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#36 結婚と離婚に損得があることをご存知ですか?

藤沢数希さんの著作『損する結婚 儲かる離婚』を読ませて頂きました。1回ずつ経験した結婚と離婚を損得という視点から捉えた事が無かったので、書籍の内容は新鮮であり、世の中そんなことになっていたのかと驚きも覚えました。

結婚離婚の損得だけではなく、結婚制度や文化的な面からの考察もあり、学びや思考が出来たので、この本について記録しておくことにしました。

岡田斗司夫さんの『サイコパスの人生相談』の回答の中で紹介されていたことがきっかけで本著を知りました。相談のタイトルは『不貞行為をして離婚することに。出来るだけ金を取りたい』でした。

岡田さんは回答の中で、「この相談者に対してどういう感想を持つかよりも、僕に相談してきた人に対してどうしてあげようかと考えるスタンス」と前置きされています。そこを前提としたご回答の中で『損する結婚 儲かる離婚』をご紹介くださっています。


有名人離婚の際に「慰謝料」が話題になりますが、厳密な意味の慰謝料は日本において数百万程度で、これに加えた「財産分与」「婚姻費用」を合わせて、「慰謝料」と報じているそうです。そして、「婚姻費用」は「コンピ」というそうです。私は今回、初めてこの事を知りましたが、皆さんはご存知でしたでしょうか?

婚姻費用とは、「離婚を希望した時点から実際に離婚が成立するまでの期間」収入の「高い方が低い方」に支払う言わば生活費。浮気など非が合った方ではなく収入の高い方が支払うという事には、驚きを隠せませんでした。更に、離婚が成立するまで「婚姻費用」を支払い続ける義務があることから、お金の無い方は離婚成立を引き伸ばし、お金のある方は離婚の成立を急ぐそうで、そのあたりの駆け引きが繰り広げられているそう。

婚姻してからの財産は「2人で築いた」とみなされるそうで、これも収入の有無ではなく、当分に「財産分与」するそうです。

書籍には資産家や有名人の事例を上げて説明くださっていますが、給与所得者は収入の改ざんが出来ないことから、高収入会社員と専業主婦・夫の離婚は会社員側に金銭的なダメージが大きいということでした。

逆に資産家で、婚姻以降に収入が無い(少ない)場合、婚姻以前から持っていた資産は「婚姻開始から」という線引きから外れ「財産分与」としてはノーカウントになるので、このケースの結婚離婚では得を期待出来ないそうです。

婚姻届をいつ提出するかや、不貞行為が発覚した際に収入をストップさせる対策等も事例を上げてくださり理解が深まるにつれ、上手くいっていないのに、離婚成立まで揉めているケースの背景を知ることが出来ました。

この辺りは弁護士の方が公にすることを控えてるそうで、法律家でない筆者が金融業界での経験を通し「法的契約は、ひとつの金融商品の取引だと考えて分析すると、驚くほどその本質が理解できる」ということから、コンピの計算方法も紐解いてくださっています。

未婚の場合には婚姻費用は保障の対象では無いそうですが、「愛人でも報われる損益分岐点」を用いて、未婚出産のメリットについても触れられています。

タイトルの影響もあり、損益分岐点まで持ち出されると、お金の損得について取り上げているとばかりか…と思いましたが、読み進めると、本著の核心はそこではない、と伝わってきました。

資産家が結婚を望まない女性を妊娠させ中絶を要求。それを受け入れた後、女性にはが慰謝料を請求した事案を使って、筆者の視点から、未婚で出産をすることも一案という考えを述べられています。

男女とも「子供を持つには婚姻関係が必要」という固定概念がある。男性側へは、2,3億程度の養育費が負担にならないのであれば争い回避も選択肢となる。女性側へは、養育費のみならず子供には遺産相続の権利が発生することを考えれば、子供を持つ選択肢もあったのではないか、という持論を展開されています。

この後、子供の有無と男女の同居別居4ケースを想定しつつ、「仮に相手の男性と結婚出来ないとしても、女性の意志で子供を産みたい時に産む選択もできる社会が豊かな社会ではないだろうか」という展開に繋がってきました。

「欧米先進国では同居して子供を設けているものの、法的に婚姻していない家族が増えているが、日本はこのタイプの家族がスタンダードになっていない」という部分を読んで、共同親権法案に反対の意見を持つ方は、家族の在り方が結婚と離婚が前提で、事実婚のケースについてはどのように考えているのか非常に気になりました。ご存じかと思いますが、事実婚では母親が親権を持ち、裁判で父親が親権を持つことができるものの、いずれにしても親権はどちらか1人です。

本著のあとがきでトランプ元大統領の婚姻・家族について取り上げられています。「元大統領の保護主義的経済政策には不賛成で非支持」でありつつも、3回の結婚で5人の子供を持つトランプ氏を「伝統的な結婚観を持つ共和党から誕生したことは、家族の形の多様性がアメリカ国民に受け入れられた事は悪くない」と思ったと綴っています。

日本は法律上の結婚にこだわるあまり、それ以外の関係に対する差別がいまだに残っているように思う。芸能人や政治家の不倫などが報道されると、世間は激しくバッシングする。隠し子がいることなどが発覚すると、さらに非難する。しかし、これは暗に、その背後にいる愛人をしている女性や、不倫でできた子は差別していい、と認めているようなものだ。このような家庭の問題はプライベートなことであり、赤の他人がどうこう言うべき問題ではなく、非難する権利があるのは、当事者の彼の妻だけのはずだ。自分に迷惑がかからない話なら、人が不倫していようがいまいが、別にどうでもいいではないか。  また、非難とは反対に、片親の子供や事実婚などで生まれた子供を「かわいそう」だと言う人もいる。不倫の末に生まれてきた子供なら、なおさらかわいそうだ。しかし、一言でいえば、それは余計なお世話というものだろう。奥さんや子供がいるにもかかわらず、若い愛人とも関係を持てるようなお父さんは、経済的にも豊かで、魅力的な男性に違いない。そんな他人の家庭の子供の心配をする前に、まずは自分の心配をしたらいいだろう。幸いなことに、2013年に非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定が改正された。法律上は婚外子への差別は完全に撤廃されたのだ。

藤沢数希. 損する結婚 儲かる離婚(新潮新書) (pp.159-160). 新潮社. Kindle 版.

あとがきの追記に、コンピ地獄に陥った女性の話を書いてくださっています。
タイトルや、前半部分で先入観を持つ事なく、最後まで読んだ事で、わたしの言いたい事を全て書いてくださっていると共感を覚えました。

自身は妊娠経験がなく、出産するかどうかについて悩む機会は訪れませんでした。もし、未婚で妊娠したらという想像をして怯えたことはあり、また、未婚で妊娠する勇気はなかったです。

この著作の中では中絶についても実数を上げて触れられています。

妊娠だけさせて逃げる男性は論外ですが、日本の社会が様々な家族の形が自然に受け入れられ、また、金銭的にも権利的にも守られるようになることを、密かに願っています。

以上です。










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