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身近な人に不満を抱えた人必読!『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 - Leadership and Self-deception: Getting out of the box を再読したはなし

本を読み終わって、ぱっと顔を上げたら今まで同じものを見ていたのに全く違った景色に見えるという経験はあるだろうか。長期の旅行から帰ってきて家に帰ってくるまでのいつも見慣れた道の景色が違って見えるような、そんな経験だ。

わたしは8年前にこの本"Leadership and Self-Deception: Getting Out of the Box"(日本語版:自分の小さな「箱」から脱出する方法)を読み終えた後、まさにそんな体験をした。

この本を読み終わった次の日、当時勤めていた会社に出勤すると、嫌だなぁと思っていた上司に対する嫌な感情がすっと消えていたのだ。そして嫌いだった上司に対して、この人も自分と同じような感情を持った一人の人間なんだな、と感じることができたのだ。

この本がどんな本かと言われれば非常に難しい。会社でも応用できるからビジネス書だけど、テクニックが記載されたハウツー本でもない。家庭でも応用できるから、ビジネス書とも言い切れない。心理学の本でもないし、スピリチュアルな本でもない。家庭、会社、社会での人間関係を改善することに応用できるジャンル分けが難しい本だ。

自分が箱に入ってる限り相手の直して欲しいところは絶対に無くならないという衝撃

当時読んでまず衝撃を受けたのは、自分が「箱」に入った状態だと、ある人の嫌だ、直して欲しい思ってる部分が、絶対になくならないということだ。むしろ自分の正当性を証明するために相手の嫌なところこそ「必要」になってしまうというのだ。

たとえばこの本では、ケイトといつも帰りが遅い18才の息子ブライアンの例が挙げられていた。帰りが遅いことを不満に思っているケイトはブライアンに車を貸してと言われる。貸したくなかったので、10時30分までだったらと、到底守れなさそうな門限を条件に貸すことを承諾する。「分かった」といって鍵とって出て行くブライアン。家で待っている間、ケイトは悶々としながらブライアンを待っている。そして、ブライアンに対して夫と不満を言ってるその時、外でタイヤの音をたててブライアンが帰ってきたのだった。時計を見ると10時29分。

そこで、ケイトはとてもがっかりした感情があった、というのだ。ブライアンが約束を守ったのにだ。

まさか!と思った。相手に直して欲しいと思ってるはずなのになぜ?と思うだろう。だけど読めば読むほど納得してしまった。確かに、自分にも嫌だなと思っている相手がそれに従った行動をすると、「やっぱりね」という感情がさらに強くなり(=自己正当化)、相手が良いことをしてもそれは全く目に入ってこないという経験、あるなと思った。

そして、次に衝撃を受けたのは、自分が「箱」の中に入ると、人を「人」ではなく「物」としてみてしまうという点。例えば、嫌な人のことを悪く言ってる時、その人を感情や自分と同じような要求を持った人だとみているだろうか。

この本で挙げられていたのは、自分が飛行機で席を余分に使ってるという場面。自分は広々と使っていたいから、他の人が席を探している中、新聞を読んでるフリをして知らんぷりをする。ここで他の乗客を「物」として見ているだろうか、それとも自分と同じように要求や感情を持った「人」として見ているだろうか。「物」として見ていることは明らかだろう。ここで、席を必要としている人に対して席を譲るべきだという自分の道徳心を裏切ることで箱に入る。箱に入ると人を物として見るというのだ。

いやいやまさか、私は人を物となんか思ってないよと言いたいところだが、自分にもそういう気持ちあるなと、気付かされたのだった。

再読してさらなる学びがあった

そして今回8年ぶりにこの本を再読した。今回私にとって非常に大きな学びとなった点は、相手に問題があることは自分の問題がないことにはならないということだ。当たり前のことだけど、箱に入った状態のまま正当化をしている時に、人は自分に問題があるという点には気づけない。

これを意識するようになったら、最近夫に対して文句を言ってたり、自分はこんなに大変なのにと思っていた気持ちを改めることができた。自分の問題に目を向けることができるようになったのだ。再読して反省したことによって、自分でも箱から出た状態で接することができてるなと我ながら思えている。

リーダーシップに不可欠な要素=主体的になる

また、昔読んだ時はこの本の題名に"Leadership"と含まれていることがピンとこなかった。けど今回読んでみて、この本で書かれていることってリーダーには不可欠な要素だなと気付かされた。

人間なら誰しも陥ってしまう箱に入るという行為。箱に入ってしまうと、自分を正当化することが必要になるから、自分は悪くないし、他人が問題を直さないといけなくなる。すると問題は絶対になくならない。

けど、自分が箱に入っていることに気付く=自分の問題に気付く。すると、どうしてあの人は変わらないの?ではなく自分が変わらないとと思える。自分が変わることって主体的になることの第一歩だから、まさに自然とリーダーシップマインドが身につく入門的の本としても最適だなと思った。

そして、このリーダーシップ能力が必要じゃない人っていないよね。と思った。

全ての人間関係を改善するヒントになる本

この本を特に誰にすすめるとしたら特に、身近な人に不満を感じている人だろう。それは、夫や妻や子供に対してかもしれないし、会社の上司や同僚や後輩に対してかもしれない。この本を読んだ後、箱の存在に気付くことで自分の問題に気づくことができるだろう。そして、少なからず人間関係を改善するのに役立つはずだ。

え?自分の問題に気付く?いやいや、自分が直すんじゃなくて、相手に問題があるから、直すべきは私の嫌いなあいつの方なんだよ!と思った方こそぜひ読んでほしい。その考えを改めることができるだろう。

ちなみに、このアービンジャーインスティチュートが出している、The Anatomy of Peace: Resolving the Heart of Conflictも昔読んだけどこちらもおすすめだ。わたしはこの本を読んだ時、世の中の人がこの本を読んだら、世界平和も夢じゃない!?と錯覚させられた。そのくらい深い本だった。また機会があったら再読しようと思っている。


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