ロシアの神風ドローン『Гортензия7(ガルテインジア7)』
はじめに
2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻では、ロシア・ウクライナ双方が大量の無人航空機を軍事・民生用途を問わず積極的に使用し、結果、ドローンは現代戦の様相を大きく変える一因となったと言われている。
ロシアのウクライナ侵攻においては、マルチコプターによる爆発物の投下やスイッチブレード、FPVドローンによる自爆攻撃など、無人航空機の攻撃的な使用方法が際立ち、特に低価格で開発されたFPVドローンがレオパルド戦車を破壊する映像は衝撃であった。
当レポートでは、ロシア・ウクライナで使用されているFPVドローンに焦点を絞り、機体の特徴や部品の構成など判明した情報を随時記載していきたいと考えている。
Гортензия 7(ガルテインジア 7)とは
ロシアの国産ドローンで、「Гортензия7 ガルテインジア7(アサガオ)」の名を冠し、公式HPでは工業規模で前線に送られた初の量産型FPV無人機として記載されている。組み立てはすべてロシア国内で行われ、偵察や爆発物の投下、自爆ドローンとして使用可能であり、既に数千機以上の納入実績があるとされている。
スペックは以下の通りである
・ペイロード 最大2kg
・伝送距離 最大6km
・ペイロード無しでの飛行時間は25分〜30分
・ペイロード有りでの飛行時間は6〜8分
※以下公式HPから抜粋
部品の構成
【フレーム】
GEPRC MARK4 7-inch
フレームはGEPRCのMARK4 7インチフレームに酷似しており、本来はフリースタイル飛行やGoProなどのアクションカムを搭載してFPV撮影するための用途が主である。
【フライトコントローラー & ESC】
SpeedyBee F405 V3 BLS 50A 30x30 FC&ESC Stack
フライトコントローラーとESCはSpeedyBee製で、多くのオンラインショップで入手できるため、調達も容易である。FC・ESCのセットで59.99ドルと安く、Bluetoothでスマートフォンと接続することで、PCがない環境でもアプリで機体の調整が可能だ。
【モーター】
ブラシレスモーター 1800kv X2806.5
メーカーは不明だが、画像では「1800kv」及び「X2806.5」の表記が確認できる。メーカーやモーター名の記載はなく、これについて詳細は不明だ。
【受信機】
TBS CROSSFIRE NANO RX
電波法上、日本での使用は認められていないが、海外ではよく使われているロングレンジに特化した受信機である。
【VTX】
RUSH 1.3GHz Analog video transmitter
アンテナの形状が1.3Ghz帯のアナログVTXと酷似しており、1.3GHz帯で映像を送信している可能性が高い。1.3Ghz帯は遠くに電波が届きやすく障害物に強いというメリットがある一方、GPSに干渉しやすいというデメリットもある。ただしГортензия 7(ヒドランジア 7)はGPSを搭載していないため、問題ないのであろう。
【カメラ】
CADDXFPV Ratel2 Analog Camera
カメラ上部に「CADDXFPV」のロゴが確認でき、基盤を覆うシェルの形状からして、CADDXFPVのRatelカメラの可能性が高い。Ratelカメラは夜でも鮮明な映像を映し出すことができ、クリアな描画が特徴である。基盤を覆うシェルは水滴や粉塵が基盤に侵入するのを防ぎ、衝撃に対する耐性も備えている。
【プロペラ】
DALPROP FOLD F7
Dalpropが販売するこの7インチのプロペラは、コンパクトに折りたたむことが可能で、羽をそれぞれ交換できる仕様なので、一体型のプロペラに比べてコストの面で優れている。
まとめ
Гортензия 7(ガルテインジア 7)を構成する部品はネットショップで購入でき、大半が中国製である。性能や機能は一般的な7インチ機と大差ないが、夜間に対応したRatelカメラや1.3GHzのアナログVTX、折りたたむことができる7インチプロペラなど、戦地での運用を想定した部品の選定にこだわりが感じられる機体である。
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