初登場から28年。令和の「貞子」は一味違う! 貞子が子供を……!? 鈴木光司原作・杉原憲明脚本・牧野修著『貞子』

(この記事は、2019年5月18日にブログ『ミニキャッパー周平の百物語』に掲載された記事を再構成したものです)

こんばんは、ミニキャッパー周平です。ジャンプホラー小説大賞の宣伝企画であるこのコーナーでは、基本的に活字のホラー作品を取り上げているため、ホラー映画をご紹介したことはないのですが、ノベライズをご紹介することでそれに代えています。

1991年、小説『リング』で初登場したホラーキャラクター「貞子」ですが、映画『リング』の大ヒット、一部作品では画面から抜け出してくるビジュアルインパクトもあって、爆発的に知名度を高め、2012年公開の『貞子3D』で3Dになったり、2016年公開の『貞子VS伽椰子』では『呪怨』シリーズの伽椰子と戦ったりと、ゴジラを思わせる人気ぶりを誇っています。

そして現在(2019年6月11日)公開中の『貞子』は、初登場から28年目にして「令和」初の貞子映画となっていますが、そのノベライズも刊行されています。

今回の一冊は、鈴木光司原作・杉原憲明脚本・牧野修著『貞子』。

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両親による虐待から逃れるために、洞窟の祠で貞子と取引した女・初子は、自身の体に何者かの侵入を許してしまい、得体の知れぬ存在が宿ったことに気づく。それは新たな災厄の始まりだった。

数十年後。総合医療センターのカウンセリング・ルームで働く秋川茉優は、幼いころ両親の虐待に耐えかねて弟・和真とともに逃げ出し、児童養護施設に保護されたという過去があった。ある日、医療センターに緊急搬送されてきた少女は、ポルターガイストに似た現象を起こす超能力を持っていた。ほとんどコミュニケーションを取ろうとしない少女の正体は、複数の死者が出た火災現場の生存者だった。少女の影には、かつて井戸で死に、ビデオテープの呪いによって多くの人間を呪殺したと語られる女・貞子の姿が見え隠れする。時を同じくして、茉優の弟・和真は、Youtuberとして生計を立てようとするうちに、心霊スポットへの突入を思いつき、焼身自殺が起きたアパートに侵入するが……。

というわけで、本書はジャパニーズホラーの代名詞であもある『リング』第1作を踏まえた作品になっています。かつてはビデオテープに映った映像が呪いの感染源になり、謎を解く手がかりにもなったわけですが、2019年にはYoutubeの動画が重要な役割を果たすことは言うまでもありません。

特筆すべきは、本作が親子をテーマにした作品になっている点です。親から愛情を受けられなかったことが心に大きな影を落としているキャラも多いですし、災厄のトリガーにもなっています、驚くべきことに、物語の鍵を握る少女は、見ようによっては、貞子の娘ともいえます。もちろんだからといって本作品がハートフルドラマになり呪いの力が緩むかといえばそんなことはなく、無辜の登場人物たちは次々に恐怖体験に巻き込まれ、理不尽かつおぞましい死を迎えていくのでホラーファンの皆さまはご心配なく。

それにしても、平成の初期に登場したキャラクターである貞子が、小説や映画の様々なコンテンツで拡大し平成を通じて日本ホラーの顔となったばかりか、とうとう令和の時代まで生き延びているという事実に驚きの念を隠せません。さっきWikipediaを確認して知ったのですが、この映画化に合わせてスピンオフギャグコミック『貞子さんとさだこちゃん』や動画『【貞子】伊豆大島里帰りの旅〜友だち100人できるかな〜』がWEBに公開されているとのことで、もう国民的キャラクターと言ってもいいのではないでしょうか。願わくは、令和の時代にも、末永く語り継がれるホラーキャラクターが生まれて欲しいものです。

最後にCMを。令和のホラーシーンを築くのは貴方です。第5回ジャンプホラー小説大賞絶賛募集中。第4回金賞受賞作『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』(6月19日発売)は予約受付中! ゾンビになってしまった主人公の青春ドラマです!