「また、古着を好きになってもいいですか♡」
なんだか今は、古着バブルと言われているらしい。
今から20年ちょっと前、独身時代に古着をいくつか持っていたことがあった。
このころ、私の実家のある地域にユニクロができて、いつも「ゆにくろ」なのか「うにきゅろ」なのか読み方がわからなくなっていたぐらい。
そして店内は、無地のトレーナーばかりがたくさんあるような気がして好きではなかった。
私は人と変わった洋服を控えめに着たいと思っていたから、古着やリメイクバッグなどを好んで買っていた。
ある時、ふらっと寄ったユニクロでワゴンセールで300円になっていたライトグレーのジッパーニットを価格に目がくらんで購入。
その日の夜にその服を着て同級生と居酒屋のカウンターで待ち合わせをしたら、同級生が全く同じ服を着て来店。
「ねぇ。それってもしかしてユニクロで300円じゃなかった?」とお互い確認。
寒いしニットの中は下着だしどちらも脱げないでいたら、さらに居酒屋の大将が
「おねえちゃんたち、おそろいの服着て、今日はどっかでなんかイベントとかあったのかい?」
ととどめを刺しに(笑)
今の私なら
「やだー、大将ちがうのよー。ユニクロのセール品がたまたまかぶっちゃったのぉ♪」
とゲラゲラ笑って話して、そのノリで生中を頼むだろうに。
あの頃は若くて「たまたま洋服が被っただけ・・・」と二人で下向いてしまって、大将にも、聞いてまずかったなみたいな気持ちにさせてしまったと思う。
みんなと同じ服を着るって、こういう出来事があるとものすごくこっぱずかしくなるからいやだという気持ちが強くなってしまう。
古着は今でもそうだけど、私たちの親の年代やその上の世代(年齢でいうと70歳以上)は、穴が開いたジーパンや襟元がずたずたのトレーナーを着ていたら
「あらやんだことぉ。おめーそんな穴だらけの洋服着てぇ。新しい洋服着る金もねぇのか」
と騙されておこずかいをくれるか、
「みっともないから、そんな服着ないでくれ」
と懇願されるかのどちらかのタイプに分かれるパターンが多いのではないだろうか?
私は20数年前に、春先にちょうど良い腕に卍の刺繍が入ったミリタリー系のショートコートのようなものを着ていたら、親に怒られた。
「おめぇ、卍なんか書いてある洋服なんか着てんでねぇ!」
ナチスのイメージが強い両親だったみたい。
おまけに、
「そんな服着てたら警察に目をつけられる」まで言われた。
またある時は、ヘンプ柄やガネーシャの模様の入った古布を部屋に飾ったら、やばい宗教とやばい薬に手を出すんじゃないかと思ったらしく、祖母に気持ち悪がられて勝手に畳まれてしまったり。
そんなこともあったけど、結局結婚して子育てしてとなれば、持っていた古着は動きづらいし子供に汚されたりすることがストレスになってしまった。
だがら、気に入って買った古着や古布を「使い続けてさらに良い風合いにする」ことよりも、
「安価で動きやすい服やダメになったら処分しやすいもの」に切り替えるほうを選んだため、これまでのものはすべて処分してしまった。
自然と、好みではなかったユニクロやしまむらなどの服に。
子供がスポーツを本格的に始めてからは、練習場や大会でサポートしやすいように年中ジャージ下に上は大会記念Tシャツ、スポーツブランドのパーカーみたいな恰好ですごした。
ファッション雑誌もいつの間にか見なくなって、たまに古着屋さんに行っても、独特のにおいが苦手な子供たちは早く帰りたいと騒ぐし、ユニクロやしまむらの値段の3倍ぐらいのトレーナーは今の私には着る資格もないし、今の私には無駄な出費になるだけという考えになっていた。
ところが、
「古着屋は臭いし、汚れている服にお金を出す意味が分からない。GU、ユニクロ、SHEIN、WEGO、レトロガールでいい」
と言っていた娘二人が、それぞれ一人暮らしを始めた後にたまに会うと、私好みのデザインの服を着ていたりする。
その服どうしたの?ときけば、実は古着だと。
いい感じのアメリカのアメフトチームのトレーナーとか、レトロ感たっぷりの柄物シャツとか着ちゃってさ。
うらやましい。
「ほー。飽きたらおあがりください」とお願いはしたけれど。
・・・・・でも、うらやましいっていう感情があることに気が付いたと同時に、子育てが終わった流れで手術をして、療養期間もあって、ずいぶん当たり障りのない全身無地の洋服ばかりきて、傷口に響かないウエストがゴムのズボンやゆったりした洋服ばかり着ている間に、すっかり顔も気持ちも老け込んでいたことにも気が付いてしまった。
もう、何にも考えないで好きな服を着ていいんだよな。
ほしいと思ったものにお金かけてもいいんだよな。
そういう思いが沸き上がってきた。
また独身の頃のようにこれだと思う古着を気が済むまで選んでみたい。
そう思い始めると、自然とyoutubeも古着というワードを入れて検索するようになった。
同世代で古着屋さん巡りの動画を投稿しているさらばの森田さんとか見ていると、全力で楽しんでいるように見えて理想的。
何十万、何百万という古着ではなくても、数千円でも「これ!」というものがあれば迷わず買いたい。
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