万年反抗期だった大家族の次女が、家を出る。

彼とのふたり暮らしをはじめるにあたり、
28年間お世話になった実家をついに離れることになった。

いまの気持ちはというと、率直に寂しい。それはもうめちゃくちゃに。

家で過ごす時間が何よりも嫌いで、離れたくて仕方なかった、若干ハタチのわたしからは想定できない感覚に、一周まわって笑えてくる。

あの頃のわたしは、いまとは別の意味で寂しかった。


姉兄とはいまいち話が合わず、下の弟妹はまだ学生で、それぞれ仲が良かった。両親との向き合い方がわからなくて、というか素直に甘えることができなくて、大家族にいながらも、いつもどこか孤独だった。
「自分に居場所なんてない」と決め、寂しさを誤魔化すように外での時間を優先し、帰宅はいつも日付が変わる頃。「家に居る時間をできるだけ減らしたい」と、口癖のように繰り返した。


考え方が大きく変わったのは、結婚を機に姉が家を出たこと。
長女として妹弟をまとめ、両親を支えてきてた頼れる存在が居なくなることは、想像以上に大きな影響で「今度は自分がしっかりしなきゃ」と思うきっかけになった。

それからは、これまでを取り返すように、できる限りのことをした。

休みの日は一番に起きて、掃除・洗濯。もちろん、サボってきた分、上手くいくことばかりじゃない。そのたびに母の偉大さを知った。
ニガテだった料理にも挑戦した。栄養バランスを気にかけつつ献立をたて、買い出しに行き、キッチンに立つ。食後は食器洗いと片付け。料理は何段階にも手間がかかることを恥ずかしながら、初めて知った。それでも頑張れたのは、みんなが美味しいと言って食べてくれる姿が嬉しかったから。母が作ってくれた夕飯を「要らない」と突っぱねていた過去を反省したかったから。

自分から「家族」に参加することで共通の話題も増え、家で過ごす時間を楽しく思いはじめた。

長い長いステイホームを、うんざりしながらも乗り越えられているのは、家族が居てくれたからだと心から感謝している。



「ろくに親孝行をしてこなかったから、もう少し家に居たい」
彼から同棲の提案を受けたとき、こう答えた。
文句ひとつ言わずに、ワガママな意見を受け入れてくれた彼には感謝しかない。

あれから2年。
もちろん、親孝行に終わりはないけれど。
いろんなタイミングが重なって、この秋に家を出ることに決めた。


片道20分かかるスーパーまでの道のりを、母と弟と歩いたこと
二児のママとなった相変わらずたくましい姉
妹とすっぴんのまま行く近所のショッピングモール
土砂降りの朝に駅まで送ってくれる兄との時間
無口だけど子ども思いな父がいつもたばこを吸う踊り場
たまにしか顔を合わさない、けどもかわいい弟たち

いま抱く寂しさは「=家族に対する愛おしさ」なんだと思い知る。
そんな大切なことに気付けたタイミングで、新しい一歩を踏み出せて、本当に嬉しい。これからも感謝と、反省を忘れずに過ごしていきたい。

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