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馬さんと、駆けつけて来た牛さん


↑この記事の続きです。

数年前、オーストラリアとニュージーランドに旅行に行った時に、とある牧場に立ち寄りました。

入場料も無く、誰でも柵越しに馬や牛にタッチできる状態のユルユルな牧場でした。
馬を触るのが夢の一つだった私は、コレはチャンスとばかりに柵の向こうの馬さんに声をかけてみました。

「馬さ〜ん!触らせて〜!撫でていい馬さ〜ん!
   こっちに来て〜!お願いしまぁ〜す!」

周囲に人が居ないのを良いことに、全力の日本語です。良いのかな、外国の馬さん相手に日本語…。
そんな全力の日本語を繰り返すこと数回、一頭の艶々の馬さんがコチラに近づいてきてくれました。
来てくれたのは良いのですが、間近で見ると意外と大きいし筋肉は硬そうだし、どこを触ったら良いのか、今になってどうしよう!

ドギマギしていると、馬さんの方から顔を伸ばしてくれて、鼻筋を撫でさせてくれるのでした。

おっかなびっくりさすった私の手をそっと横に外して、

「くすぐったい!」

頭の中にまた声がしました。
前に聞いたムク君の時と同じ感覚です。

クリアにこの声だけがしたのです。
馬さんは照れてしまった様で、厩舎の方にポクポク歩いて行ってしまいました。
すると遥か彼方から、ジャージー種の牛さんが駆けてくるではないですか!なになに!牛って駆けるの?!
どうしよう、どうしよう、止まって〜!

__驚いているうちに牛さん到着。

「ボクも撫でておくれよぉ〜」

また頭の中に声がします。

「みんな馬さんばっかり撫でていくんだよ。
   たまにはボクも撫でておくれよぉ〜。」

えぇ〜⁈牛さんの声がするし、牛さんって撫でて良いのぉ〜⁈って言うか、どこを⁈どこを撫でろって言うのぉ〜⁈やっぱり鼻先で良いの⁈

馬さんの時と同じく、おっかなびっくり鼻の上あたりをペシペシというかツンツンと言うか、なんとも言えない撫で方をした私に牛さんは、

「ヒャハハハ、撫でてもらっちゃった!」

と私の頭の中に気持ちを直接伝えて、また小走りで小高い丘に帰って行くのでした。


「こっちに来て〜!」
と言ったら1頭の馬さんが来てくれたこと、
牛さんが遠くから駆け寄ってきて、自ら鼻先を近づけてきて、また小走りで帰っていったことは、家族も横で見ていました。

でも残念ながら、私の頭の中に響いた馬さんと牛さんの声は、家族には届いていません。


これから先も、動物の声が頭の中に直接届くことがあるかもしれません。
もう二度と無いかもしれません。
それでも、犬さんと馬さんと牛さんの声が直接聞けた私は、とても幸せな人間なんだと思えるのです。