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コアジサイの黒葉
Hydrangea hirta(コアジサイ)は、山野に生える小木です。
6月に山を訪れると、薄い青紫色の小さな花をみることができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1712401889271-B91jgZZynK.jpg?width=1200)
アジサイらしく、花色に幅があります。こちらは白花の個体です。
(form. albiflora)
![](https://assets.st-note.com/img/1704458925637-6WISbJI7bO.jpg?width=1200)
よくみると、白花でも茎は紫色を呈しています。
青紫花同様、青紫系の色素を持っていることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1704459043427-IWZ9NwJVg5.jpg?width=1200)
さて、このコアジサイ、秋になると、独特の葉色を示します。
まず、クロロフィルが分解され、カロチノイドの黄色が現われます。
葉が黄色くなる植物はたくさんあるのでこれは珍しくないでしょう。
(下部に写っているのはカエデの紅葉です)
![](https://assets.st-note.com/img/1704289912346-okwZYq7zOL.jpg?width=1200)
葉の形はいかにもアジサイです。
僕はつい、ユキノシタ科といってしまいそうになりますが、
APG分類でアジサイ科として独立させることになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1704289930658-QLrN6iMlox.jpg?width=1200)
枯れたところから、少しずつ黒みを帯びてきます。
枯れた葉が黒っぽいのはふつうじゃないかって?
![](https://assets.st-note.com/img/1704289948257-LWvXMwVF2K.jpg?width=1200)
他の落ち葉と比べると、ふつうでない色合いがはっきりします。
![](https://assets.st-note.com/img/1704289976215-aLQnE2A8FA.jpg?width=1200)
枯れたあとに発現する成分としては、クマリン配糖体が有名です。
サクラやフジバカマは、枯れるとクマリン配糖体が加水分解し、
クマリンを生じて、よい香りがします。
アジサイには青酸配糖体が含まれるそうですが、青酸に色はありません。
青酸は三重結合を持ち、反応性が高いので、青酸が生成したあと、
別の何かと反応して、黒化に寄与する可能性はあります。
植物全体では、秋の葉の呈色はアントシアニン群であることが多いです。
コアジサイが、秋になってデルフィニジンを作るのであれば、紅葉ならぬ青紫葉になりそうですが、実際は黄葉です。
前駆体の形で保持していて、枯死で呈色するのかもしれません。
「枯れたあとでも酵素が働くのですか」と言われたらYesです。
緑茶の加工でも葉を摘んだあと、速やかに蒸して酵素を失活させています。
「アジサイの色素なら青紫色のはず。黒色なので違うのでは」
という意見もあるかもしれませんね。
植物には黒色を呈する花もいくつかあります。
有名なのはブラックパンジーでしょう。
ブラックデライト、ブラックプリンス、ハローウィン、ムーランフリルネロなどの品種があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1721911544467-3U1xQM1d5q.jpg)
これらのパンジーは黒色の色素を持っているわけではなく、
黄色と濃紫色の色素が同時に発色して黒に近い色になっています。
赤色と緑色が同時に発色する植物もあって、そのケースも暗色です。
反対色が同時に発色すると暗色にみえる。
ポスト印象派の画家たちが、色が混ざって暗く見えるのを嫌がり、
絵具を混ぜずに点で表現したことを思い出します。
コアジサイの場合、カロチノイドの黄色に青紫の色素が加わって
黒っぽくなったのではないかと想像しています。
分析していないので、実際のところはわかりません。
邦文誌には報告がありませんでした。
(Hydrangea hirtaは日本の自生種ですので、J-stageで検索しています)
アントシアニンの呈色はpHで変わります。
デルフィニジンはアルカリ性で青ですが、酸性では赤・・・。
分析する方は、HPLCの検出波長でピークがでない?と慌てないように。
最初はペーパークロマトのようなラフな方法がよいですよー。
(瀬戸 裕紀)
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