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日々のフィールドワーク

先日、学問バーに行った。毎回テーマとプレゼン者(主に大学院生や研究者)が日替わりで、色んな議論ができるというコンセプトのバーなのだが今回は文化人類学の回だった。行った時とその後に色々な知見が得られたので書いていこうと思う。

学問バーのリンク↓

当日使われていたスライド↓

私の行った回のnote↓

文化人類学ざっくり解説

どんな学問?

文化人類学とは、すごく簡単に言うと
「なんか自分にはわかんないなぁ不思議だなぁ」と思う価値観を持つ人たちと一緒に過ごす(フィールドワーク)ことを通じてその人たちのあり方を実際に体験しながら学び、
経験してきたことをもとに「あれってこういう理論になるんじゃないか」と色々考えて系統立てて発表して研究していく、という感じの学問 らしい。

仮説を立てない?

仮説を立てると観測者の価値観が入り込んでしまうのでなるべく仮説も何も立てず徐にフィールドワークしに行ってなるべくありのままの姿を捉えながら現地で色々考えて情報を集めてくるらしい。いわば超強化版くらがりチャレンジを学問として真面目にやっているという、なかなかぶっ飛んだ分野だなという印象を受けた。

※扱う対象としては民族っぽいもの(呪術とか)が多いものの、お話されてた方は医療人類学に関心があるそうで産後ケアの実態が気になって色々インタビューしたりしたそう。

医療と呪術と宗教

疾病と病い

個人的には、西洋医学では病気を疾病/病いという二分法で捉えて主に疾病の部分に注目して治療しているが、呪術では病いの部分を癒す、というところが面白かった。
「病い」は疾病を個人がどう経験して意味づけているのかという部分。
病気を治療者-治療を受ける側の関係性や相互関係としてではなく、患者それぞれの経験として捉えることが大きな特徴らしい。

意味を知りたい私たち

そもそも人は「自分がなぜ病気になってしまったのか/ならなければならなかったのか」という病気になった「意味」を知ろうとしている。
呪術というものは「呪術的実践は信じるに値する」という人々の持つ観念によって強く支えられているため、呪医側が大きな力を持っているだけでは成立しない。呪術パワーをしっかりと発揮するためには呪術が有効だと思っておいてもらわないといけないから、下準備が大事なのだ。
(ガン等はもちろん治療できないので、優秀な呪医の場合は受診を勧める場合もあり)

多分、看護は西洋医学の中では「疾病」で捉え切れないような部分を(病いも含めて)担っているっぽい。それを「個別性に合わせたケア」と呼ぶのか「呪術」と呼ぶのかの違いはあるが、どちらも患者の「病い」の物語の中に介入したり寄り添ったりより良い物語の素材を提供したりするという意味では大した違いはないのかもしれないなぁ、と思った。

宗教と呪術の違い?

当日出た問いの中で特に面白かったのは「宗教と呪術の違いは何なのか?」という問い。
信仰というくくりの中に宗教という大きな基礎のような部分があり、その上部構造としての呪術(力のようなものを発揮する具体的手段)が存在しているのではないかという仮説が立った。
しかし、例外として、地域に土着の「因果関係はわからないがうまくいったので続けている」習慣は呪術的が宗教性を帯びてはいない(ex.薬草による治療、お供物信仰)という意見もあり、なかなか興味深かった。
他にも色々と意見が出て活発に議論されていた。

感想

異なった価値観への向き合い方

全体を通して、感じたこととしては「フィールドワークって、発達障害者(特にASD)が定型の人たちに合わせて社会性をインストールしていくときの手法とかなり似てる!」ということだった。一緒に学問バーに行った友達と「結局アスペがいかに処世術を身につけて帰ってくるかという話に似てるよね〜」と言い合いながらご機嫌で帰った。

発達障害を持っている人類からすると、そうでない人類はよくわからない呪術をやりながら空気という特殊な雰囲気を感じ取りながら色々やりくりしている部族にしか見えない。
でも、元々の価値観は全然違っても、その中に入って一緒に暮らしていく中で少しずつその慣習の空気に慣れていって「発達障害っぽくない」やり方を身につけていくことはできる。
実際、私も中学から今まで15年ぐらい女子だらけの環境で過ごしてきたので、一応元々はアスペではあるものの女子のノリに合わせるのは普通ぐらいにはできるようになった経験はある。

分からないまま、慣れる

なんというか、言語化は難しいんだけど、定型発達の人たちの間に入ると自分の中で「定型発達の人たちのモード」に入って、自然と「この空気感はこうかな」と分かるようになる感じ。まさに、「分からないまま、慣れる。」
ほんとに観察と経験と学習を繰り返したらいつのまにかできる、そんな感覚がきっとフィールドワークなんだろうと思った。

そういった希望を持てるような内容だし、なかなか発達障害同士で社会的なライフハックを理屈で共有しづらいのも、「文化人類学者の人が頑張ってやってる理論化をただの一般人がやろうとしても、そりゃあ難しいよなぁ」と納得することができた。
すぐ分からなくてもいいから、とりあえずやってみて少しずつ慣れて掴んでいけばいいんだね。

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