幽霊の死体!? 幽霊誘拐事件!? 異常な事件に挑む“呪われた心霊科医”――岩城裕明『呪いに首はありますか』

(この記事は、2018年10月27日にブログ「ミニキャッパー周平の百物語」に掲載した内容を再構成し転載したものです)

こんばんは、ミニキャッパー周平です。表紙が怖すぎる本は床に伏せて見えないようにしておくタイプのホラー読者です。

ホラー小説は表紙から既に怖いものが多いですが、今回ご紹介する一冊は、書店で見かけた時のインパクトで言えば群を抜いています。百聞は一見にしかず、それではこちらの書影をどうぞ。

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見ての通り、目が多数ある異形の顔がどアップ。見た瞬間に鳥肌が立ちそうなショッキングな表紙ですが、中身は意外なことに、しっとりとしたムードの作品となっています。

という訳で、本日ご紹介する一冊は、岩城裕明『呪いに首はありますか』。

事故物件である病院の建物を借りて、「心霊科医」として霊現象関連のトラブルを解決する男、久那納恵介(くななん・けいすけ)。彼がその仕事を選んだのには、のっぴきならない理由があった。
恵介の家系には、いつからか、「長子は三〇歳の誕生日を迎える前に必ず死ぬ」という正体不明の呪いがかけられていた。彼の先代もその先代も、呪いによって死んだ。現在二八歳である恵介は、このままいけば二年以内に死を迎えることになる。それを回避する唯一の方法が、霊にまつわる事件を解決し、その霊の思念を、彼に憑りついた呪いである「墓麿(はかまろ)」に与え続けて、呪いを解くというものだった。しかし、霊現象に挑むとはいえ、恵介自身は霊能力はもっていないので、霊を見ることのできる者、つまり呪いである墓麿の力を借りていくことになる……。

心霊探偵ものとはいえかなりの変わり種で、たとえば第一話「どうして幽霊は服を着ているのですか?」で取り上げられる事件は、「家の中に『幽霊の死体』がある」というとっぴなもの。第2話「身代金の相場を教えてください」で持ち込まれる相談は、「死んだ娘の幽霊と一緒に暮らしていたが、その幽霊が『誘拐』されたので探して欲しい」という、更に奇想天外なものです。

「幽霊の死体って何!? 幽霊が誘拐されるってどういうこと!?」と気になってしまった方は、ぜひご自身で確かめて下さい。そういった、単なる心霊現象や祟り以上に理解不能な事態を主人公コンビが探っていくうちに、霊の生態が明らかになっていき、ストンと腑に落ちる解決を得られるはずです。

第3話「結婚してから彼が変わったように思います」は夫婦関係に霊が割り込んでくる、という話。切ない余韻をもたらす事件もあれば、不気味な後味を残す事件もありますが、物凄く変わった外側から、非常に明瞭な内幕が提示される意外性に、快感を覚える作品になっているのは全編共通しています。

第4話「犬も幽霊になるのでしょうか?」では、散歩中に飼い主ともども死んでしまった「犬」の霊の奇天烈な外見(血が出てるとか内臓がはみ出ているとかそういう次元の話ではない)にのけぞってしまいますが、その心残りと成仏のさせ方には健気で泣かせるものがあります。

そして「三〇歳までに死んでしまう呪いを解くために事件を解決していく」のに「呪いである墓麿をパートナーとして仕事している」というねじれが、クライマックスの第5話にて重大な意味をもってきます。静かで淡々としているのに感情を掻き立てる感動的な終盤が待っています。表紙で怖気づいてしまった人も改めて手に取ってみてはいかがでしょうか。読み終わった後には、この表紙でなければならない理由もお分かりになるはずです。


さてCMですが、表紙と言えば、第4回ジャンプホラー小説大賞《金賞》受賞作『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』の表紙では、主人公の顔がゾンビ化しています。ゾンビから巧妙に逃げ回る多くのゾンビ小説主人公とは異なり、ストーリー開始後真っ先にゾンビになってしまった大学生・藤堂の運命は……!? 6月19日発売。どうぞ宜しくお願いいたします。

そして6月30日〆切の第5回ジャンプホラー小説大賞、原稿募集中。宜しくお願いいたします。