(p_-) 夏のスーツも気をつけて
「✖️印、ついたままですよ。」
つい、言ってしまいました。
酷暑が続く今年。早朝、ラッシュの駅のホーム。
都心に向かう電車がひっきりなしに滑り込む時間帯。
私の前を颯爽と言う言葉がピッタリの速さで歩くグレーのパンツスーツの女性。髪を一つにキリッと括って、オデコも綺麗に出しています。お化粧は控えめながらも元気さを感じる色使い。鞄は黒で、PCとA4ファイルが入りそうな、少し厚みのある自立しそうなハードタイプ。3cmヒールも綺麗に磨いてあります。
30代前半かな…(いいなぁ…あ、つい心の声が。)
そんな彼女のジャケットの後ろのベント(スリット)に白色の✖️印が付いているではありませんか!
コレはどうしたものか…。
同じ女として、声をかけても怖がられることはないにせよ、人によっては「大きなお世話よ!」と受け取られかねません。敢えて付けたままにしておくと言う猛者(⁈)がいるという記事も最近読んだばかりだしなぁ。でももしも、彼女がこれからクライアントに会いに向かう途中だったら?もしも今日コレから大事なプレゼンの予定が入っていたら?
想像する事は悪い事ばかりで、こんな「糸」一つで彼女の仕事に影響を及ぼさなければいいなと…。
声をかけたことで、思いもよらない返事が返ってきて(例えば『ほっといてよ!』など)、自分が嫌な思いをしたとしても、それはそれでいいんじゃないかと思えたので、雑踏の中にありつつも彼女の周りに人が居なくなった隙に伝えました。
「✖️印、付いたままですよ。」
彼女はとてもビックリした表情をして私を見たあと素早くジャケットの後ろに右手を回し×印を探り当てました。
その瞬間、「しまった!」という顔になりましたが
コンマ数秒後には最高の笑顔で
「ありがとうございます!」
と言葉を返してくれました。
私は、あぁ、きっと彼女は真っ直ぐに自分を見つめられる人なんだなと思いました。そしてとても素直な人なんだと。
見ず知らずの年上に、いきなり自分のミスを指摘されて笑顔でお礼が言えるなんて、最高に素敵ではないですか。
私が彼女の立場だったら、同じ反応ができたかどうか自信がありません。
たった数秒のやり取りだったけれど彼女のファンになった私は、その日一日が上手くいくように願ったし、これからも元気で幸せになってほしいとさえ
願ってしまうのでした。