「This is 嵐」 レビュー

はじめに

2012年12月11日。嵐の活動休止前ラストアルバム、かつ、最新作である「This is 嵐」が発売から1ヶ月の時を経てついにサブスクを解禁した。嵐の音楽を1度でも愛したことのある人も、嵐の曲はいくつかサビだけはわかる人も、J-popに苦手意識がある人も、はたまたJ-popを愛する人にも、全ての人に"イマ"聴いて欲しいアルバムである。

This is 嵐というタイトルが公開された時「なんてカッコいい人たちなんだ」と同時に「なんて難しいテーマなんだ」と感じた。活動休止という1つの区切りが目前に迫る今、自分たちの音楽を彼らはどう客観視し、どう表現するのだろうか。このアルバムにはその答えと、彼らが伝えたいの「嵐の今」が詰まっている。

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1. SHOW TIME

ギターのカッティングが心地よい、軽快で華やかな音楽でアルバムは幕を開ける。5人からSHOW TIMEへと誘われる。個人的にはYour Eyes(2012)カップリングの花火などを思い出したが、嵐の楽曲に触れたことのある人は「どこか懐かしい嵐のサウンド」を感じられるのではないかと思う。

2. Turning Up

嵐の「第2の音楽人生」の幕開けとも言えるほど大きな衝撃を与えたこの楽曲。SNSへの規制が厳しいことで有名だった"あの"ジャニーズ事務所に所属する嵐が、各種SNSやサブスクを解禁し、史上初の配信シングルとして船出をしたTurning Up。東京とLAで撮影されたMVも歌詞通り「Turning up with the J-pop」、嵐というグループのみならずJ-popを世界に広めようという意思の感じられるものとなっている。海外プロデューサーによる華やかなサウンドは1曲目で幕を開けたパーティーを更に盛り上げてくれる。 

3. I Can’t Wait For Christmas

休止前最後のアルバムでクリスマスソングを出す嵐はあまりにも「らしく」て思わず微笑んでしまった。彼らが何度も言うようにこれは「休止前ラスト」ではなく「最新作」なのだ。嵐が出したい曲を出してこそ、This is 嵐。たとえTVで5人揃った姿を見れなくなっても、クリスマスの足音が近づく頃、きっと街で嵐に会うことができるだろう。

4. Whenever You Call

Turning Upで船出をした嵐が得た宝物のような楽曲だろう。プロデュースをしたのは誰もが知るあのブルーノ・マーズ。彼が嵐に向き合い、嵐とファンに贈った曲は愛に溢れている。まずは曲を楽しみ、その後歌詞を読んで、その想いに是非触れて欲しい。

5. いつか秒針のあう頃

プロデュースはOne Directionなど数多くの有名アーティストに楽曲を提供しているラミ・ヤコブ。まさか彼が次の楽曲IN THE SUMMERを書いたとは思えないほど、ギャップのある2曲になっている。嵐がRIGHT BACK TO YOU(2004)などをイメージした楽曲を依頼したそうだが、嵐を追いかけている人にとっては耳馴染みのよい懐かしさを、嵐のシングルをふんわりと認識しているライト層にとっては新鮮さを感じられる1曲と言えるだろう。華やかに幕を開けたアルバムが4、5曲目で徐々に深い夜へと移り変わる。

6. IN THE SUMMER

ここでガラッと雰囲気が変わる。さっきまでクリスマスを歌っていたのに今度は夏だ。なんて滅茶苦茶で、なんて嵐らしいんだろうか。一見分断されたような印象を受けるかもしれないが5曲目と6曲目はどちらもラミ・ヤコブがプロデュースをしている。曲のタイトルからポップでアップテンポな楽曲をイメージしていたので、始めて聴いたときの衝撃はかなりのものだった。南の島でハンモックに揺られているような心地よいサウンドで、洗練された大人の夏を感じられる。

7. カイト

海外の有名プロデューサー揃いだったアルバムに、ここで米津玄師が作詞作曲をしたカイト。壮大なサウンドでありながらどこか懐かしさを覚えるこの楽曲は、元々東京五輪に向けて製作されたものではあったが、今の時代を生きる全ての人に向けた応援歌となったのではないだろうか。2020年に起きた様々な悲しみが浄化されるような、どこまでも暖かい楽曲だ。

8. BRAVE

こちらは大盛況のうちに幕を下ろしたラグビーW杯のテーマソング。世界的スポーツの祭典のテーマソングとして作られた2曲が入るアルバム、なんて豪華なんだろう。ラグビーの力強さを表すサウンドに三味線や箏といった和楽器の音色が調和し、まさに日本代表の応援歌にふさわしい楽曲となっている。ラグビー経験者でラグビーを愛する彼だからこそ書けただろう櫻井翔さんによるラップも楽曲を多いに盛り上げている。

9. Party Starters

ここにきて再びパーティーが始まる。ほぼ全編英語のハイテンションなチューンに気分も上がる。深く考えずとりあえずノリにノッて楽しめる、コンサート向けの楽曲だろう。早く密になってこの曲のC&Rをできる日が来て欲しい。是非POPなMVとリリックビデオも合わせて楽しんでいただきたい。

10. Do you...?

This is 嵐のリードソングであるこの楽曲がパーティーを更に盛り上げる。カッコいいんだけど、カッコつけすぎない、肩の力が抜けたサウンドやダンスがまさに嵐らしい1曲。MVには過去のMVで使われた小物が数えきれないほど隠されており、懐かしさや感動を覚える。櫻井翔さんによるラップ詞からはファンやメンバーへの強い想いが感じられ、今の嵐が伝えたいものが詰まった楽曲となっている。

11. The Music Never Ends

華やかなパーティーでは終わらせないのが嵐だ。日本の音楽シーンを10年以上に渡り牽引し続けた嵐がこのタイミングで「音楽は終わらない」と伝える意味の大きさは計り知れない。活動休止を発表して以来、サブスク、海外への進出、シングル、アルバムの製作など音楽面でも精力的に活動し続けた嵐。ファンだけでなく、嵐自身も「音楽はいつまでも消えない」と言い聞かせて歩み続けた2年間だったのかもしれない。音楽が鳴り止まない限り、私たちはこれからも嵐を何度も想いだし、口ずさみ、愛し続けることができる。

2021年以降どうやって過ごせばいいのか正直わからないほど私にとって嵐という存在は大きい。でもこのアルバムを始め嵐が届けてくれた数えきれないほど沢山の素晴らしい楽曲を抱き締めて、前を向いていきたい。


またいつか嵐がパーティーを始める日まで。

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