改正電子帳簿保存法のその後


中小企業診断士の荘子です。

本職では、ITで税理士・公認会計士を支援する仕事をしています。

さて、前々回の記事で、2022年の電子帳簿保存法改正について簡単にご紹介しました。

この記事では、「帳簿」を電子保存する際の要件緩和についてご紹介していました。

実は、その要件緩和より大きなインパクトがある制度改正が現在行われています。

それが、「電子取引データ」の電子保存必須化です。

「電子取引データ」の電子保存必須化

コロナ禍を踏まえて、領収書、請求書を電子(PDF)でやりとりするケースが増えていますが、こうした電子データを「電子のまま」保存することが義務化されたということです。対象は法人税、所得税の課税事業者です。つまり、法人、個人ですね。

もともと電子であるデータを電子のまま保存することに、インパクトがあるの?と思われるかもしれません。

こうした電子データは、税務調査の際に、遅滞なく提示することが求められます。そのため、単に電子データのまま保存するだけではなく、その内容(取引年月日、取引先、取引金額)で検索できる状態にして保存する必要があります。

請求書等のPDFファイルを開けば、その中を文字列検索することで内容は識別できるかもしれませんが、これでは要件を満たしません。

調査の際にPDFファイルを一つずつ開いて確認するわけにはいきません。

「電子取引データ」を保存するための要件

ではどうすればいいか?ですが、具体的には次の3つの方法があります。

  • 専用のシステムを導入する

  • PDFのファイル名に取引年月日、取引先、取引金額を付す(OSの検索機能で検索)。

  • PDFのファイル名と、その取引年月日、取引先、取引金額を記録した検索簿を別途作成する。

<2022年3月13日追記>
肝心なことを聞き漏らしていましたが、2021年までは、上記の要件に加えて「書面に出力して保存」することが認められていました。印刷するのって、一見めんどくさそうですが、他の書類が「紙」である前提においては、それらとまとめることができるし、そもそも上記のようなシステム上の担保が不要です。なので、笑い話ではありませんが、今回の「電子データ保存必須化」に伴い、「電子で来た場合、保存が面倒だから紙に戻してくれ」と取引先に要請するケースがあったとか・・・。

システムを導入するには、現場からどうファイルを収集すべきか業務フローを検討する必要があります。それ以外の方法は、そもそも面倒です。

さらにいうと、タイムスタンプを付すとか、正当な理由がない訂正・削除を防止する規定を備え付けるといった要件もあります。

大企業、中小企業、個人事業者すべてに影響があるこの法改正ですが、周知されているとはいい違い状況でした。私も、要件を整理し、システム改訂を行う傍ら(本業です)、情報発信をしてきたところですが、果たして、個人事業者の皆さんまでもがこの内容を理解し、準備できているのかと不安になりました。

そこへきて、2022年12月6日の日経新聞に「領収書の電子保存、義務化2年猶予 経理デジタル化遅れ」と題する記事が掲載されました。その記事を読んだ時は、「そりゃそうだろうな」と妙な納得感がありました。

その後、2022年12月24日に閣議決定された税制改正大綱では、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備」が示されました。実質的には「電子取引データ」保存義務化について2年間の経過期間を設けるものでした。ちなみに「宥恕」というのは「寛大な心でゆるすこと」なので、決して「猶予」ではないですね。

かねてから国税庁は「経過措置はない」とアナウンスしていたところからすると、大きな方針転換となります。

とはいえ、来年秋(2023年10月)の適格請求書発行発行方式の義務化の際には、電子インボイスの普及もスコープに入っていると思われますので、2年間じっくり構えてるわけにはいかない状況と考えられます。



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