ソシャゲに復帰して気がついたこと
ああようやく、回復してきたんだなと思った。
それと同時に、自分がどれだけ深く傷ついて、どれだけ深刻に損なわれていたのかも、ようやく自覚することができた。
わたしの長い学生時代は、「あんさんぶるスターズ!」と共にあった。大学二年生でこのコンテンツに出会ったときから、わたしの生活の中心はあんスタになった。アルバイト代を貯めて、推しイベが来たら課金して走り、姉と割り勘でCDを買い集め、舞台もライブもほとんど毎回観に行った。人生で初めて、二次創作小説をpixivに載せたのも、あんスタだった。姉と合同で同人誌まで出そうと計画していた。
でも、大学を卒業する年のはじめ、ちょうどコロナが流行り始めたころ、わたしは少しずつあんスタから遠のいていった。就活や卒論で生活が忙しくなったからとか、BTSにハマったからとか、いろいろと理由はあったかもしれないけれど、毎日欠かさずしていたログインが途切れ始め、イベントを走る余裕がなくなった。
あんスタを完全にプレイしなくなったのは、就職したのがきっかけだった。フルタイム勤務では昼休みと終業後しかスマホを触れないので、あんスタ以外にもいくつかプレイしていたのを含め、ソシャゲには早々に手が伸びなくなった。休みの日は通院か家事でほとんど潰れてしまい、疲れ果てていたわたしはせいぜいYouTubeでBTSのダンス練習動画リストを延々再生するくらいしか息抜きが思いつかなかった。本も読めない。映画も観れない。就職前は月1で2.5次元舞台を観に行っていたけれど、休みが不定期なのでそれもできなくなった。そもそも休みが取れたとして、劇場まで行く元気があったかもわからない。
理由はいろいろあったけれど、わたしは新卒で入社した会社を3ヶ月で退職した。しかし社宅を出て実家に戻っても、新しくアルバイトを始める余裕ができても、あんスタに復帰することはできなかった。姉に連れられてあんスタのライブに行ったり、舞台の配信を家で観たりはしたけれど、自分から楽曲を聴いたりゲームをプレイしたりはできなかった。姉や友達に勧められて「魔法使いの約束」をインストールしても、舞台は楽しんで観れたけれど、ゲームのほうは無料開放されていたメインストーリーを読んだだけであまり触らなくなってしまった。
当時はなんとなく、ソシャゲにハマる時期は過ぎ去ったんだなと思っていた。大学時代と同じように自由になる時間がたくさんあっても(それどころか大学時代より暇はあったかもしれない)、もうソシャゲにハマるような若さはないのだと。
でもたぶん、わたしがあれほど夢中になっていたあんスタを捨て去ってしまえたのは、「そういう時期じゃなくなった」からではなく、趣味に没頭できるような心の余裕が徹底的になくなってしまっていたからなんだと、最近になってようやく分かった。
わたしにとって就職は、すくなくともあのような形での就職は、人生で最大の間違いだった。もしかしたら初めての挫折だったかもしれない。そしてその経験は、完膚なきまでにわたしの精神を叩き潰して、擦切らせて、ぼろぼろにしてしまったらしい。でもわたしはそのことに長いこと気がつけなかった。
あんスタから離れてしまってからも、わたしは未練がましくあんスタの公式Twitterアカウントをフォローしていた。そしてつい先日、『スカウト!バツ×バッテン』の予告を見たとき、☆5の仁兎なずなのカードを、どうしても欲しいと思った。手に入れなくてはならないと強く感じた。そして約2年ぶりに、あんスタにログインした。かつて貯めていたそれなりの数のダイヤが尽きるまでスカウトを引いたとき、なんとなくそのままアプリを閉じる気になれなくて、リズムゲームまでプレイした。とても楽しかった。それから今まで、ほとんど毎日あんスタをプレイしている。まだストーリーを読んだりはしていないけれど、ちゃんと入手したカードも育成して、イベントも☆4が取れるところまではやった。やり方を色々忘れてるなと思ったり、離れていた間に変わった部分に戸惑ったりしつつも、ちゃんと楽しんでプレイできている。YouTubeでMVを観たり、リクエストアワーを聴いたりもした。なんだかわたし、あんスタに復帰できてるぞという実感がじわじわと湧いてきている。
どうして自分があんスタというコンテンツから離れてしまったのか、深くは考えないまま、ここまで来てしまっていた。「それまで好きだったことに興味がもてなくなる」というのは鬱の一番典型的な症状なのに、日々の小さな躁鬱の波に惑わされて、大きな波を見逃していた気がする。そういえば、この2年間、大きな躁エピソードがない。そうか、そういうことだったんだ。
結局のところ、時間が解決してくれるのを待つしかなかったのかもしれない。でもわたしは、自分が傷ついていたんだということに気がつけて、すこし安心している。気がつけるようになるというのも、回復の兆しのひとつであると思うから。
時間はかかるかもしれないけれど、いつかまたあんスタで二次創作小説を書いて、今度こそ同人イベントに参加したいというのが、わたしのいまの野望だ。
問題は色々あるけれど、生きていくしかないよね。
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