よく見えるメガネ
とある国の早朝。
詐欺を働く男が、
研究所に忍び込み1つの箱を盗んで逃げた。
都会のビルとビルの間の小さな路地。
男はまじまじと箱を眺めた。
"Good looking glasses"
「ほぉ、よく見えるメガネか。」
箱の中に小さな説明書が入っている。
「この眼鏡をかけると、人の興味が見えます。」
ツラツラと書かれた説明書には、
・赤い光は強い興味を示している
・青い光は弱い興味を示している
・何も浮かばなければ全く興味がない
と書かれていた。
詐欺師の彼にとって、願ってもないメガネだ。
男はある程度口が上手く、それなりの話術はあった。
「なるほど…赤い光の客に猛プッシュをかければ、俺の詐欺商売も繁盛するってわけだ。」
男はメガネの仕組みを理解し、
今後の詐欺商売の成功を確信した。
「ひゃっほー、これで大金持ちだ!」
テンションが上がり、路地から大通りに飛び出た。
すると出会い頭にサラリーマンとぶつかり、
かけていたメガネを落とした。
「あぁ、メガネ、メガネ…」
男はメガネをすぐさま拾い、空に透かしてメガネの無事を確認した。
「おぅ、悪いなぁ」
男は謝罪の言葉を吐き捨てると、
その場を足早に去った。
「昨日はボスに、いい加減売り上げを持って帰ってこいって怒られちゃったからなぁ。今日こそはボスに褒めてもらうぞ!」
都会から少し離れた住宅街。
男はターゲットの家が書かれた地図と、
商品を持って1軒目の家のインターホンを押した。
「すいません。NY商事のダニエルと申します。」
男はいつものように玄関先で販売を始めた。
「ん、青く光っているなぁ。」
男は客の頭の上に青い光を確認した。
「で、これを買うと何がお得なの?」
食いつきつつも、食い付き切らない主婦が質問を投げる。
「ここで引いたらダメだ!もっと押さなきゃ!」
男はいつもより熱を入れて商品を説明した。
「今度は赤く光っているぞ。」
男はもう一押し、商品のプッシュを強めた。
「ありがとうございます!」
数日ぶりに商品を売り上げた。
「なんだよこのメガネ!」
男は嬉しさのあまりメガネを再度空へ透かした。
「次もこの調子でいくぞ!」
2軒目は何の光もないところから、青、赤と変わり、またしても売り上げを出した。
「やっぱりこのメガネがあれば、売れるか売れないかがわかる!光によって言葉を変えたり、プッシュのタイミングを図ることができる!」
その後も男は訪問を続け、
浮かぶ光を頼りに言葉を変え、タイミングを図り、
遂に全ての訪問先で商品を売り上げた。
「これでボスも褒めてくれるだろう!
このメガネがあればなんだって売れる気がするぞ!」
男は満足に胸を躍らし、帰路についた。
「ボスがめちゃくちゃ褒めてくれた!よし、明日も頑張るぞ。」
メガネを枕元へそっと置き、
サラリーマンは眠りについた。
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