見出し画像

第15回 坂口恭平の絵画展で、本人の歌を聴く

 あっ、これは、なんか、すごく、面白い気分になったぞ!!

 と、思ったその気持ちを、なんとかして外部に定着させたい、というのが、書く行為の根本にある姿勢。うまく書くのに成功すると、その文章を読み返すたびに、その「面白い気分」をまた呼び起こせる。書くに限らず、描く、踊る、みんな突き詰めるとこういうことで、研究する、もそう。いや、でも全ての書くが該当するわけじゃない。けども、創造的な気分で書くものについては、当てはまる。

2019/12/15 日記 

 また、朝起きられず。夜遅いのがいけない。前日、ひとりもつ鍋で、珍しくビールを二缶空けたからな。いつもどおり朝の公園に寄り、少しジャグリングし、(日課として7個ボールを投げ、ディアボロをやっている)コワーキングスペースにバイクを停め、今日は坂口恭平さんのライブ、もとい絵画の個展を観に、新橋へ。

 駅から10分ぐらい歩いたところ、小さな雑居ビルの3階でやっていた。入り口のポスターが、かわいいニャンコちゃん。

画像1


 白い壁に、だだっと作品が並んでいる。坂口さんも、ほれ、という感じで在廊している。なんかね、距離が近いのが最高にいい。ややハスキーな声もなんだか落ち着く。

 坂口恭平というのは、最近僕がものすごく影響を受けている人物。この日記を再開したのも、最近やや僕の文章量が多いのも、全てこの人のせいである。セーター編んでたり、靴作ってたり、ギター作ってたり、歌歌ってたり、本書いてたり、料理してたり、なんでもやっちゃう人で、見てるとこっちもなんかやりたくなってくるんだもん。建築学科で勉強していたが、いわゆる「設計」にはむしろ反発をして、課題で「自分が貯水タンクに住む」という映像を提出してみたり、卒業論文で路上生活者の家を撮影して写真集のようなものを出したり、動く家=モバイルハウス、というのを作ってみたり、今の建築そのもののあり方を疑っている人。その底には伊達じゃない探究心がある。むしろ建築について真剣に考えている。

 でも別に建築の人、というイメージはなくて(笑)絵も描くし、歌も歌うし(アルバム出てて、Apple Musicで聴けます。『隕石たち』の「葉桜」が大好き。)本もいっぱい出すし(最新作『まとまらない人』は坂口恭平入門として最適。僕の今んとこ一番好きな本は『独立国家のつくり方』)、電話番号を公開し、「いのっちの電話」という、電話相談もやっている。
 でも本来、「何かがしたい」というのはこういう形で発露すべきなんじゃないか、そもそもやらないとわかんないわけだし、というふうにも見える。

 で、今回は、在廊しながら、来場者のために歌をうたってた。

 「あ、無料だし、写真を撮っても、動画を撮っても、録音しても、なんでも好きにしてください、楽しんでってくださいね」

 と言い、30分ほど弾き語る。絵についても

「好きなだけ写真撮って、持ち帰ってくださいね。あの、iPhoneでうまく撮ったら、拡大してプリントしてキャンバスに貼れるんじゃないかと思う(笑)」

 とか、とにかく、自分の制作意欲をくい、くい、と、人が喜ぶように曲げていく人なのである。彼自身の欲を満たすことが、なんだか他人の喜びに変わっていく、というのが、ありありと目に見える人。

 こういうのいいよなぁー、と、こっちもエネルギーをもらえる。力もらったわあ、と思いながら、アトリエを去り、新橋駅へ。本屋かどこか寄ろうかと思ったが、帰って黙々と自分のことでもやるか、と東海道線で横浜に戻り、コワーキングスペースへ。なんかね、こういう人と出会えただけでも、面白い人生だな、と思えるのである。そして、何かつくるぞー、という意欲に今、包まれているのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?