頭の中にある穴について
頭の中にぽっかりと大きな穴が開いたように、言葉が出てこなくなることがある。
そのイメージは、「ハウルの動く城」でソフィが見た夢の中でハウルが飛び立っていく穴に似ている。それは茫漠としていて、覗き込んでしまえばどこまでも落ちていきそうに見える。
わたしは何を言いたかったんだっけ。
わたしは何を考えているんだっけ。
答えはただぽっかりと暗く、何も見えない穴があるだけだ。
こんなにも何も考えられない日々が続くと、いつか脳みその皺が全部つるつるになって、人語を介さないただ呼吸するだけの存在になってしまうんじゃないかと怖くなる。べつに呼吸するだけでは存在価値がないとは思わないが、わたしはものを書いている自分のことしか自分だと思えない。
何度だって言う。わたしはこれまでものを書くことで思考して生きてきて、これからもものを書くことだけを生きがいにしていたいのだ。
だから言葉が思い浮かばないことは、わたしを深い恐怖へと陥れる。いくらでも、湯水のように言葉が湧き上がってきていた日々は、どこへ消えてしまったのだ?
わたしはどこに向かっているのだろう。
目の前の穴に向かって手を伸ばしても、言葉は指の間をすり抜けていくばかりだ。もうどこにも行けない。何者にもなれない。
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