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別れというロマンス

先日、久しぶりに友人に会った。半年ぶりだろうか。

そのときの私は日本を離れる直前で、様々な人との別れを痛感せざるを得ない時期だった。

彼は、私が海外にいる間に引っ越す予定なので、帰ってきたときには会えない人である。
頻繁に会う訳ではないけれど”気が向いたときに会えない”という条件は別れを強く感じさせる。

日々の生活は出会いと別れの連続にある。
違うところからやってきた私たちは偶然に出会い、挨拶を交わし、少し話した後いつの間にか互いに違う場所に立っている。

この数年間の出会いと別れなど、大きな時間軸で見たらほんの些細な出来事に過ぎないだろうが、この小さな出会いと別れの連続が今までとこれからを彩るのだと思う。

別れは寂しく、悲しいものだ。
しかし寂しさの中に、相手のこれからを思いやる暖かい気持ちを感じる。
異なるベクトルの感情が織り交ざりとても不思議な気持ちになる。

私は相手に執着ではなく愛着を抱くようなこの感情がとても好きだ。
寂しさの中のあたたかさ、あたたかさの中の寂しさ。

今まで共に過ごした経験が相手の人生を少しでも彩れていたら嬉しいなと思いながら、相手がこれから歩むであろう道に、無事と幸せを祈る。

別れ際になってこのような感情が湧いてくるなんて、皮肉なもんだなと思うと同時に、この瞬間に言いようもないロマンスを感じるのだ。
全く予想できないこれからと、彼も私も知りえないたくさんの出来事、それらすべてに期待と希望を込めたエールを送る。
なんたるロマンスだろうか。

安い居酒屋で酒を飲み、変な歌を歌いながらコンビニで買った安いワインを「安い酒の味がする」とおちゃらけて飲みながら夜の誰もいないキャンパスをゆっくりと歩く。
曇り空の隙間から北斗七星だけが見えている。
互いの織り交ざった感情をこぼしながら家へと向かう。
美しい時間だった。

元気でな、さよーならまたいつか!



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