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仕返し 1/2

一番古い嫌な思い出。いまでも忘れられないこと。

小学校6年の時、私は結構小さいので小4ぐらいによく見られていた。
顔も童顔。
とても仲良くしている友達がいた。
毎日のようにその子の家に遊びに行っていた。
彼女の家は、都営の、団地? 低所得者、片親などが住める
集合住宅で、いつも親がいなくて、好きなように遊べたからだ。
都営住宅の、最上階14Fに住んでいた。

いつものように、遊んだ後、帰ろうと14Fからエレベーターに乗った。
すると、すぐ後ろから、20代ぐらいの背の高い男性が一緒に乗りこんできた。
何も考えずに乗っていたら、急に、その男が、私の口を押えて、
お尻をスカートの上からやたらと触ってきた。
小学校の私は恐怖で、何をしているのか、何をしたいのか、わからないまま
目の前に迫る男の顔を驚いてみていた。
男はなぜか「はぁはぁ、はぁはぁ」と喘いでいる。
私は殺されるのか?このまま、お尻を触っている意味が分からず、
どうなるんだ、恐怖だけで、瞬きもせず男の顔をずっと見ていた。
叫ぶ気にもならず、何がしたいのか、私を知っているのか?など、子どもながらに痴漢とは知らず、考えていた。
で、1Fについて扉が開くと、男は、ぱっと私を突き飛ばして、
走って逃げて行ったのである。私は思い切り背中を打って倒れた。

そして怖かった。なんなんだ?え?どういうこと?と。

「痴漢」という人種がいて、触ることに特化した変態がいるということをそののちに知った。ということは、あの男だ。
痴漢が多発している、という話を聞いて、あいつだ、あいつが痴漢だ。
家族にも誰にも言えなかった。その時の私は、まさか痴漢が小学生を触るとも思っていなかったからだ。電車の中だけの話なのかと。
道で露出狂を見たことがあるが、裸で寒くないのか、と思っていたぐらい、こどもだった。
家族に話して友だちの家に行くな、と言われるのも嫌だったからだ。その子と仲良くしていることを親は嫌がっていた。

しばらくその子の家にはいかずに、帰りには公園であそぼ、ということになって、公園で遊ぶことにした。
そして何気なく、その子には同じ階にはどんな人が住んでいるの?と聞いてみた。
驚いたのが、案外、世帯全員のことを知っていた。同じ学校の子もいればどんな状況で都営に住んでいるのか、彼女は知っていたのだ。
私は都営がどういう住居なのかも知らず、普通の一軒家に育ったので、
お父さんがいない、国から支援を受けて寡婦手当、ひとり親でかなりの保護下にあることを知った。
だから、当時は、都営住宅は、エアコンのような贅沢品は置いてはいけない、車も買ってはいけない、など住む条件はうるさいようだった。

私はなにげなく、痴漢男の風貌をこんな人いる?と聞いてみた。
顔はしっかりと見ていて焼き付いていたからだ。
痴漢に遭ったことはその子にも言っていなかった。
私の母は、あそこに住んでいる人は、普通じゃないから、あまり遊びに行ってほしくない、と言っていたからだ。離婚自体が普通じゃない時代だった。

だから、私は、そいつに「仕返し」をしてやろうと、決心していた。
何も知らなかったので抵抗できなかったが、あんな怖い思いをして、
そのまま逃げられて、時間が経てばたつほど、痴漢だと知ってからは、
徐々に怒りがわいてきていたのだ。こどもだと思ってばかにしやがって。と。覚えていろ、絶対にやり返してやる、と。

警察に訴えても何にもならないだろうと、人に頼るより嫌な思いは私がそいつにやり返したかった。今から思うとかなり危険なことだ。
私は どこへいっても童顔で、まだ低学年かと思った、と言われるのがなんか、癪に触っていて、バカにするな、と常に思っていたからかもしれない。

彼女は、「ああ、知ってる、背の高い青白い人でしょ?」と。
「うん、こないだ、エレベータで見たんだけど、どっかで見たことがあるな、とおもって」と嘘をついた。
彼女は言った「あいつ、10Fに住んでいて、いい歳なのに、お母さんと2人暮らしで働いてもいないらしい、昼間は外にも出ないから、何か病気だとかきいたけど、気持ち悪いんだよね、なんだかさぁ」と言った。
私は彼の情報を手に入れた。名前も部屋の号数も。

そして、その後中学生になった。
友だちは、そのまま区立中学へ行ったが私は受験して私立中学。
それでもその子のことは大好きで、毎日会っては遊んでいた。
そして、あの痴漢にいつか仕返しをしてやる、と言う気持ちはずっと変わらなかった。
何度か見かけた。
5~6時ぐらいに少し出かけて電車に乗るのも知っていた。
今思うと、そのくらいの電車が混むから、痴漢しに行ってたのかも、と思う。痴漢だから。

ある日、仕返しの決行日を決めた。
やり方も、そしてもし気づかれたときの対応も、
全部決めて、実行に移そうと思った。
中2の冬だった。痴漢に遭ってから2年は経っていた。
あいつは、私を忘れているだろう、と。

~つづく~

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