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ガス製品の現地技術研修で発見した、不正ビジネス

マレーシアで現地の人と一緒に、現地の家に2年間暮らした経験を通じて、ペンキの塗り方、すき間の埋め方、釘の打ち方、板の貼り方など、マレーシアの住宅設備・機器の業者見えない部分の手抜き材料の節約不正が実に多いことを知りました。

それを久しぶりに感じたのが、2014年にサラワク州クチン冷媒ガスの技術移転を行うため、エアコンの古いガスを回収し、日本製の新型ガスと入れ替えた時です。

1987年に国際協定が結ばれた「モントリオール議定書」では、2020年までにフロンガスの全廃が定められたものの、世界には環境負荷の高い冷媒ガスが主流の国々も多く、国家の電力使用総量の65%がエアコン、冷蔵庫という「冷却」に用いられている熱帯のマレーシアも同様です(アラブ首長国連邦は80%の電力がエアコン、冷蔵庫用)。

オゾン層を破壊しないガスを充填するには、古いガスを回収しなければならず、この作業は非常に危険なため、我々は事前に現地でガス業者と現地ゼネコンの担当者を集め、週末に現地の新築オフィスビルのエアコン20台を借りて、技術研修を実施しました。

研修に使用したのは、現地で中華系企業総代理店として販売するアメリカ製の安価なエアコンブランド「YORK」で、我々は一台一台、慎重にガスを取り出してボンベに移し替えて、ガス漏れがないか正確に検量を進めていったところ…「数字がおかしい!」との声が。

なんと、全てのエアコンの冷媒が、規定量以下でした。

漏れは検知されず、使用中に漏れることもありえないのに、量が合わないとなれば、設置時に「ちょろまかし」で故意に量を減らしていた可能性が大きく、日本の専門業者に「規定量以下の冷媒ガスを充填した場合の稼働状態」を確認したところ、①低温で「強」の設定でも涼しくならない、②夏だとぬるい強風が出るだけ、③エアコンに余計な負担がかかって買い替えサイクルが短くなる可能性がある、との回答でした。

つまり、取付け時に消費者には確認も交換もできない高額な冷媒ガス意図的に減らして「安売り」を行い、消費者の疑問には「マレーシアは暑いから」とごまかし、暑さに耐えられなくなれば買い替えを勧めるという不正行為に根差したビジネスモデルです。

エアコンを担当した地元企業に問い合わせて、検量データとともに、この、環境問題以前の根本的な問題を指摘したところ、無言で電話を切られました。



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