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#39 映画『パリ、テキサス』を観て

第76回カンヌ国際映画祭にて役所広司さんが男優賞を受賞した作品『PERFECT DAYS』の監督、ヴィム・ベンダースさんの作品で、第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した作品『パリ、テキサス』を観てきました。今回も稚拙な感想を記しておきます。

妻子を捨てて失踪中の兄トラヴィスがテキサスの砂漠で見つかった、と連絡を受けた迎えに行った弟ウォルト。航空機での移動を拒み、遠路を自動車で移動しながら、口の重い兄から失踪の理由等を聞き出しながら、弟自身の妻と兄の息子ハンターの待つ自宅へ連れて帰りました。というのも、兄失踪後、義理弟夫妻の家に息子を置いて母失踪。両親ともに去ってしまったハンターは、弟夫妻の家庭で暮らすようになっていました。

兄の息子ハンターを実子の様に愛情を注ぎ育てながらも、兄の気持ちを尊重し、実父への蟠りを拭えないハンターに父との距離を縮めるよう働きかける弟の尽力で、親子は急接近。そんな様子を見た弟の妻は、失踪した兄の妻から一年前まで電話連絡があったこと、一年前に息子ハンター の銀行口座開設の依頼を受け、その後、ハンター宛に不定期な送金があることを兄トラヴィスに伝えます。

それを聞いてトラヴィスは行動に移し、父子は母を探す旅に出ます。幸い、ハンターの手柄で妻を見つけ出す事が出来たトラヴィスは、録音で息子に自身の思いを伝え、元妻に自分は去るがハンターを宿泊先へ迎えに行って欲しいと誠実に希望を伝え、心を動かされた元妻であり実母は息子ハンターと再会を果たし、それを見届けたトラヴィスは静かに2人の元を去ります。

ヴィム・ヴェンダース監督作品を観るのは2作目ですが、「誠実さ」を描かれる方という印象を持ちました。

兄であり父であるトラヴィスは、10代の若い女性と仕事も手に付かないほどの盲目的な恋に落ち、妊娠した妻と子供への深い愛情を持ちながら、一方で妻を疑う気持ちが芽生え強い嫉妬心を持ってしまった自分を顧みて、反省するばかりでなく、隠す事なく自身の心の動きと、妻と息子にとって最善な道に進んで欲しいという希望を率直に相手に伝えています。

元妻は女は打っても体を売ることを避け、息子への愛情を持ち続けていました。

弟は自身の子としてハンターを育て、手放したくない、という気持ちを兄に伝えながらも、ハンターと兄の気持ちを尊重。更には、夫と同じく弟の妻もハンターを手放したくない、という気持ちを夫にぶつけながらも、兄の妻でありハンターの母である兄嫁のハンターに対する愛情を持った行動を、兄に隠す事なく伝えます。

弟や弟の妻が自分達の欲に駆られた行動を取ることで、親子が望んだ関係に戻れず破綻するストーリーは度々見かけますが、本作に登場する人全て、変に反抗的な行動をせず、自身の希望が叶わないことで悲しみながらも、誠実な行動を選んでいます。

この作品、今日まで観なくて良かったです。わたしは、人は誠実なもの、と思い込んでおり、嫉妬や嘘、裏切り、のようなものは自分の身の回りには無いものと信じ込んでいました。

もし、この作品を上映当時に観ていたら、世の中を理解することに、今以上時間を要してしまったと思います。また、もう少し前に観ていたら、こんな世の中はあるわけないね、と素直に受け取れなかった様に思います。

今だからこそ、綺麗な心を観せてもらって有難う、と正面からこの作品を鑑賞できました。

以上です。




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