インボイスその後



これまでの記事

これまでの執筆した、インボイス、電子帳簿保存法関連の記事です。2021年から、3年間このテーマで執筆してきたのですが、今回で一区切りつけようと思います。

インボイス制度導入で何が変わったのか

制度が複雑、実務が追いつかない・・・・そんな話は、マイナンバー制度導入、軽減税率制度導入の際にもあったと思います。今回、皆さんの周辺での対応はどうでしょうか。
領収書や請求書を受け取る立場からすると、いつの間にか、T+13桁の番号が印刷され始めたな、これがないと経費精算に支障があるな、そんな印象のかたもいらっしゃるのではないかと思います。
実は、このT+13桁の番号は、「適格請求書発行事業者の登録番号」というもので、この番号を取得できるのは、消費税法上の課税事業者だけです。
ここで、国税庁の報道発表資料をご紹介したいと思います。

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0024005-100.pdf

この資料で着目していただきたいのは、資料のP9です。引用すると次のとおりです。

令和5年分の個人事業者の消費税の申告件数は、197 万 2 千件(対前 年比+86.9%)で、前年分から 91 万 7 千件増加しました。 また、申告納税額についても、6,850 億円(同+9.1%)となっており、前年分から 増加しました。

令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について (報道発表資料)(国税用)

申告件数が対前年比で90%近く伸びており、税収も記載のとおり伸びています。これは、インボイス制度導入により大きく変わった点として掲げてよいのではないでしょうか。

ヨーロッパにおけるVAT GAP問題

ちょっとここで一旦話が飛びます。
いきなり出てきたVATというのは、「付加価値税」を意味しており、まさに日本でいうところの消費税に相当します。ヨーロッパでは、理論的に算出されたこの「付加価値税」と、実際に納税された「付加価値税」に開きがあり、これが問題視されてきました。

https://taxation-customs.ec.europa.eu/system/files/2023-10/VAT%20Gap%20Report%202023_0.pdf

ここで活躍するのが、私が上の記事でさわりを紹介したデジタルインボイスになります。
ハンガリーでは、小売店と税務署をオンラインでつなぐことにより、このVAT GAPの解消に成功しつつあるとのことです。

デジタルインボイスの流通にあたっては、規制当局が取引すべてを監視するCTCモデル(Continuous Transaction Controls)というものがあり、VAT GAPの解消に取り組みたい欧州諸国での採用が相次いでいるようです

それで日本はどうなるのか

上の記事で、日本におけるデジタルインボイスについて簡単に解説しています。現状、日本におけるデジタルインボイス(ペポルネットワークにおけるデジタルインボイス)は、事業者がやり取りするモデルを採用しており、当局が介在する余地はないものとなっています。
国税庁が公表している「「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」では、「課税・徴収事務の効率化・高度化」という目的もあるのですが、ペポルを活用した「事業者の業務のデジタル化」という目的も掲げられています。

まとめ

ヨーロッパでは、VAT GAPの解消のためにデジタルインボイスを導入する機運が高まっていますが、これを気に、業務効率化を推進しようという動きもあるようです。
日本では、デジタルインボイスの推進について、直接税務当局が関わる、という体制ではないですが、同じように、業務の効率化を志向しているものだと思います。
資源の限られた日本、生産年齢人口が減少していく日本に取って、バックオフィス業務の効率化は必然だと考えています。

補足

若干今回は専門的過ぎる部分があったかもしれません。
中小企業の事業者向けに、インボイス、デジタルインボイスを解説した資料を、JIIMA(公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会)のHPにも掲載していますので、よろしければこちらもあわせてご参照ください。

https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/pdf/Invoice_book_v1.0.pdf


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?