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[BKK通信01] バンコク渋滞事情 車が貼り付く

車が道に貼り付いたように動かない

世界的に有名な「渋滞」である。世界で一番ひどいとも言われている(メキシコシティが一番ひどくてバンコクは2番という説もある)。もうイヤになるぐらい動かない。タイ語では「ロット・チット」ロット()チット(貼り付く)という。文字通り、車が道に貼り付いたように動かない。

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ここの渋滞の特徴は「ぴたっと停まって動かない」ことだ。日本のようにずるずる進むということがない。これはもう想像を絶する。

交差点の信号の間隔が、日本は20秒だが、ここでは1分。しかも一度に四方向の一方向だけが青になるという仕組みだ。その信号が1分づつだからその4倍、4分かかる。だから車の流れもどーっとかぴたっとかどちらかである。

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(上の写真では、左下からの信号だけが、それ以外の道路は全て。日本では通常、右上の車線も青になる)

信号は手動である

さらに「信号は手動」である。いや、本当に。車が多い時間帯には交通巡査が手で操作する。交差点には警官の派出所があり、そこの配電盤で信号を操作する。広域で管制する、などという発想はまったくない。各信号で各自が勝手に操作するので余計に渋滞が激しくなる。朝夕の通勤時間帯が過ぎて自動信号になると車が流れ出したりするのだ。

なぜ手動かというと、バンコクは雨が多い。しかも土地が湿地帯で地面を掘るとすぐ水が出てきてしまうゼロメートル地帯だ。そのため、電線を引いても、地下に埋めてもすぐ電線が腐食してしまう。そのため広域管制が出来ないんだ、とタイの友人は言う。さすがに今ではそんなことはないと思うけどな。

また、自動管制にすると青信号でどんどん交差点内に車が突っ込んできてしまい、次の信号になった車がまた突っ込んできてぐちゃぐちゃになるという事態になるらしい。これは分かる。バンコクではそうなるだろうなあ。

ただ、それだけではないと私はにらんでいる。タイではコンピュータの電子システムより人件費の方が安い。また過剰に人数が多い警察官の仕事を奪うことも難しいだろう。そのため遅々として広域自動管制が進まないのだろう。

運転マナーが悪い

さらに運転マナーが最悪だ。運転が自己チューでまったく他人のことを考えない。ちょとでも隙間があると割り込んでくる。我先にと突っ込んでくるので余計渋滞する。元々三車線だったところにどんどん突っ込んできて終いには五車線になっていたりする。それが出口で急に二車線になって余計ぐちゃぐちゃになる。

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マナーが悪いので事故もしょっちゅう起きる。またモーターサイ(バイクタクシー)がちょろちょろ車を縫って走っていてそれがまた事故を起こす。後ろに乗っている客はヘルメット無しの横座りだから事故ると悲惨だ。これもまた渋滞に拍車を掛ける。

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道の造りもめちゃくちゃ

道の造りもひどい。右折車線がなくて先でUターンしてから左折する(タイの交通システムは日本と同じ左側通行である)。中央車線を走っているとUターンした車が突然中央車線右から割り込んでくる。道路のメンテナンスが悪いのでそこら中に穴が開いている。雨が降ると道路が冠水して穴が見えなくなるので、溝にはまるのが恐い車は徐行せざるをえない。それでまた渋滞する。

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バンコクは運河の町である。バンコクの街全体がゼロメートル地帯で、土地が低いからそこら中に運河が走っている(アジアのベニスと言われているのだ)。そのため道路の脇道(ソイ)がすべて運河で行き止まりになる。つまり「魚の骨」のような形になっているわけだ。したがって抜け道がない。で渋滞する。その橋がまた数が少なくて細くて古い。それでまた渋滞する。

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降れば土砂降り

バンコクの雨は尋常ではない。生温い風が吹くと突然どかーっと雨が降ってくる。一雨来るとまず路地から水があふれ始める。それがみるみるうちに大通りまであふれ出る。そしてあっという間に道路は川となり水浸しになる。こうなるともうだめだ。

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空は真っ暗で雨脚が激しいので車のスピードが落ちる。水が出てきて濁流になるので余計遅くなる。道の両側に水がたまるので車は中央を走ろうとして混雑する。水が出ると穴ぼこや溝が見えなくなる。へたをすると工事中の大きな穴が開いているから端は通りたくない。そのうち必ず交差点で事故が起きる。雨が激しい内はお巡りさんも出てこないから、渋滞が余計激しくなる。ブロックごとの渋滞があっという間に全都市に広がる。車は渋滞の中に取り残されて全く動かなくなる。土砂降りの日、駐車場から外の道路に出るのに1時間半かかったことがある。いや、まじで(笑)。

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産まれそうだ!

その渋滞の中で一気に人気になったラジオ局がある。24時間渋滞交通情報専門局だ。自前のヘリコプターで逐一道路状況を放送する。そのほか車の中からの視聴者の生の携帯報告も流している。先日、臨月で赤ちゃんが生まれそうな妊婦を乗せたタクシーが渋滞にはまって動かなくなってしまった。陣痛がだんだん近くなってくる。切羽詰まったタクシーから放送局にSOSの電話が入った。放送局では近くの車に医者がいないかどうかを呼びかけると同時に警察に連絡。すぐ近くの警察署までラジオでタクシーを誘導。そこに局のヘリコプターを派遣し、その場から妊婦をヘリコプターで病院へ運び込んだ。出産の模様は刻々病院からラジオで実況中継され、無事男の子が産まれたときにはバンコク中の車の中から拍手がおこった。めでたし、めでたし。

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ついに日本が乗り出した

この渋滞に対して、ついに日本政府が乗り出した。2018年から4年計画でJICAが「渋滞緩和」プロジェクトを推進している。

日本はバンコク都の渋滞緩和に資する協力を開始し、面的な交通管制が可能である日本式信号システムをパイロットプロジェクト対象地域に導入するとともに、中期的にバンコク都全体へ拡張する計画を策定します。さらに交通渋滞の原因の一つと言われる警察官の手動操作による非効率な信号機操作を改善するため、信号機操作のためのガイドラインを作成します。これら一連の活動を通じてバンコク都の渋滞緩和を目指します。(JICAプロジェクト)

やっぱり「警察官の手動操作」が渋滞の一因だったんだな。試験的に日本の信号システムを導入した地区では渋滞が解消されたそうだ。やれば出来る。日本の交通システムがどれだけバンコクの渋滞解消に役立つのか、見守りたい。




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