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僕は『ムク』です。

今日も暑さが厳しいところが多いですが、水分補給は足りていますか🍹     足りましたか🍵
喉が渇いたなぁと思う前に、一杯のお茶をどうぞ
                                                長文ですので(〃ω〃)


だいぶ昔観光地に行った時、個人のお土産屋さんに寄りました。
駐車場は砂利を敷き詰めた広々とした場所が取ってあり、緑も花も沢山植えてありました。
どうやら大きなペンションを改装して一階をお土産屋さんにして、二階をご自宅にされているようでした。
広々とした庭の一角に、三角屋根の懐かしい ザ・犬小屋が置いてありました。そしてその小屋の横に一匹のモッサリした黒いワンコがお座りしていました。

次々と駐車場に出入りするお客さんの車をジ〜っと眺めていました。
体毛は長めで、ミックス犬の様でした。大きさはボーダーコリーより少し大きめ。飛びつかれたら、チョット怖いかな…くらいの大きさの子でした。
でもジ〜っと置き物の様に動かないのです。とてもおとなしそう、お年寄りなのかなぁ。

私は犬が好きなので、なんの躊躇いもなく近づきました。

「こんにちは、君はここの子なんだね。毎日警備しててえらいね。お名前は?」

なんて、返事をするはずもないのにしゃがんで一方的に話しかけていました。
目を見ても、眉毛(と言って良いのかわかりませんが…)が長いので、本当はどこを見ているのかわかりませんでした。
すると突然頭の中に

「ムクです」

と声がしました。周りに人はいません。

「⁇」
キョロキョロしながら
「ムク…君?あなたムク君って言うの?ほんと?」

ここまで読んで、あ〜とうとうネタが尽きてこうなったか〜と思った方もいらっしゃいますよね。そう思われても仕方ないです。私も驚いたのですから。

ムク君の長い毛で見えない目をジッと見据えながら

「本当にムク君って言うの?そうなんだ…ありがとね教えてくれて。改めまして、こんにちは。」

なんて話をしていると、背後からお店の女将さんがサンダルを鳴らしてこちらに向かって歩いて来られました。

「あら〜ムク、良かったわね〜遊んでもらって。
この子ね、ムクって言うんですよ。もういいおじいちゃんでね、お客さんは子犬の時は撫でてくれる人もいたんだけど今はもう…ね。
今日は良かったねぇムク〜。」

ちょっとまって…本当にこの子はムク君って名前なんだ。私の頭の中に聞こえてきた「ムクです」
って言うのは、本当にこの子が私に伝えてきたのかもしれない…。
驚きよりも、ちょっとだけ悲しくて、かわいそうになってきてしまって、そっと頭を撫でて心の中で
『話しかけてきてくれてありがとうね。ちゃんと聞こえたよ。ずっと元気でね、バイバイ』
と伝えてからサヨナラをしました。

子犬の時は撫でてくれる人がいた。今はいなくなってしまったんだ…。こんなにおとなしいのに。
きっと昔は
「この犬なんて名前?」
「ムクって言うのよ」
なんてやり取りが幾度となく繰り返されたのだろうな。そしてムク君は自分の名前を覚えて
「ムクです」
って自己紹介する様になったんだろうな。
なんか悲しくって、でもちゃんと聞こえたよって言えたことは良かったのかなって思って
自分の中では大切な思い出になっていました。

でもこの『動物の声が聞こえる出来事』は、もう一度起こるのでした。