嵐が描く“トップ”になりたいという夢

私は嵐が好きだ。彼らはいつもファンに終わらない夢を見させてくれる。

小さなアリーナから始まったコンサートはドームになり、多くのヒット曲を生み、気が付けば紅白のトリを務めるほどの存在になった。深夜に乳首が空いたTシャツを着ていた彼らも大好きだが、今の「国民的」と呼ばれるに相応しい老若男女に愛される5人も大好きだ。

そして、そんな大好きな嵐は2020年いっぱいでの活動休止を発表した。

もちろん、悲しくないといえば嘘になる。

だが、この発表以降の言動を通じて、わたしは彼らが見ている「夢」が我々ファンの想像を越えたところにあると気付くことが出来たのだった。

今年の24時間テレビで、相葉ちゃんは15年前に自身が書いた手紙を引用して「まだ叶ってない夢。この五人で絶対にトップになろうね」と述べた。

戸惑った。

15年前にこの言葉が読まれた瞬間、「トップになる」という大きな目標は5人の共通の認識となった。そして彼らはいま日本人なら誰もが知る、国民的と呼ぶに相応しい唯一無二の存在になった。ファンは誰しもが「夢を叶えた」と思っていた。

なのに、誰よりも数字に無頓着そうな、争いを好まなそうな相葉雅紀がまだ上を目指していると言うのだ。

何が足りないのか、これ以上何が欲しいのか。わたしにはわからなかった。

だが、今ならわかる。

...11月3日、会見の最後に相葉ちゃんは「僕らと皆で世界中に嵐を巻き起こしましょう」と無邪気に、しかし高らかに宣言した。その言葉通り、5つのSNSが解禁され、アジア公演も発表された。YouTubeには毎日のように海外からのコメントが並び、みな一様に嵐と時間を共有できることを喜んだ。

そして発表された新曲。Turning up with the J-popというフレーズが曲中何度か出てくる。

脳が雷でうたれたような衝撃。点と点が繋がった瞬間だった。

彼らがいう「トップ」とは日本ではなく世界でのトップであること。そして「ジャニーズ」「アイドル」の嵐としてではなく「J-pop」の代表として世界に嵐を巻き起こそうとしていること。

思えば彼らはデビュー当初から節目節目で同じことを述べていた。「世界中に嵐を巻き起こしたい」と。

でも、誰がこの台詞を文字通り目標として捉えただろうか。誰もが彼らの飛躍を予想しなかった時代からきっと、5人はずっと、研いだ爪を隠して、世界を席巻する日を夢見ていたのだろう。

さあ、もはやこの一大ムーブメントは日本国内に留まるものではなくなっている。各種SNSやサブスクリプションの解禁はメディアで黒船の襲来に例えられるほどの影響を及ぼし、遠く離れたアメリカやブラジルのiTunesチャートでも新曲Turning upが1位を記録した。

世界の航海地図は塗り替えられるのだろうか。揺れる船に響く誓いを、これからも共に見つめていきたい。

#いまから推しのアーティスト語らせて

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