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【美容室向け】物件探しの基礎知識(無料版)

美容室のテナント探しをする上で知っておきたい基礎知識をご紹介します。


[デザインに影響する]美容室の間口幅員

間口・幅員とは「テナント空間の横幅」です。美容室における間口の重要性は、主にその視認性、アクセスのしやすさ、そして店舗のデザインやブランドイメージの表現に影響を及ぼします。以下のポイントで間口の重要性を詳しく解説します。

1.視認性の向上

間口が広い美容室は、通行人に対して高い視認性を持ちます。大きな窓や開放的な入り口は、店内の活気やスタイルを外から伝えることができ、潜在的な顧客の興味を引くことが可能です。特に競争が激しい商業エリアにおいては、目を引く間口は顧客を引き込む重要な要素となります。特に美容室の場合、入店前に店の雰囲気で利用を判断されてしまう傾向があります。

(参考事例)VAAB by SHINTARO TAKEDA DESIGN OFFICE
線路沿いの一棟建てのヘアサロン。建物のデザインと内装のデザインが調和していて目を引く事例。

©SHINTARO TAKEDA DESIGN OFFICE (愛知) VAAB

線路を走る電車内からはメインファサードと共に大開口から室内の活動や賑わいを感じられます。
室内は賑やかさの演出、きめ細やかなサービスを提供するために、間仕切り壁が少ないオープンな空間としました。
(設計者によるHP解説文より抜粋)

https://tkd-design.jp/works/VAAB

2.アクセスのしやすさ

間口が広いと、入店しやすくなります。しかし、開放的すぎると、サービスを受けているときに姿が露わになってしまうため、利用者の羞恥心を刺激してしまうことがあります。身を預け、見た目に関わる髪型を任せるという点のおいて「ある程度積極的な開放性」は街ゆく人たちの視線を受けることも安心感につながって入りやすくなります。こうしたコントロールされた入りやすい開放的な間口は、顧客にとってプラスの印象を与えることができます。
また、バリアフリー設計を含めたアクセスのしやすさも、間口のデザインを考える上で重要なポイントです。10年、20年と同じ場所で事業を展開されたい場合は確実に訪れる将来の高齢化社会に向けて意識しておくとよいでしょう。

(参考事例)teeta by SOHEI NAKANISHI DESIGN
間口の大きな角地路面店。ヘアサロンとして見えすぎないように、カフェのような大カウンターが店の半分を占める。カウンターの先にコンサルティングスペースやシャンプーブースが隠れている。丁寧にコントロールされたデザイン例。

©SOHEI NAKANISHI DESIGN (東京) teeta

3.デザインとブランドイメージの表現

間口は美容室のデザインやブランドイメージを最初に伝える場所です。視認性の向上と共に美容室のコンセプトや特色が露わになっていくため、デザインが重要になってきます。独自性をアピールし、顧客の記憶に残りやすくなります。例えば、ナチュラル、インダストリアル、ロリータなどターゲット客層が求める世界観を演出し、間口からその雰囲気を感じさせる工夫による事業コンセプトを表現することができます。

(参考事例)AFLOAT pd+KOBE smart Salon by TAKARA SPACE DESIGN
「高級リゾートホテルのような落ち着ける贅沢なひとときをヘアサロンでも」をテーマにしているヘアサロン。ショップファサードにリゾートを表現した植栽アートとインテリアグリーンが際立つデザイン。ウェルカムドリンクなどを提供され、くつろげるラウンジ空間が目立つようにデザインされている事例。

©TAKARA SPACE DESIGN(大阪)AFLOAT pd+KOBE smart Salon

4.間口幅員のポイント

  • 視認性とアクセシビリティは空間デザインの一貫性によりコントロール:店内のデザインやコンセプトと間口のデザインが一致していることが重要です。ブランドイメージを強化するためには、一貫性のあるデザインが求められます。

  • ブランドデザインを看板より空間で見せる:店舗名を大きく看板で見せるより、インテリア空間を見せることで、ブランドとサービスの質を表現する方法が主流です。

  • 最低でもシャンプーブース幅+廊下は確保すること:レイアウトを検討する上で、必要最低限の幅というものがあります。あまりにも狭い幅では厳しい局面を迎える可能性もあります。専門家と相談しながら店舗を探すと具体的な助言してもらえます。

[設備計画に影響する]建物の設備インフラ

美容室はその他店舗と比べて水の利用量が多く、給湯性能も要求され、ドライヤーやオシボリ保温器といった電気容量にも注意して計画する必要があります。以下にそのポイントを整理して解説します。

1.給水

給水設備は①水圧、②給水管位置がとても重要です。

①水圧は都市部の地上1階~3階(4階くらいまで対応可能といわれている)テナントにおいては上水管圧力(道路下の本管圧力)で対応する場合が多いです。隣の区画に厨房設備などを含むレストランなどがあるときは注意しましょう。
5階建てマンションや大型施設の物件の場合などは最上階に貯水槽があり、重力圧力により供給される給水設備のケースもあります。定期メンテナンスが法的に求められているため、定期的に休業することになる日もあるかもしれません。

②給水管位置はテナントに接続されている建物からの給水接続位置です。その位置によって配管経路を計画し重要となるプランニングに影響が出ます。

2.給湯(ガス・電気)

温かい水は、シャンプーやトリートメントを快適に行うために必須です。給湯の設備は①燃料、②給湯システムが重要になります。

①燃料にはガスが一般的です。ガスはLPガスと都市ガスがあり、それぞれ対応する給湯器が違うため、どちらのガスタイプなのか、エリアと建物毎に異なるので確認するとよいでしょう。
給湯容量は給湯するお湯が沸かして貯めておく「貯湯方式」なのか、「瞬間湯沸かし方式」でその都度お湯を沸かして利用する方法なのかが大きな違いとなります。

②給湯システム
給湯器の容量や設置場所を適切に計画することで、サロン全体で安定した給湯を確保できます。将来的なサロンの経営に直結する設備であるため、詳しい専門家と相談することをオススメします。適切な方式の選定とコストや効果のバランスを考えて立案するとよいでしょう。

3.排水

排水設備は全体レイアウトに影響する重要な設備となります。排水には①位置、②排水径が重要となります。

①排水位置はシャンプー台やバックオフィスの洗濯機などと接続させるための重要なテナント調査項目となります。排水管を這わすためには勾配をつける必要があります。そのため排水管計画によっては床を一段あげたりすることが考えられます。

②排水径は汚水と雑排水によって大きさが異なり、排水容量を決める重要な情報となります。ひとことで排水管といっても過去テナントの汚水管であった場合は他の区画のトイレとつながっているため汚臭などが問題になる可能性もあります。

4.設計と導入のポイント

  • 専門家との相談:設備の設計や導入にあたっては、詳しいデザイン事務所や設備業者と相談することが重要です。適切なシステムの選択や、コストと効果のバランスを考慮した計画を立てることができます。

  • 将来の拡張性を考慮:将来的なサロンの拡張やサービス内容の変更に対応できるよう、柔軟性を持たせた設計を心がけることが望ましいです。

  • 顧客の快適さを優先:給水設備は顧客に直接影響するため、快適さや使いやすさを最優先に考えることが重要です。

まとめ

デザインや設備については、詳しいデザイン事務所に相談するのがおすすめです。ブランディングやお店のコンセプトをしっかり考え、相談する際に意見交換すると良いでしょう。事業は投資であるが故、専門家と一緒にテナントの条件に合った方向で考えていくことが効果を高めるコツといえます。

より詳しく基礎知識を得たい方は以下のリンクをご参照ください。


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