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第8回全国学生演劇祭 インタビューシリーズvol.7


昨年の第8回全国学生演劇祭を振り返るインタビューシリーズ。
今回は、東京学生演劇祭推薦の推薦団体“劇団二進数”で作・演出をつとめた樋口龍成さんへのインタビュー記事です。


Q1.なぜ学生演劇祭に参加しようと思われたのでしょうか?


樋口:コロナ禍の2年間は、やりたい演劇が思うようにできなくて、昨年(2022年)の2月にやろうとしていた公演もコロナで中止になってしまいました。その作品は、社会人になるかどうかの時期だからこそできる演劇で、もうこのままやらないでもいいんじゃないかという話も出たんですが、劇団二進数を続ける選択をするなら、劇団のキャリアを作るために賞レースに出そうということで、学生演劇祭に参加することを決めました。


──実際、『脇役人生の転機』は、東京学生演劇祭で大賞を受賞するとともに、2022年佐藤佐吉優秀演出賞も受賞しましたね。


樋口:嬉しいかぎりです。東京学生演劇祭の会場が王子小劇場だったので、ありがたいことにW受賞というかたちになりました。


──学生演劇祭のことは以前から知っていましたか?


樋口:サークルの先輩が東京学生演劇祭で大賞を取っていたので、よく知っていました。ただ、演劇を評価して順位付けするというのは僕たちの価値観になかったというのと、学生演劇祭はいろいろなタイプの演劇が集まる“異種格闘技戦”のようなイメージがあったので、僕たちのなかでは大きな挑戦になりましたね。



Q2.立ち上げてからどれくらいの団体になりますか?


樋口:劇団二進数は2018年に立ち上げた劇団です。慶應大学に「創像工房 in front of.」という演劇サークルがあって、そこで今後も本気で演劇をしたいというメンバーを集めて結成しました。僕も含めてそのうち4人はまだ学生ですが、卒業してからも劇団活動は続けていくつもりです。


Q3.卒業後は、演劇とどう関わっていこうとしていますか?


樋口:「いずれみんなが帰ってくる場所」に、劇団二進数がなればいいと思っています。他の劇団に所属していた時期がある人、事務所に入っている人、養成所に通っている人、メンバーはそれぞれが別の方向で活動をしているから、そこで得てきたものを二進数で発揮できるようになったら最高ですね。


Q4.注目している(影響を受けた)演劇団体や個人、アーティストがいれば教えて下さい。


樋口:良くも悪くもルーツやカルチャーの違うメンバーが集まっているので、劇団として意識している方はいないと思います。強いて言うならば、我々自身の日常会話や、普段突然始まるメンバー同士の笑わせ合いがそのまま作品に繋がることもあります。


Q5.演劇というメディアを通じて、やりたいことや実現したいことを教えてください。


樋口:メンバーとは、「いつか本多劇場に立ちたいね」という話をしています。下北沢の演劇界隈だとそこで公演を打てるのは強いと思うので。


──10年代初頭あたりまでは「小劇場すごろく」という言い方もされていました。今はそういったわかりやすい目標を立てにくいのかなとも思います。


樋口:「すごろく」はわからないんですけど、客席数を徐々に増やしてお客さんを動員できるようにしようという動きはやっぱり大きいですね。初回、二回目までは自分たちが作りたいものをやっていたからけっこうめちゃくちゃで、集客もうまくいきませんでした。そこから三回目の公演で集客に力を入れ始めて、300人くらいお客さんを呼べたのが僕たちのなかで自信につながって。


──ちなみに、ロールモデルにできると思える団体はいますか?


樋口:僕たちは男6人だから、TEAM NACSはかなり意識しています(笑)。TEAM NACSのメンバーのなかに、地元に帰って農家をやりながら演劇活動も続けている方がいて、それぞれの方向に農家があってもいいんだと思うと、ちょっと夢があるなと思います。


──みんなでひとつの目標に向かいつつ、それぞれが自分の活動もしているのが理想的な状態?


樋口:そうですね。


──樋口さんにとって演劇の魅力はどういったところにあるのでしょうか?


樋口:演劇はとてもコスパが悪いと思うんですよね。映画であればロングランがやりやすいけど、演劇はたいてい数日で終わってしまいます。ただ、僕はそこが魅力だと思っていて、毎回、違うものが生まれていくところが好きで演劇を続けています。


──その場で生まれるエネルギーが演劇にはありますよね。


樋口:成長するにつれて一緒にやる仲間が増えていく感じが、僕の中で「自分本位」から「周り本位」に変わったきっかけだったので、それもすごくいいなと思っています。僕は個人的に音楽もやっていて、それは表現したいことを自由にできるんですけど、演劇は仲間が面白いと言ってくれないと出来ないので。


──音楽は自分の表現を突き詰める媒体で、演劇はむしろお客さんに楽しんでもらうことを優先している?


樋口:お客さんに楽しんでもらうのが、一番だと思っています。


Q6.学生劇団の可能性、あるいは課題について思うことがあれば教えてください。


樋口:学生劇団だからこそ、外部の小屋を借りて公演を打ってみたら、いろいろと良くしてもらえる、ということはあるかもしれません。オメガ東京や王子小劇場でやってみて、それを肌で感じました。


──学生のうちから学外で公演をしてみるのは、良い手段かもしれませんね。


樋口:それと、創像工房は慶應のサークルなので基本的に学内でやるんですけど、この2年間でコロナの制限が緩和されてきた時期でも、学内公演は大学の許可が下りなかったから、外部でやる機会が増えているのかなと思います。別名義の団体を立ち上げて学外で公演を打つ後輩もいたり、ちょっと活動の視野が広がったのはコロナのせいでもあるし、そのおかげでもあるなと思いました。


Q7.今後の学生演劇祭に期待することはありますか?


樋口:東京学生演劇祭で賞をいただくことができて、それが作品を見ていただくためのきっかけになればいいなと思っています。そうやって、今後につながるような演劇祭になることを期待しています!


※2023年3月にインタビューを実施した記事です。


劇団二進数「脇役人生の転機」

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