アパート計画の始まり(2023年末)
今回、この土地の所有者である父は昭和12年生まれ、現在87歳です。
何年も前から、いくつかの建設会社や不動産屋、あるいは銀行などから、相続税対策として賃貸アパートを建てることを提案されていました。賃貸アパートを建てると、土地の所有者はその土地を自由に扱うことができなくなるため、税金が安くなるのです。これまでは特段そういった対策はしてこなかったのですが、昨年の終わりに、他の賃貸物件で管理をお願いしているユーミーらいふグループから相続税の概算などとともにアパート建築の提案があり、では計画を進めてみようかという話になりました。
当初は、一般的な賃貸アパートを想定していましたが、せっかく建てるのであれば、環境に配慮した建物にした方がいいかなと、少し考えてみようと思いました。
そんな時、SNSで自分が住んでいる辻堂に「ちっちゃい辻堂」という賃貸住宅があることを知りました。「100年先の辻堂を想像して その最小単位をつくる」ことを掲げて、自然と寄り添う丁寧な暮らし方など、これからの生き方の可能性を模索し、切り開いていくような姿勢を打ち出した「ちっちゃい辻堂」のあり方に、「こんな賃貸住宅があるのか!」と衝撃を受けました。
「ちっちゃい辻堂」についてネットで読むと、設計を担当した一級建築士の山田貴宏さんが東京の足立区で手がけたアパートについて書いた『畑がついているエコアパートをつくろう』という本を出していることを知って、その本も読んでみました。畑つきエコアパートで住民の人たちがコミュニティを形成して、顔の見える暮らしを実践しているということで、この畑を介した生活も非常に魅力的に感じました。
というのも、実家はもともと兼業農家で、僕が小さい頃は野菜を出荷したりもしていました。しかし、畑は徐々にアパートや駐車場などになり、今は家庭菜園程度の畑があるだけになりました。父が2019年に脳梗塞で倒れたのですが、それからは僕がネットの動画などを見ながら「なんちゃって畑仕事」をしてみました。すると、「結構、畑っていいものだなあ」と感じて、徐々に畑や農というものに興味が出て、友人を介して横浜の方の畑を手伝ったりしてもしました。
そうして、年も押し迫った2023年の12月23日、うちの奥さん(祐子=以後、ゆうさん)と「ちっちゃい辻堂」を見に行ってみました。「ちっちゃい辻堂」はごくごく小さな村のようなしつらえで、一見、どこからが敷地になっているのか分かりづらく、「住居の手前までは見に行っても構わないかな」と思って、その手前で家の方を眺めていると、通り抜けてきた入口の方から若い男の人が「何か用ですか?」と尋ねてきました。
この人こそ、「ちっちゃい辻堂」の大家さんの石井光さんでし。
僕はちょっと慌てながら、環境に配慮するような、そして地域にも役立つような賃貸アパートを建てたいなと考えていて、「ちっちゃい辻堂」を見にきたのだと説明しました。
すると、光さんはちょうど訪ねてくる人を待っている時間だったようで、その場で、いろいろな話をしてくれました。その中で、コミュニティ賃貸を運営する青木純さんの「大家の学校」を受講することを勧められました。
また、街づくりを意識した面白い住宅をつくっているブルースタジオという建築事務所が手がけた賃貸物件もいくつか教えてもらいました。近隣では、藤沢の鵠ノ杜舎、茅ヶ崎の高砂ビレッジ、TSUBANAといった物件を見てみると参考になるだろうということで、帰ってから調べてみると、すべてブルースタジオがユーミーらいふグループの丸山アーバンという会社と一緒に作ったものでした。
そこで、ユーミーさんにその話をして、これらの物件を見学させてもらえないかとお願いしたところ、年明けに見学ツアーを組んでくれることになりました。これが2023年末の話で、ここからコミュニティ賃貸アパートの計画が始まりました。
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