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#58 『私と日産 巨大自動車産業の光と影』ー西川廣人著を読んで

ReHacQのリンク先の放送を試聴しました。因みにこちらは前編です。前日産自動車代表取締役社長の西川廣人氏が出版されたご著書『私の日産 巨大自動車産業の光と影』をお読みになったことから、高橋プロデューサーがインタビューをご希望されて番組が実現したそうです。

この放送の中で、カルロスゴーン氏の強みと弱みについて語られているのをお聞きして、非常に興味を持ち、ご著書を拝読いたしました。

日産自動車の技術職についていた前夫と一緒にいた期間は、1994年から1998年で、日産自動車にとって苦境な時代。その後カルロスゴーン氏の登場、そしてV字回復したことは、部外者ながら良かった、と思っていました。そうした経緯があった為、例の事件にはそれなりの衝撃を受け、一時代が終わったなと感慨深く傍観していました。

とはいえ、そこまで日産自動車に関心は持っていなかったので、ゴーン氏逮捕時に西川氏が一人で挑んだ記者会見も恐らく観たのは一部で、お顔には薄らと記憶があったものの、お名前も苗字だけは知っていたかも、というほどの認識でした。

ご著書でもゴーン氏の強みと弱みについては書かれていますが、まず強みは、複雑な状況を説明を聞いて的確に理解することが出来、解決策を端的に言語化して指示だしができるそうです。逆に弱みは、いわゆる改善への対応の素晴らしさと比べ、未来に向けたビジョンを描くことができていなかったと。

職位が上がると現場への理解が薄まり、説明してもイマイチ伝わらない管理職、皆様の職場にもいませんか?ゴーン氏は、そういうタイプではなく、非常に的確に状況が把握できるうえ、更に、指示が非常にシンプルで明快だったそうです。

そして、外部から見ていても、失礼ながら、日産自動車、ビジョンが描けていない感じしましたよね。

ゴーン氏と私を比べるのは大変失礼で対応する次元には大きな隔たりがありますが、自身のタイプとして状況把握や人が訴えかけてくる内容を把握することが得意で、何とか解決策を思い浮かべることはできるものの、新しいものを生み出すことが出来ません。小商をやってみたい、良やってみよう、と思うものの、何年かけても何も思い浮かばない。ある種の親近感を覚え、非常に興味が湧き、ご著書を拝読しました。

西川氏のご経歴、ご存じですか?都立戸山高校から東京大学経済学部を経て、日産自動車に入社されたそうです。視覚的な印象としては、こざっぱりとした身だしなみで、実直な印象を受けました。父上、裁判官でいらしたそうですが、きちんとした家庭で、堅実に育てられたのだろうということが、パッと見ただけでもわかる様な方だと思いました。

そんな西川氏、ゴーン氏の言葉を借りると「インターナショナル」、私の表現で言い表すと、見た目とは違って日本人離れした方、の様です。

入社直後の研修期間には過酷な工場勤務をされたそうですが、その後、比較的時間的に余裕のある職場に在籍。その間に、奥様から「暇そうだから、英語を学んだら」と勧められ、社内の英語講座に休みなく参加し、英会話を身につけられて、ご家族を伴って米国留学と勤務をご経験されたそうです。

お子様たちも、ご自身も、帰国後は日本での暮らしに馴染めなかったそうで、その後、英国勤務の機会が訪れた際には、急遽、奥様にも英国に来てもらいたいと伝えたところ、快諾してもらったというエピソードが書籍でご紹介くださっています。

脱線しますが、#49で杉本貴司さんの書かれた『ユニクロ』で、柳井氏の奥様について触れておりますが、西川氏の奥様も、英語がご堪能のご様子で、且つ、人格者の様です。社長になる方の奥様、というのは、それ相応のパートナーなのですね。

ゴーン氏の西川氏評、「インターナショナル」云々については、ご著書の第八章 退社まで、で触れられています。

フランスのフロランジェ法(ルノーの経営、ひいては日産の経営に関わります)にかかる問題について、後に大統領となる、当時は経済・産業デジタル大臣だったマクロン大統領のチームと議論されていたそうです。当時、仏首相が来日時のレセプションパーティでの出来事として、「フランス政府がルノーに影響を与えるのではないか、と日産が心配している」と日本の担当省庁の役人が仏首相に話して貰えるものと思って様子を見守っていたところ、期待に反した状況にこれはまずいと思い、自ら首相に直球で意見を述べられたそうです。

言おうと思ったけれど、言えなかった・言わなかった、とならず、差し迫った状況であれば発言する、とか、日本人だけで固まるのはよろしくない、などのエピソードが本著の中で書かれていますが、そういうザ日本的でないところが、周囲に受け入れられず、ゴーン氏無き後、短期で社長を追われることになったのだろうな、と感じました。

リンク先動画のコメントには、西川氏に対して批判的なご意見も多数見られます。例の事件や日産自動車のことについて、詳しく知らない中で本著を読んだ感想として書かせてもらっています。

日産自動車の経営が厳しくなっていた頃、退職を考えられていたそうです。ゴーン氏が就任されたことで、退職せず、結果、社長に就任されたので良かったようにも思いますが、転職されていらしたら、どうなっていらしたのかな、という事も気になりました。

ご自身でお書きになられている様に感じましたが、分かり易く、読みやすい文章で、内容もさることながら、本として読んで良かったです。

今回も、恐ろしく稚拙な感想です。

以上です。





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