沖縄のそこらへんの木でも紹介しておけ! 10種(9位、10位)コバノナンヨウスギ、ユスラヤシ
9位 Araucaria heterophylla コバノナンヨウスギ(ナンヨウスギ科)
地面にヒモみたいな葉が落ちています。
なんだろうと見上げると、独特の樹形を持つ針葉樹が目に入ります。
コバノナンヨウスギは、マツ科やヒノキ科ではなく、ナンヨウスギ科です。
漢字で書くと南洋杉。熱帯・亜熱帯に生える針葉樹です。
高さは最大60mに達するといわれます。
通例、3m超えで高木扱いのところ、本種はひと桁違います。
遠くから見えるので、よいランドマークになるとか。
(注:世界一高いことで有名なセコイアの100m超えには負けます)
海洋博公園や、東南植物楽園に植栽されています。
このうちのどれかは、オール沖縄で最も高い木かもしれません。
僕の目には、もっと伸びそうに見えました。
10位 Archontophoenix alexandrae ユスラヤシ(ヤシ科)
推しのヤシがない人には、東南植物楽園のユスラヤシ並木を薦めます。
このユスラヤシ並木は、植物の展示というよりインスタレーションです。
ヤシの幹が作る幻想的な空間を歩いて楽しみます。(写真は公式を参照)
歩きながら「あれ、ヤシは枝分かれしない?」と気がついた人はご慧眼。
「幹だけでいける!」と立案した当時の企画者はただものではないです。
ユスラヤシの幹の心地よさは、熱愛者が多いブナの幹にも通じます。
(注:地衣類を専門とする人は、幹そっちのけかもしれません)
並木の葉は高いところにあって観察できません。
先ごろ、夢の島熱帯植物館ではダイオウヤシを伐採することになりました。
関東で大型のヤシを育てようとすると、天井の問題が必発します。
さよならダイオウヤシ・・・、いや、感傷に浸っている場合ではないです。
まともに観察できるのは伐採直後だけです。
ユスラヤシは国内ではダイオウヤシに次ぐ高さを誇ります。
ガラスの天井なしで、空高く伸びるヤシは南国ならでは。
背が高すぎて葉を観察できないのはよしとしましょう。
学生 「質問です。ヤシは草本/木本、どちらですか?
夢の島でみたダイオウヤシの断面には年輪がなかったです」
年輪の有無を問わず、形成層で幹が太くなるものは木本扱いします。
しかし、草か木かはあまり気にしなくてよいです。
自然が出した結論は「草木こだわらず」でした。
多くの科が、ときには属が、草と木の両方を含みます。
日当たり良好の可能性を求めて、新天地を目指したほうが有利か。
年ごとに背丈を伸ばし、日当たり競争の勝者を目指したほうが有利か。
草木の差は、事業論のブルーオーシャン / レッドオーシャンのようです。
ところで、推しのヤシがある人たちから以下の声が聞こえてきます。
「ダイオウヤシが一番。コバノナンヨウスギを高さで推しましたよね」
「トックリヤシなら観光客でも見分けられる。トックリとご覧あれ」
「ヤエヤマヤシを推さないとは何事ですか。固有種なのに」
「ヒメショウジョウヤシ。色をみてから決めてほしい」
「アレカヤシ。ホテルのロビーを飾る美しさ」
「ナツメヤシ。デーツがおいしいから」
「ココヤシ。知名度トップクラス」
「マニラヤシ。那覇空港ご用達」
「クロッグ。観察しやすい」
「ビロウもいいと思う」
「かなりいいヤシ、カナリーヤシ」
・・・
どのヤシもユニークで魅力的です。
社会性、産業性、由来、逸話も含めて・・・、うーむ、絞りかねます。
1本勝負だったらユスラヤシを落としたかもしれません。
東南植物楽園のユスラヤシ並木はほんとうに見事です。
その見事さは、ヤシを風景としか思わない一般客を呼び寄せるほど。
観光客たちは国際通りのヤエヤマヤシを素通りしていました。
目を向けてもらえないことには始まりません。
落選したヤシたち「数の暴力だー!ヽ(`Д´)ノ」
すまぬ・・・。
以上、沖縄のそこらへんの木、1位から10位の発表でした。
これでおしま・・・。
いや、ランク漏れした木々から苦情が入っています。
次号、番外編です。
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