【現世はコーヒー、来世は車】コーヒーチャフの華麗なる変身

元記事:Coffee Chaff is Making its Way Into New Ford Cars - Daily Coffee News [Nick Brown | December 31, 2019]

コーヒーチャフ」とは、コーヒー生豆の表面についている「シルバースキン」とよばれる薄皮が焙煎中に乾燥してはがれ落ちたもののことである。軽くてどこにでも散らばり非常に厄介な代物だが、このチャフを加工し、プラスチックの代わりに車のパーツとして再利用しようという取り組みが生まれている。


米自動車メーカーのフォード Ford とファストフードチェーンのマクドナルドは最近の発表で、マクドナルドで提供するコーヒーの焙煎過程で出たコーヒーチャフを、現行のプラスチック製のパーツの代わりにヘッドランプの一部、内装やボンネット内の部品として利用していくと述べた。

フォードの広報担当者は Daily Coffee News の取材に対し、コーヒーチャフの回収と処理はカナダのオンタリオ州レミントンに拠点を置くバイオマテリアル技術企業であるコンペティティブ・グリーン・テクノロジーズ社 Competitive Green Technologies との協力のもとで行っていくと答えた。
同社は工業用途でのコーヒーチャフ加工技術の可能性を研究する先駆者であり、同オンタリオ州に拠点を置くマクドナルドのコーヒー焙煎工場からまず第一段階として約100万〜150万ポンド(注釈:約450〜680トン)のチャフを回収する予定だと述べ、チャフは通常、焼却または畑への埋め立てなどで処分していたとも付け加えた。


この生分解性副産物、コーヒーチャフは車のパーツになる前に、ゲルフ大学 University of Guelph の研究者によって開発されCGT社(カナダの自動車内装・表皮材製造会社)で商業化・特許を取得した処理を施されていると広報担当者は述べた。この処理は低酸素状況下でチャフを高温にさらし、レジンやプラスチック、他の材料と混合し、ペレット状にするという方法で行われる。この複合材は、ヘッドランプハウジングの部品や他の内装部品、ボンネット内部の部品に使用するための品質仕様に適合しており、フォード製品の20%軽量化と部品形成時に最大25%のエネルギー節約が可能な上、熱に対する性質も現行の素材より格段に優れているということだ。


マクドナルドのグローバル・サステナビリティ部門のシニアディレクター、Ian Olson は「マクドナルドと同様にフォードも廃棄物の削減に力を入れており、目標達成に向けた革新的な解決方法を常に探しています。コーヒーチャフを資源として使う道を共に探ることで、マクドナルドとフォードは循環型経済への参加を進めるために企業がともに歩んでいく方法をより高めていけると信じています」と語った。


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コーヒーチャフは、焙煎経験のある人にとっては嫌〜〜な、そこまではないとしてもかなり厄介な存在なのではないでしょうか!?

コーヒーチャフは焙煎中に乾燥して生豆の表面から剥がれ、風で飛ばされて焙煎機の横または後ろ側につながる「チャフあつめ」の容器に集められます(だいたい掃除機にゴミがたまるイメージです)。このチャフ、薄くて軽くてかさばってふわふわしている(かつお節に似ているとご想像下さい)ので容器があっという間に一杯になってしまうのですが、そのまま放っておくと火がついて燃えだしてしまうのでとても危険なんです。うっかり火がついてボヤ騒ぎに…というロースターを、いくつも知っています(し、私も居合わせたことがあります。ものすごく煙が出て危ないです)。そこで、一日の最後に、焙煎数が多いロースターでは一日のうちに数回掃除しないといけないのですが掃除もとても面倒なんですよね。前述の通り、軽くてふわふわなので、周囲に飛び散って掃除がとても大変です。他に使う用途がない上、焙煎で大量に出るため再利用の方法があったとしても追いつかず、結局廃棄するしか方法がないというロースターがほとんどなのではないでしょうか。

そんなチャフに工業利用の道が、しかも自動車業界に、プラスチックの代替品として!となると感動と興奮を覚えずにはいられません。今までにも堆肥や培養土としての加工(ネスレ日本金澤バイオ× manucoffee)、染め物への利用(福井プレス)は行われていましたが、工業利用、プラスチックの代替(100%ではないですが…)、何より再利用後にごみが出ないというのはとても希望のある話だと思います。もちろん世界中どこでもコーヒーをローストする限りチャフごみは出るわけで、もっと小さなスケールでの再利用方法は引き続き探求していくべきではありますが、チャフという無限の可能性にはこれからも期待できそうです。

junko