見出し画像

救いの手か悪魔の薬か、それにしたって最初に身体に入れる時までに私達はこれでもかと考えて悩んで調べるよ。

(note読者様へ向けて)此度の更新は、7月12・13日付の拙ブログ( https://julia88h.hatenablog.com/ )記事からの転載となります。予めご了承ください。noteは書く機会を逸し続けたので読む専になるつもりでしたが、流石に此度の出来事は看過できず久々に筆を執りました。ご容赦ください。
 
----------

帰宅後に飛び込んで来た衝撃のニュース。通知を見て「えぇっ!!」と思わず声が溢れました。
タレント・RYUCHELL氏の訃報。現場の状況から自殺とみられるとのこと。各陣営から色々なコメントが述べられておりますね。ここで大事なのは、生前の氏は自身や家族の生活スタイルやアイデンティティに関してを「はっきりわかりやすい用語」で述べてこなかったということだと私は思っています。ちょっとふんわりしたというか、奥歯に物が挟まっているというか。氏の動向をずっと追えてはいないので、認識にズレがあったらすみません。ただ、氏が人生の節目節目でしてきた重要な発信においてそうした印象を度々抱いてはきました。
つまりは、氏のパーソナルな事柄について「共通言語で明言されていること」って実は少ないのではないでしょうか。となれば、離婚後の家族関係にしても氏のジェンダーアイデンティティにしてもホルモン投与の有無にしても、わからないことを憶測で語ることにはなるまいか。"状況証拠"で察することはあるやもですが、明言されていない以上は真実たり得ない。遺族コメントや本人の遺した言葉等、何かしら出て来ない限りは想像で物を言いすぎるなよ、とは思いますね。まぁ、離婚後の振る舞いを傍から見ていて、トランス界隈で"悪目立ち"する当事者と重なり無責任だという気持ちが私も湧きはしましたが……。
ともあれ、新時代の家族像や理想的な父親・夫像への期待を私達が氏に強く強く強く向けていたことは一つの事実ではありましょう。そんな中で、メディアに露出する人間としての売り出し方と自分自身の在り方とのズレがあったとしても、不思議ではありません。いずれにせよ、SOGIにおいてマジョリティではない(しかも歳下の)方がこうして命を断ってしまわれたことには、謹んで哀悼の意を示します。
 
そして、「ほらやっぱり女性ホルモンは怖い薬だ悪なんだ!」との主張をしたいのか、RYUCHELL氏の死去に伴い女性ホルモン投与の悪影響を述べる声が増えています。自殺を誘発するからと。でも果たしてそうでしょうか。
 
当事者であるいち個人の体験談にはなってしまいますが、言わせていただきます。まず、女性ホルモンそのものが問題なわけは無いでしょう。より正確を期すなら、体内のホルモンバランスの急激な変化や長期間の欠乏が心身に悪影響なのであって。肝臓や血液凝固系への負荷は高いのでそこは当然注意するとして、医師の下で量や投与間隔を適正に保てばうまく付き合っていけるものです。
また、何よりホルモン治療の効果の顕れは個人差が非常に大きい。私で言えば残念なことに望んでいた変化はほぼ皆無なわけですが。だから、誰もが女性ホルモン→即・鬱状態!とは限らない。それよりも、メンタルへの影響は個々人の生活をトータルで見て考えねばいけない事柄。人は投薬のみで生きるに非ず。
 
でもそもそもこの話、トランスに限らず「女性ホルモンの補充療法を受けている人」という括りで見ると、卵巣摘出や更年期障害等で投与を受けている人達も踏むのでは?或いは「女性ホルモンが優位に分泌されている人」まで踏む対象が拡がりませんか?そこで、いや『生物学的』女性は違うんだ身体男性の場合だけだと言うのなら、「女性ホルモンは前立腺疾患の治療にも使われていますが?」と返しましょう。ホルモンだけを悪者にしようとすると、多くの人をめちゃくちゃに踏み荒らすことになりはしませんかね。
 
適正な使い方をしなければ悪影響はあるでしょうよ。だからホルモンなど打って「薬漬け」になるべきではなく、「自然」のままで多様性として包摂されることを目指すんだ!とする考え方も出てくるでしょう。「男女」として許容される範囲さえ狭いのですから、私としては「○性の多様性」という思想自体を否定したくはありません。しかし、女性ホルモンのせいで彼は自殺にまで至ったんだ心を壊すんだやっぱり怖い!と言うことで飛び火する先があまりに多すぎる。ホルモン治療に対する認識だって雑も雑。氏が女性ホルモン投与を受けていたかどうか、明言も無いのに。
所詮n=1と言われればそれまでですが、ホルモン補充療法を受けるトランスが此度のセンセーショナルな主張に首を縦に振るとは私には考え難いのです。
 
……もしかしたら、私は割と怒っているのかもしれない。雑な認識と憶測で経験者を置き去りにしてホルモン治療のあれこれを語るな!と。性的マイノリティを巡る別の局面では同調を示すことの多い陣営であっても、流石に今回は同意も看過もできない……そんな思いです。


もしよろしければ、ご無理の無い範囲でお願い致しますm(__)m