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友だちのこと

私には、中学からの親友がいる。
とてもかわいくて、頭は悪かっけど、性格は優しい。
いつでも笑顔で、いつでも私に付いてきて、いつでも私を大切にしてくれた。
大好きなともだち。そして、・・・父子家庭だった。

私は、彼女としか話さなかった。もともとは自閉症だったので。
彼女が休むと、誰とも話さなかった。そういう変わった人間だった。

彼女はいつも何にも考えないような顔をしながら、自分のことがわからない、と常に言っていた。

意味はよくわからなかったけれど、わたしはいつでも、彼女について思うことを説明していた。
明るくて、よく笑って、優しくて、家でお母さんの代わりにご飯作って、とてもじゃないけれど、私にはできない、男子にもモテるし、友達を裏切らないし、大切な友達だよ、本当に幸せになって欲しいと。

彼女が口癖で言っていたのが
「おかあさんがいないから、人とどう接していいのかわからない」という。

どういう意味だろう。おかあさんはいなくても、あなたはあなたのままでいいと思う、と言っていた。

うちは両親と姉妹、全部揃っていた家族。

母はいたけれど、それほど性格も似てないし、母は社交的、外に出るのが好きで、私は外に出るのが嫌いなタイプ。

学校が終わると、必ず彼女の家に行って、お菓子食べたり音楽聞いたりして
遊んでいた。

それから、中学を卒業して高校生になった、高校は違う高校。

家も近所だったから、高校生になっても毎日のように約束をするでもなく、会っては話していた。

彼女は高校から変わっていった。おとうさんしかいないからなのか、グレはじめた。性格は変わらない。外側だけ。
タバコを吸って、髪を茶髪に染めて、お化粧をして学校をさぼるようになった。

私は厳しい私立の女子校に通っていたので、彼女の変化には気づいたけれど、いつもと同じように遊んでいた。

中学の友だちとばったり会うことも多かった、すると、「なんであんな不良になったかおり(ともだち)と一緒にいるの?会わないほうが良いよ」って助言してくるやつが多かった。変わってないよ、と私は言い続けたけどね。

見た感じ、私たちは外見が変わってしまったから。
でも、わたしにとって、かおりは一番の友だちだった。

高校2年の頃、かおりが急に「お母さんと会うことになった」と言ってきた。「え?そうなの?かおりに似てるのかなぁ」なんて言ってはみたけど
彼女が本当に会いたいのか、会いたくないのかが、わからなかった。
だから、何も聞かなかった。

一緒に渋谷のマルキューであたしが選んだワンピースとカーディガンを着て、かおりはお母さんに会いに行った。

その日の夜、電話が来て、
電話の向こうで、泣いている、かおりが。
「なんか言われたの?」と聞いたら、
「お母さんは再婚して、幸せそうだった。それから、お母さんは私に似てた、それでね、お母さんはよく笑って、よく話す人だったの」といいながら泣いていた。
「まるでかおりと一緒だね」と私が言ったら、彼女は号泣したんだ。

「私、このまま明るく生きていいんだ、自分がわからなかったけど、ジュディ(私の名前)みたいになりたくてそばにいたけど、おかあさんは、そっくりだった、だから私はこのままでいいんだ、自分の性格がはっきりわかった。おかあさんに、可愛いお洋服って褒められた、本当にいつもありがとう」
笑いながら泣いていた、いつも笑っているかおりが。

はっとした。お母さんの性格を知らなくて、自分が迷うことがあるのか?と。
一緒に暮らしているから、たいしたことない、母親なんて、とおもうけれど、いっしょにいないって、こんなに重要で、こんなに苦しむことなんだって。

かおりは自分を見つけた。それから、かおりは、自分から自由になったように見えた。みるみる自然にいきていくことになった。

知らなかったけれど、ショックだった。
簡単に離婚をする人たち、わかれたとしても産みの親には会わせてほしい。
どんな人かこどもに見せてあげてほしい。

どれだけ、自分を見失って真っ暗な道を手探りでいきていかなければいけないのか、赤の他人の友だちに、「ジュディならどうする?どう思う?」といつも聞いてくる。
自分に自信がないからだったんだ、と思った。

かおりは、その後若いうちに結婚して、今は子育て中。
すっきりして良いままをしている。

私はつくづく、思った。両親が大人になるまで元気で、そして離婚しないことってかなり幸せなことなんだって。そこだけは、取り敢えず感謝だ。

幸せはなにか、失くしてきづくものなんだ、って。
母親という見本がいて、女の子が育っていくって言うこと。

母子家庭の男の子も、お父さん像が見えなくて悩んでいるのだろうな、って
思うようになった。

是非、会わせてあげてくださいね、悪口だけは言わないでね。

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