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【カフェ開業】♯5 十条に立つ ~いつかどこカフェ~

商店街巡りで十条商店街に行きました。
以前テレビの街歩き番組で、とても賑やかなイメージがあったので、一度訪れてみたかった場所です。
JR埼京線 十条駅の目の前の土地は、再開発が行われていました。
39階建てのタワマンが建つそうです。
今後4~5年で駅前も大きく変わるのでしょう。

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調べてみると、十条の商店街は4つの商店街から成り立っているとのことでした。
「十条銀座商店街」
「十条仲通り商店街」
「十条富士見銀座商店街」
「十条中央商店街」
とそれぞれ独立した商店街らしいのですが、地図で見ると、十文字に配置されていて、かなり広範囲の商店街地域になっています。

その中で中心的なのは、駅前からすぐにアクセスできて、アーケードのある十条銀座商店街です。
ここは、東急線沿線の横綱商店街・武蔵小山商店街に匹敵する賑やかさでした。
チェーン店もありますが、どちらかというと地元のお店の活気があり、歩いているだけでわくわくしてきました。
お惣菜のお店、魚屋さん、八百屋さんに多くの買い物客が集まっていました。
本当に人の動きが盛んなのです。
平日だのに、です。

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僕はゆっくりと歩きながら、あっちを見たりこっちを見たり、目と首をフル回転させて興味津々でした。
ここはいい。この商店街は大好きだなぁ。
どこか下町情緒のある風情も感じられ、まさに僕が考えている店を出したい街にドンピシャでした。

ここでお店を出したい……。

歩いていると、「テナント募集」の看板もいくつか見つけました。
すぐに、電話をかけたり、ネットで調べてみると、、、た、たかい。。
にぎやかで人通りが多いので、うすうす嫌な予感がしていたのですが、やはり商店街の空き物件は家賃が高かったのです。
いや、普通に考えれば、そんなに高くないのかもしれませんが、ワンオペでやるカフェをする上では……う~ん、ちょっとなぁ、と悩んでしまいました。

でも今まで見てきた中では、一番良かった商店街なので、なんとかならんかとずっと思っていました。
初めて訪れたのが、2020年9月4日。
その後も3度ほど、十条には足を運びました。
足を運んで、いいなぁ、高いなぁ……を繰り返していました。

そして年が変わり、東京に4度目の緊急事態宣言が発出されていた、
2021年の8月、他の地域も並行して物件を探しながらも、十条の物件をネットで探していて、ひとつ内見したいところが出てきました。
そこは2階建ての一軒家の物件でした。
実は、1階が店舗、2階が住居という物件なのですが、これこそ僕が探していたものでした。
通勤時間は短ければ短いほどいい。なんならなければもっといい。
お店に住めればいいなぁ、と色々物件を見ているうちに考えていました。

早速、業者さんと一緒に内見しました。
1階はとてもきれいになっていました。
お風呂もついていました。
でも、2階がとても残念でした。
古い建物なのですが、床がまっすぐになっておらず、かなりでこぼこでした。
最初は気のせいかと思ったのですが、まっすぐ立っているつもりが、なんだかふらつくのです。
う~ん……こりゃちょっと健康を害するかもしれないなぁ、とその物件は諦めました。
比較的家賃が安めで手が届きそうなだけに、とても残念でした。

だがしかし、実はこのとき、幸運が目に飛び込んできました。
その物件の並びに、シャッターに「テナント募集」の看板がついている別の一軒家を見つけたのです。
内見が終わったその足で、その管轄の近くの不動産屋さんに飛び込みました。

不動産屋の社長をせかして、すぐに内見をしに行きました。
「あんまり飲食店をやるような物件じゃないし、2階は居住スペースなんだよ」と社長は言いました。
居住スペース! 願ったりかなったりですともっ!
僕は心のなかで興奮しながら、慎重に内見をしました。
1階はスケルトン! これもいい。
最初から居抜きは考えていなかったので、スケルトンでいいんですよっ。
1階の奥にキッチンとトイレ、そして簡易シャワーがありました。
え? シャ、シャワー? お風呂じゃないんだ?
でも以前から簡易シャワーの設置にも思いを巡らせていた(そんな人いるだろうか……)僕は、最初から付いていたシャワーに歓喜しました。
湯船はないけど、別にいいかなぁ(そして後で知ることですが、歩いて3分のところに銭湯もありました)。
すすわたりが出そうな急な階段を登って2階に上がると、10畳の部屋があり、ベランダもありました。
どうせ一人暮らしなので、部屋は十分な広さでした。
そしてなにより、本当に家賃が安かったのです。
え、これでいいの? 税別でしょ? なにか他にあるんでしょ?  出るの?   なにか出るの?
と、何度も社長に聞きましたが、その金額ですよ、と言われました。

ここで生活することを頭の中で空想してみました。
毎日起きてから、朝食を食べ、店内の掃除をして、シャッターを開け、お客さんにコーヒーを淹れて、シャッターを下ろし、次の日の仕込みをして、シャワーを浴びて、2階に上がる。

それができるのか、リアリティがあるのか、自問自答しました。
僕は不動産屋の社長に1日返事を待ってほしいと伝えました。
家に帰ってから、もらった図面に椅子やテーブル、カウンターを配置したものを6パターン作りました。
実は希望より、1階の客席部分はちょっと狭かったのです。
客席数少なくなるなぁ、と思いました。
でも、僕は決めました。
場所的には本当に理想的な場所だし、これまで見てきたなかで、こんなに自分にいい物件がなかったのは事実なのです。

翌日、僕は社長に電話で伝えました。
「この街がとても気に入ったので、ここで商売をさせてください。
よろしくお願いします」
このとき、ジブリ作品に出てくるキキや千尋の気持ちが、とてもよくわかりました。

その後、とても親切な社長のはからいで滞りなく賃貸契約が行われ、僕は晴れて「十条仲通り商店街」の一軒家で商売をする権利を得ました。

物件探しを始めてから、11ヶ月が経っていました。

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