静寂の測り方
サハラ砂漠での日々、私は時計は町に残して過ごしました。
時を告げるものは、朝夕の空の移ろいと、トゥアレグの人々のスマートフォンから響くズフル、アスル、イシャーの祈りの呼びかけ。つまり一日は自然と五つの区切りを持ちます。日の出とともに始まり、正午、午後半ば、日没、そして夜へと移りゆく時の流れに身を委ねていました。それだけで十分でした。
スマートフォンの電源を入れるのは、朝のほんの数分間。OURA Ring(睡眠とアクティビティを記録する指輪)のデータを同期させる時だけでした。
年に数日、メールもメッセージも、ソーシャルネットワークからも完全に離れる時間を持つことが、私は大好きです。インターネットのない生活を完全に送ることはできそうにありませんが・・・
帰国後、ソーシャルネットワークに触れる度に、少しずつ違和感を覚えるようになりました。見知らぬ人々のネガティブな発信に触れることが、心に重くのしかかります。特にThreadsではその傾向が顕著でした。立ち上げ当初の温かな雰囲気が、いつしか失われていったように感じます。
親しい方々の投稿は読みたい気持ちもありましたが、結局Threadsからは離れることにしました。Xとの距離も広がり、Facebookへのアクセスも少し減りました。
今の私には、このくらいの距離感が心地よく感じられます。
しかし、タッシリ・ナジェールのトゥアレグの男たちは、電話やインターネットと無縁の暮らしをしているのかと言えば、全然そんなことはありません。みんな携帯電話やスマートフォンを持っています。若者はFacebookやWhatsAppのアカウントも持っています。砂漠の中でスポット的に電波が通じるところが何カ所あり、彼らはそれをとてもよく知っていました。
世界はどんどん深く繋がってきています。良くも悪くも。