ボードゲームの感想 『アンドールの伝説』

『アンドールの伝説』は協力型ボードゲームの名作として有名な作品です。2013年のドイツ年間ゲーム大賞でエキスパート部門を受賞しています。ファンタジーをボードゲームに落とし込むことに成功しているので、ファンタジー好きにおすすめできます。


#基本情報

デザイナー Micheael Menzel

プレイ人数 1~4人

発売日 2019年4月25日

価格 5600円

発売元 株式会社アークライト


#ゲームの世界

『アンドールの伝説』には作り込まれた設定がある。この設定があることで、ゲームに対する没入感を高めることに成功している。

・時代設定

小規模な奴隷の一団が、過酷な監督官の目を盗んで、未踏の大地へと逃げ出しました。その途上、灰色山脈を踏破する中、一匹の竜に遭遇し、危うく全滅の危機に瀕しました。リーダーのブランドゥルは自分の民に対する責任を痛感し、鋼の意志と炎の勇気で果敢に戦いを挑んだため、竜は「不滅であるはずの己の命が、まさか失われるのでは?」と不安に襲われました。そのため、ブランドゥルとその民の通過を、許さざるを得なかったのです。以来この流派ブランドゥルに対する復讐を誓い、破滅をもたらそうと、己の眷属たる怪物たちを派遣して、周辺を襲わせるようになったのです。この物語はこれらの出来事の80年後に始まります。ブランドゥルは、アンドールと名付けられた新天地の王となっています。


#アンドールの始め方

『アンドールの伝説』には〈伝説の幕開け〉というチュートリアルが用意されているので、箱を開けただけですぐにゲームを始められることが特徴です。チュートリアル用のセットアップは本シナリオよりもコンポーネントが少なくてすむので、動き方を学ぶことができます。実際に始める場合には、分厚いシナリオブックを読む必要はありません。まとまったカードに必要な情報がまとめられているので、カードの指示にしたがって行くだけで進行可能です。具体的にはシナリオごとに準備を行い必要な駒を取り、迫りくる困難を解決して目的を達成していきます。


#アンドールの特徴

・成長しない主人公

プレイヤーは四人の主人公の中から一人を選ぶことができます。剣士・戦士・射手・魔法使いの4つの職業に分かれており、更に男女の区別があります。男女の区別があると言っても、能力に違いはありません。得意不得意はありますが、選んだキャラクターによって難易度が上がるということはありません。このゲームにはレベルという概念がなく、またシナリオもそれぞれ独立しています。したがってキャラクターの成長を楽しみながらシナリオを進めていくという形ではなく、マップクリア方式のシュミレーションゲームに近いシステムだといえます。レベルという概念はありませんがキャラクターを強化することは可能です。その方法はお金を支払ってアイテムを購入することと、井戸から意志力をもらうことです。意志力は戦闘の結果によって増減しますが、意志力が貯まると触れるサイコロの数が増え、戦闘が優位に進められます。


・戦闘の難しさ

シナリオが進むごとにモンスターは質量ともに多くなってきます。モンスターを倒せばお金と意志力が溜まりキャラクターは強化されるのですが、その分タイムマーカーが進んでしまいゲームオーバーのリスクも高まります。シナリオごとに終了になってしまう基準も別個に違います。したがってこのゲームでの戦闘の役割は一般的なRPGでの位置づけとは大きく違うものです。ただシナリオによってはボスに当たる敵も出てきます。その場合ある程度はキャラクターを育てておかないと積んでしまうので注意が必要です。時間と強化の兼ね合いをしなければならないので、戦闘をただ単純に楽しめるようにはなっていません。ただ戦闘自体はシンプルな力比べなのでサクサクすすめます。


・シナリオが先読みできない

アンドールの伝説のシナリオは、ゲームブック式ではありません。アルファベットが割り振られたカードでシナリオの進行が管理されているので、クリア目的すらカードをめくらなければわからない仕組みになっています。何度も失敗しながら最適な身の処し方を見つけていくというのが、基本的なやりかたです。シナリオカードにはゲームのルールやモンスターの配置だけでなく、マップの変化や終了条件まで記述されます。ですから途中までうまく行っていたとしてもすべてひっくり返されてしまう可能性も出てきます。シナリオの内容は基本的にアンドールに降りかかる驚異に立ち向かうというものになります。


#感想

シナリオは5つですが、コンポーネントは最低限に抑えられているのでかさばることはないです。あと拡張が2つあります。一つひとつのパーツが何度も活用されていることも遊びやすさに貢献しています。何度も試行錯誤をしながら繰り返し遊ぶことが想定されるので、コンポーネントが少ない点は嬉しいです。セットアップはゲームの進行ごとに行う必要があるので、その点は少し面倒です。マップはヘクスで分かれており数字が割り振られているのですが、順不同なので見つけにくい点も気にかかりました。


チュートリアルがついていて遊びながらルールを覚えていけるので初心者でも安心です。大規模の部類のボードゲームになりますが、複雑さは低いです。TRPGのようにファンタジーの世界を味わえますが、ゲームマスターは不要です。一人でも遊ぶことができるのでいつでも楽しむことができます。