れて署内をり歩くのに比べりゃいくらかマシだ。それに鎧なんて、どうせふざけた看板かなにかの見間違いに決まってる。
 だが――。
「鎧の現れた場所がシュークリーム屋、というのが少し気になるな。妙な通報に、シュークリーム……、どうもあのキノコ頭がからんでる予感がするぜ」
 そう、この男ブラッド・コールマンこそ、マッシュ・バーンデッドの鍛え抜かれた筋肉を見込み、イーストン魔法学校に送り込んだ張本人なのだった。
 もちろん、この国では犯罪者とされる魔法不全者――魔力を持たず、魔法を一切いっさい使えない者――に救いの手を差しのべた心やさしき警察官、というわけではない。
 魔法を使えないマッシュに対し、そのけたちがいの筋力一点突破で「神覚者しんかくしゃ」となり自分に金品や地位、権力を寄こすよう要求した悪徳警官である。さもないと、じいちゃん――育ての親レグロ・バーンデッドと共に逮捕すると脅迫までして。
「あのガキが魔法を使えないとバレた日には、オレの出世も水の泡だからな」
 ネクタイを締め直し、パトロールに出ようとしたブラッドを、か細い声が呼び止める。
「せ、せめて……、せめて水だけでも置いていっていただけませんか、もう何日も……」
 ブラッドは、虫を払うような手つきをして檻の中をにらんだ。
「うるせえ。市民の平穏な生活と、オレの出世を守るためのパトロールだ。邪魔じゃまするんじゃねえよ、クソ犯罪者が」
 そう吐き捨てて、ブラッド・コールマンは気だるげに警察署を出たのだった。

 通報があったのはマーチェット通り。着飾った金持ち連中や、持てる魔法を駆使くしして金を稼ごうと目論もくろむ連中、そして用もないのに、ただ明るい光に集まってくる羽虫はむしのような連中でごったがえす指折りの繁華街だ。
「いつ来てもうるせえ場所だぜ」
 顔をしかめたブラッドの視界の隅、路地裏ろじうらの奥で何かがギラリと光る。
「……なんだ?」
 確かめようと足を踏み出したブラッドに、小さな子どもを連れた女性が勢いよくぶつかった。
「なっ……、いてえだろうが! ガキもまとめて公務執行妨害こうむしっこうぼうがいで……」
 逮捕だと言う前に、ブラッドも気づいた。とつぜん買い物客たちが叫び、必死に逃げ出したその理由は――。
「……ヤベエな」
 なんと路地裏ろじうらには甲冑かっちゅうを身につけた騎士が立ち、にぶく光る戦斧せんぷを高々と振り上げていたのだ。

 さて、警察官ブラッド・コールマンはどうするだろう。
 彼の行動を決められるのは、この書を読むあなただけだ。ふたつの選択のうち、どちらかを選んで街の平和を守れ。行き先の数字が書かれたパラグラフへ、急いで進むのだ。

● 出世のチャンスだ! 得意の魔法で騎士をブッ飛ばして逮捕だ 》》A―2へ
● 面倒はごめんだ……。とりあえず様子ようすうかがうか 》》A―5へ

▽A―2

 こう見えても、ブラッド・コールマンは魔法局直属の警備隊にいた実力者だ。ドラゴンを追い払ったことだってある。甲冑かっちゅうを着込んでいるだけの不審者くらい一撃で――。
 魔法のつえにぎり直し、甲冑をにらむ。
「ナルコムパス!」
 呪文じゅもんとなえ、杖の先に魔力のかたまりを生む。そのエネルギーは、みずからの力に恐れをなしているかのように小さく震えて、威力を増していく。
 と、騎士が振り向き、叫んだ。
「誰だか知らねえが、オレの邪魔じゃまをするんじゃねえええええええ!!!!」
 そして、勢いよく戦斧せんぷを振り下ろす。
「ルアアアアアアアッ!!」
 騎士きし雄叫おたけびが狭い路地裏に響き渡り、そして静まりかえる。静寂のなか、どこかからたよりない鳴き声が聞こえてきた。
「ニャーン」
 おのを振り下ろした先は、建物と建物の間の狭い隙間すきま。鳴き声は、ゴミにもれたその奥から聞こえるようだ。
 ブラッドは抜け目なく杖を手にしたまま、恐る恐る路地裏ろじうらに踏み込んだ。
「……なにやってんだ、お前は」
 くと、男は甲冑のバイザーを上げ、鋭い目を見せた。
「なんで警察が……? いや、このネコチャンが、出られなくなってたんで」
 おびえたように斧のの上をそろそろと伝い歩いて、猫が隙間から出てくる。ニャーン。
 見たところまだ少年らしい甲冑男は、顔をおおうヘルメットの鼻の下あたりを指でこすり、「もう変なとこに入るなよ」と子猫にやさしく声をかけた。ニャーと返事をして、子猫は路地の奥へするすると逃げていった。
 どうやら危険はなさそうだと見て、ブラッドは杖で甲冑を小突こづく。
「なんでこんなもん着てるんだよ」
「ただの普段着ふだんぎです。外に出れば、男には7人の敵がいるんで」
 訳のわからないことを言いながらも、少年の目はまっすぐに輝いている。今のところ甲冑を着ているだけで別に法を犯しているわけでもないし、悪い奴でもなさそうだ。が、あまりにも何を仕出かすかわからない予感がする。めちゃくちゃする。
 これは、しょっ引いておいたほうがいいかもしれない。いや、この斧が銃刀法違反じゅうとうほういはんか……? パトロールを邪魔されたってことで公務執行妨害にできねえか……? と、適当な罪状ざいじょう見繕みつくろっていると、少年は明るく言ったのだった。
「いっけね。オレ、待ち合わせしてるんだった! あ、今、何時かわかります? 待ち合わせがあって」
「はァ? お前の都合つごうなんか知らねえよ」
 ブラッドは冷たく睨んだが、少年は「いや、友達を待たせるわけにはいかないんで」と、まるで意にかいすことなく説明をはじめた。
「その友達ってのが、最近、ゴタゴタしてて元気づけてやりたくて……。好物こうぶつのシュークリームでも買って渡そうと思ってたのに、なぜか店が大騒ぎになって買えずじまいですよ。仕方しかたないんで、手ぶらで待ち合わせに向かってたら猫の鳴き声がして……ってわけです。まあ、アクシデントが降りかかるのは主人公の宿命ですが」
 よくしゃべる奴にろくな人間はいない。
 ブラッドは訊いた。
「なぜ店が大騒ぎになったかわからないのか」
「さあ。これかぶってると、視界が狭くてよく見えないんで」
 と、少年は甲冑のヘルメットをたたいた。
 さて、この様々な意味でまわりの見えていない少年をどう扱えばいいだろう。

● 友達の好物がシュークリームか……。とりあえず釈放して尾行びこうしよう 》》A―9へ
● こいつは面倒めんどうを起こしそうだ、とりあえず逮捕しておこう 》》A―11へ

▽A―3

 ブラッドはダーツ店の裏口にまわり、店主を呼び出した。
「なんでしょう、旦那だんな
 愛想あいそよく笑いながら出てきた店主をグイっと引き寄せ、店内を指差す。
「おい、あそこに野郎ばっかり4人の学生がいるだろう」
「え? はい」
「ヤツらが遊ぶときだけどよ、ちょーっとばかし目をかけてやってくれないか?」
「目……と申しますと?」
 店主が首をかしげる。
「言わせんなよ。コアラの鼻水を出やすくするとか、ダーツのまとを大きくするとか、景品を豪華にするとかいろいろあるだろうが、なあ?」
 悪い顔を見せた警官にでっぷりとした腹を小突こづかれ、店主は青ざめた。
「そ、そう言われましても、コアラは生き物ですし、他のお客様もおりますから信用問題に関わりますし、あの学生さんだけ景品を変えたりしたらクレームが……」
「はア!? そんなモンスタークレーマーが来たら、その時こそ警察を呼べばいいだろうが、警察を。そんな時の警察、市民の皆様のための警察だ、遠慮することねえんだよ」
 ニヤリと笑うブラッドから少しでも離れようと、店主が巨体を震わせたときだった。
 クション!!

 激しいコアラのくしゃみと同時に、ブラッドの顔に凍った鼻水が突き刺さる。
ってえ!!」
 飛んできたのはマッシュがくしゃみさせたコアラの鼻水だった。大部分はドットの顔面に当たったようだが、飛び散った飛沫ひまつが奥のブラッドにも突き刺さったのだ。
「クッ、なかなか上手じゃねえか……」
 けた鼻水をぬぐって、ブラッドが顔を上げる。
「この調子なら、店主の操作なんかなくても……グハッ!!」
 今度はドットがくしゃみをさせたコアラからの鼻水だ。
「あのクソガキども……!! クソ、取れねえ!」
 ヒゲにこびりついた鼻水をいているあいだに、マッシュたちは喧嘩けんかしながら店を出ていってしまったようだ。
「どこに行きやがった!」

● その前に顔を洗いたい、トイレを探そう 》》A―26へ
● ヤツらは魔法学校の生徒だ、つえ屋をのぞいてみるか 》》A―7へ

▽A―4

 広場から少し離れたところで、ちょうどパトロール中の部下を見つけた。間のいいヤツだ。
「よう、オレだ。今ちょっといいか?」
「あれ、ブラッドさん。どうしました?」
「悪いんだが、もし、このあたりでキノコ頭の少年を見つけたら……」
 そこまで言って、ブラッドは言葉をむ。
 もし、部下たちがマッシュを見つけようと、じっくりしっかり観察などしたら、魔法が使えないことがバレてしまうかもしれない。なんといっても、警察官は人を疑うプロフェッショナルなのだ。さて、どうしたものか――。
「えーと、あー、そうだな。もし、このあたりでキノコ頭の少年を見つけたら……、あー、遠くからふわっと、こう……、そうだな、あたたかい目で見守るような感じで、広場の方へなにげなく、それとなく誘導するように」
「はい! それとなく実行いたします!」
 ものわかりのいい部下どもで助かるぜ。
 とりあえず一服しようと煙草たばこを取り出したところで、部下が叫んだ。
「ブラッドさん、あの少年でしょうか!」
「大きな声を出すなよ。言っただろ? 遠くからふわっと……」
 と部下の指差す方を見れば――いた!
 道のはずれに腹筋ふっきんローラーをころがしながら進んでくる、トレーニングウェアを着たキノコ頭がいた。

 くわえ煙草がぽとりと落ちる。
「道だぞ!? 道だよな!? ここジム的なとこじゃないよな!?」
「あの少年、通行の邪魔じゃまになっていますが、声をかけずに見守っていていいんでしょうか」
「……えっと」
 どうしよ。あんなの、声をかけない方が不自然だよなー。でも、声をかけさせるのもなー。なんかモメそうだもんなー。アイツ、常識とかちょっとアレなとこあるし。まず手が出たりとかさー。よくないと思うよ、ああいうの。
 ブラッドは、うんとしばらくうなって、決断する。
「……見守っていてくれ。それとなく広場の方へみちびくようにな」
「ハッ!」
 愚直ぐちょくな部下どもで助かるぜ。
 コロコロと腹筋をきたえながら前進するマッシュを、警官たちはふわっと囲むように陣形を組んだ。優秀な部下どもで助かるぜ。
 優秀な部下たちは、たびたび「なんでそっちに行くんだよ!」としかりたくなるほどに道をはずれるマッシュをじりじりと広場の方へ誘導していくが、ふんわりしすぎていてどうにも効率が悪い。残念ながら、警察はふわっとした組織ではないのだ。
 さてどうしたらいいものか……。

● ここは、シュークリームをエサにしよう 》》A―16へ
● よし、手押し車方式だ 》》A―23へ

▽A―5

 甲冑男かっちゅうおとこが、おのを振り下ろす!!
 これから起こるであろう惨劇から顔をそむけて、ブラッドは目をじた――。が、聞こえてきたのは悲鳴でも断末魔だんまつまうめごえでもなく、可愛かわいい猫の鳴き声だった。ニャーン。
「なに……?」
 ブラッドは改めて甲冑男を見た。その足元、ゴミと雑草に埋もれかけた建物と建物の隙間すきまから、なんと1匹の子猫が現れたのだ。ニャーン。
「もしかして、出られなくなっていた子猫を助けただけ、なのか?」
 物陰ものかげに隠れて様子ようすうかがうブラッドだったが、甲冑男は人を襲うわけでも店を襲うわけでもなく、子猫をひとでするとガチャンガチャンと歩き去ってしまった。
「なんだ、ただのイカれた野郎やろうか……」
 最近は変なヤツが多い。意味もなく甲冑を着ている市民くらい、まあいるだろう。下手へたに職質なんかして、若者文化をわかってないイタい中年扱いされるのもうっとおしい。面倒めんどうからは目をそらすに越したことはなかった。
「そろそろ行くとするか」
 きびすを返したブラッドは、いつも通りのパトロール活動を行うことにした。つまり、見知った店々に顔を出しては、あれやこれやと難癖をつけ、ポケットいっぱいの煙草たばこや安酒、それに端金はしたがねを手に入れたのだ。
 特筆すべきことなどひとつもない、つまらない1日だった。
 家に帰って戦利品の酒を飲み、ベッドに入って眠りにつく前、ブラッドはふと思う。
 もしかして――。
 もっと別の1日もあったんじゃないか? 血き肉おどる、とはいかないだろうが、そこそこ楽しめて、笑えて、夜には美味うまい酒が飲めるような……。心地良い疲れの中でぐっすりと眠りにつけるような……。そんな1日を送ることもできたんじゃないのか?
 いや、そんな1日、オレには夢のまた夢か……。
 ブラッドはがらにもないことを考えた自分を笑い、重くだるい眠りと、にがい夢の中へ落ちていった。

 夢はうなされるものではなく、かなえるものだという。
 彼の1日はあなたの選択次第しだい。ページをめくって最初からやり直せば、この1日は何度だってやり直すことができる。ブラッドの望むような1日だって手に入るかもしれない。
 どうだろう、無理にとは言わないが、試してみてくれないか?
 今宵こよい、彼にもう少しいい夢を見させてあげるために――。
【GAME OVER】

▽A―6

「いらっしゃい、いらっしゃい! 竹だよ、竹! バーベキューに竹炭ちくたん! 乗るなら竹ボウキ! ペットのストレス対策にくだき専用竹! バンブー!!」
 やけにさわがしい男が、『トムの竹』となぐきされた手作りの屋台で竹を売っていた。
「なんだこりゃ」
 ブラッドが竹を手に取ると、セールストークが始まる。
「お目が高い! その竹は、切るかどうか迷ったいい竹だ! 2本買ったら、もう1本おまけだ! もってけドロボー!!」
「1本たりともいらねえよ。で、あんたがトムか? この竹はどこから切ってきた?」
 トムは公園の奥を指差して、胸を張る。
「ハッ、この公園の竹林で間伐かんばつした竹だ、たまに手入れしてるからな!」
「そうか、若いのにご苦労なことだな」
「ああ! 今日は後輩たちと遊ぶから、ちょっとかせいでおごってやろうと思ってな!」
「少ない稼ぎの中から奢るとは、いい先輩じゃねえか。涙が出るぜ」
 ブラッドはうつむいて笑いをころした。
 社会や組織でうまく立ちまわれない〝いいヤツ〟は、こうして働いて働いて働いて、すりつぶされて死ぬだけだ。オレはそんな底辺からは、いち早くおさらばして成り上がってやるのさ。そのためにも、あのキノコ頭には絶対に神覚者しんかくしゃになってもらわないと……。
 そうだ、アイツを探さないとな。
「おい、この公園で、キノコ頭のガキを見なかったか。たしか、4人連れだった」
「人探しか? だったら、のぞき竹がオススメだ!」
 と、屋台の男は竹の山の中から1本の太い竹を取り出す。
「なんだ、魔法の竹か?」
 くと、トムは笑って竹の切り口を目に当て、豪快に笑った。
「いや! こうすれば先が見える! それだけだ! それだけだが、これで探せばいつかは見つかる! それが人生という名の人生! 行くぞ! 竹とオレについてこい!」
「はァ!?」
 トムは駆け出した。さあ、ブラッドはどうする?

● ただの異常者じゃねえか、ばかばかしい。まちへ戻ろう 》》A―10へ
● 男を信じてついて行く 》》A―12へ

▽A―7

 いや待て。
 アイツらは魔法学校の生徒だが、魔法の使えないマッシュにつえなんか必要ないじゃないか。投げて武器にしたりするけど。そうだ、アイツが杖屋に行くわけがないな。行く流れになっても、全力回避するだろう。
 ブラッドは杖屋の前を通り過ぎ、まちの公園へ向かうことにした。
 休日の公園はホウキの練習をする子どもや、ペットや使役しえき魔物の散歩をさせる人々、そして普通にバーベキューをする家族連れなどでにぎわっている。
「誰のおかげで平和に暮らせてると思ってんだ、イイ気なもんだぜ……」
 くわえていた煙草たばこを踏み消して歩き出すと、公園の奥からなにやらおかしな声が聞こえてきた。ビンゴだ。アイツらが妙なことをして騒ぎを起こしたにきまっている。
 駆け出したブラッドが見たものは……。

● 竹屋台たけやたい 》》A―6へ
● 竹やぶ 》》A―24へ


続きはこちら


読んでいただきありがとうございました。
この続きは製品版でお楽しみください!


以下のリンクより購入が可能です。