Juicy Talk vol.1 フルレポート
大変遅くなりました、佐久間裕美子さんをお招きした、"Juicy Talk vol.1" フルレポートです。ぜひ読んでみてください。
Vol.1 概要
● 開催日時:2019年6月1日(土) 18:30〜20:00
● 開催場所:bar moonshine 東京都千代田区内神田3-17-4 第2会田ビル2F
● トークゲスト:佐久間裕美子さん(NY在住ライター)
-はじめに-
ノリが「JUICY TALK」を開催したいと思うに至った理由。
「多くの方に健康になってもらいたい」という想いで〈サンシャインジュース〉を始め、「健康とは何か」を考える機会が増えました。SNSやブログなどで考えを発信する場はあるけれど、やはりリアルな場で自分がリスペクトするゲストの方や皆さんとディスカッションして、それをシェアしていきたいと思い、こういう場を設けました。
第1回ゲストは、NY在住ライター 佐久間裕美子さん
佐久間さんとは〈サンシャインジュース〉を始める5〜6年前に共通の知人を介して知り合って以来、ずっとサポートしてもらっています。著書の『ヒップな生活革命』や『My Little New York Times』、noteで発信している内容などどれも、視点、選ぶトピック、アプローチの仕方が鋭く、本質的で共感しています。ぜひ今回、「健康」についての考えもお聞きしたいと思い、ゲストをお願いしました。
-トークセッションの内容は以下をご覧ください!-
断食をきっかけに「健康」を意識した。
佐久間さん:ノリくんは、そもそもどうして〈サンシャインジュース〉を始めたの?
コウ ノリ:シンプルに、コールドプレスのジュースが最高だったんです(笑)。それまで知っていたジュースと違って、飲んだ時、感覚的に、細胞で感じられた。それをもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったからです。もともと「健康」についても意識はしていましたが、僕にとっては飲んだ感覚そのものが、日常生活にすごくいい調子をもたらしてくれていて、それが「健康」にもつながっているのかなと思っています。佐久間さんにとっての「健康」とは、どういうものですか?
佐久間さん:私はもともと体が丈夫な方で、なおかつ体に入れるものに対して比較的意識が高い親に育てられました。その反動みたいなものもあって、実は最初にアメリカに行った時、ジャンクなものをやたらと食べていました(笑)。砂糖がいっぱい入っているシリアルや、ファストフードも大好きでしたね。「健康」を意識するようになったのは、30歳を過ぎてからですね。
コウ ノリ:「健康」のために、具体的にしたことはありますか?
佐久間さん:便秘症で、自分の家でないとダメなタイプで、出張で2週間とかになると、もう地獄だったんです。30代だった当時の2008年頃、私のまわりにはヒッピーっぽい友人が多くて、その一人がタバコをやめると便秘になるという理由で断食をしていて、それに影響されて山に籠って9日間の断食をしました(笑)。そしたら何も食べていないのに9日間、感動的なくらい出るという経験をして。最初に「健康」というものに向き合ったのはこの時かなと思っています。回復食に搾ったオレンジジュースが、これまた美味しくて感動して!
コウ ノリ:そう!! それもいいんですよね。
佐久間さん:体だけでなく、自分の迷いも一緒に捨て去れるような、心まで軽くなる感覚は初めてでした。断食は体質改善にもつながったようで、便秘症も治ったので、その後も定期的に生活に断食を取り入れていました。
コウ ノリ:〈サンシャインジュース〉でも、ジュースを使った断食で「クレンズ」というのを提案しています。ジュースを飲みながらだから、初めての断食でもハードルが低くて、きちんとベネフィットも得られるというものなんです。僕も体以外の精神的なことや感覚的な面での利点も、しっかり伝えていきたいと思っています。例えば、最初は青くてエグいと感じたジュースも、クレンズの後だと美味しく感じられるといった変化も知ってもらいたいですね。
佐久間さん:研ぎ澄まされますね。初めての断食の時、5日目くらいに雪が降ってきてショッピングモールにスノーブーツを買いに行ったんですよ。そしたら食べていないから嗅覚が鋭くなっていて、すごく遠くで食べている人の中華の匂いが分かった(笑)。人間ってやはり動物だなと思いました。普通の現代生活では気づけない感覚に目覚めるとか、体の調子で精神状態が変わるとか、そういう学びもありました。私の場合は原稿の締め切りなどに追われることが多いのですが、体力やメンタル面が弱っていると仕事にも影響が出てしまう。常に、「いかに気持ちよくいるか」ということを、真剣に意識するようにしています。
心と体、両方のバランスを整えること。
佐久間さん:私がアメリカに住み始めたばかりの頃は、「ベジタリアン」と言うとものすごくストイックでつまらないものに見えました。ベジタリアンのお店に化粧して行くことすら憚れるような、修行みたいな雰囲気がありました。でも、最近は、気軽な店からフルコースの店まで、幅が広がって楽しくなりましたね。
コウ ノリ:僕もアメリカや台湾でシーンは見てきていますが、ここ数年で絶対的に変わってきていますね。要因は何だと思いますか?
佐久間さん:アメリカ人の間で成人病、癌、糖尿病などが増えたこと、食のリコールが立て続けにおきて、それまで信頼されていた「食の安全」が不確かになってきたというのがあると思います。私は皆が肉を食べないことがいいとはもちろん思いませんが、全体のバランスの中で、西洋医学的ではない考えがオルタナティブとして出てきている。私の周りのベジタリアンの人も、疾患があって病院に行ったけど解決できなくて、食事改善を試みて人生観が変わった人が多いんです。
コウ ノリ:僕はオルタナティブな考えを信じている側なんですが、日本ではまだまだマイノリティというか、やや批判的だったりもしますよね。アメリカでも昔は西洋医学のアプローチがとても強かったなかで、最近はそうではない方向にも目が向けられてきています。
佐久間さん:そうですね。アメリカに関しては、医療費がすごく上がったというのも大きい。今、破産の4分の1が、医療費破産と言われているくらいです。予防医学をきちんとやらないと、後々大変になる。そういう思考が出てきているのは、大きな要因だと思います。もうひとつ注目すべきは、ストレス問題です。ストレスとどう付き合うかという「ウェルネス」に対する意識もとても高まっています。企業側も、働く人が「幸福」であることが、生産性を上げ会社に成長をもたらすという考えに変わり、オフィスに昼寝部屋を作るような流れもできました。
コウ ノリ:佐久間さんは忙しい仕事のなかで、どのようにストレスケアをしていますか?
佐久間さん: ひとつの方法として、NYから2時間くらいのところに借りた山の家に行きます。あと、出張などにヨガマットを持って行って、時間がなくても10分くらいはやるようにしたり。瞑想もします。最初は苦手だったんですが、自分はあの15分に救われているのかなと思うことも多いです。
コウ ノリ:パッとやってすぐ効果が出ることではないと思いますが、その積み重ねが自分に戻ってくることはあるでしょうね。ガーデニングがどれだけ健康に寄与するかについて、佐久間さんが書かれた記事もとても興味深かったです。
佐久間さん:あれは、家の庭を放置していたら雑草で大変なことになったのがきっかけでした。ある時に意を決して手をつけたら、その晩すごくよく眠れたということがあって。その後、ディーパック・チョプラさんというオルタナティブ医療界の著名人から、「この6つをしていたら長く生きられる」という話を聞く機会がありました。「1日7〜8時間ぐっすり眠る」「ストレスを持たない」など現実的に難しいことが多いのですが、それ以外にもすぐに実践できることがあって、それが「自然と触れあう」ということでした。山まで行かなくても、木に触れる、ビーチで靴を脱ぐなど、自然との些細な触れ合いによって得られるリターンというのは、西洋医学的なデータには表れなくとも、メンタルに強く作用してくる。
コウ ノリ:共感します。僕も農家さんに行って野菜と触れあうことが、心のバランスを取る大事な時間だと感じています。自然環境に身を置いたり、生産現場でフレッシュな野菜を食べたり、サイエンスではない感覚的なことが自分の“いい調子”につながっていると感じます。
真面目にマリファナの話をしよう。
コウ ノリ:新しい書籍(『真面目にマリファナの話をしよう』)では、なぜテーマにマリファナを選んだのですか?
佐久間さん:私がアメリカに行った1996年に、カリフォルニアで医療マリファナが合法化されました。それ以前からも、マリファナという物質をめぐる状況は変化していましたが、2012年、コロラドが完全合法化を決めて、産業として急激に注目され始めました。それで、雑誌「WIRED JAPAN」でディスペンサリーを訪れたり、マリファナ業界の人を取材して記事を作りました。それを見た出版社から、国全体の動きを本にまとめないかと言われたのが4年ほど前。日本では良くないとされているものを取り上げるわけですから、慎重に調べるうちにかなり時間が経ってしまいました。そもそもアメリカでは、カルチャーや宗教問題、銃規制など、国を分けた方がいいと思うくらい、地域による違い、根の深い断絶があります。そういう状況のなかで、マリファナの合法化は珍しく国民のコンセンサスが取れて進んでいる。
コウ ノリ:世論的にも、マリファナ合法化に対しては賛成が多いですか?
佐久間さん:成人の65%以上が支持している。ほとんど分断のない唯一の政治イシューと言えると思います。もちろんそこにはアメリカ特有の政治情勢や社会情勢もありますが、ざっくりおおまかに言うとヘルスケアの問題が大きかった。マリファナが悪い物質なのかという問題は長い間燻っていましたが、カリフォルニアで医療使用を合法化した至ったきっかけはHIVです。症状としての痛みを緩和するなど、クオリティ・オブ・ライフの維持向上ができ、緑内障、てんかんの抑制効果もある。カリフォルニアで一定の成功があったので、他の州も徐々にこれに続くようになりました。
コウ ノリ:様々な意見もあると思いますが、ウェルネスとして捉えた場合、そもそも自然なものですし、きちんと知って取り入れることでハッピーになれるなら素晴らしいことだと思います。ただ、産業になった場合、お金や医薬業界との絡みもある。そんななか、アメリカが転換したのはすごいと思いますね。
佐久間さん:依然、国は違法物質としていて、州としては規制しながら商品として扱っているという、アメリカにありがちな矛盾が解決されていません。コロラドが住民投票で全面解禁を決めた背景には、2000年代後半んも 金融危機によりで州や地方自治体の法人税収が減って、財源予算が減ったことがある。コロラドもそれで大打撃を受けて、特に公立学校の運営が圧迫を受けた。マリファナを合法化して税収を得て、公立学校の修復にまわすという条件で実現にこぎつけたんですね。一方、医療マリファナの世界には、ポテンシャルがあふれています。ネズミレベルで癌細胞が大きくなるのを留める実験結果が出ているし、PTSDや神経系の病気アルツハイマー、パーキンソンなどに作用するとも言われています。ただ、そういった臨床実験には莫大な費用がかかる他、様々な問題があってなかなか進まないのですが……。その辺りのことも含めて、本に詳しく書いていますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。
Profile
佐久間裕美子
1973年生まれ。東京育ち。NY在住ライター。慶應大学卒業後、イェール大学で修士号を取得。1988年からNYへ。出版社、通信社などを経て2003年に独立。最新作は『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)。sakumag.com
コウ ノリ
〈サンシャインジュース〉代表。アメリカ、日本、台湾での生活を経て、日本初のコールドプレスジュース専門店をオープン。良質な素材のために、日本各地の農家を訪問している。趣味は持久スポーツ。フルマラソンは毎年サブスリーを達成。