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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#インフラ

ノルウェー、透明な世界から日本の未来を考える

依頼論説 屋井鉄雄 一財)運輸総合研究所所長 東京工業大学特命教授 東京医科歯科大学特任教授 発端は土木学会のビッグピクチャー検討時にあった。 「ノルウェーでは長期インフラ計画が事業規模と共に決定され、1100㎞に及ぶフィヨルド縦貫道路等が建設中である」との話を聞いた。当時、筆者はノルウェーでは国や地域の計画体系が備わり、万事公論に付して決めるから可能なのだろうと推察した。それは必ずしも間違いではなかったが、透明感の高い大自然に留まらず、“隠すことのない高い透明性”、それ

大学教員が「橋の日」に感じたこと

穴見 健吾 論説委員 芝浦工業大学 8月4日は「橋の日」である。 鋼橋の耐久性(疲労)について研究している筆者の分野では例年「橋に関するシンポジウム」が行われているが、本年は所用により宮崎県にいた。車での移動中に一般の方々が参加する「橋の日イベント」に遭遇した。このイベントは普段使っている橋に感謝を込めて橋の清掃等も行うもので今年が37回目となる。このような橋に限らず社会基盤施設に対する理解・興味を深めてもらう行事は「橋の日」「土木の日」に限らず多く行われている。国土交通

人口減少時代の水道とフューチャーデザイン

浅見 真理 論説委員 国立保健医療科学院 令和4年4月、全国1718市町村(東京23区を除く)の半数以上にあたる885市町村が「過疎地域」になったことが総務省から発表されました。 前年から65の市町村が追加され、初めて全国の半数を超えたのです。令和2年の国勢調査の結果に基づくもので、人口の減少率など、指定要件の見直しはあったものの、昭和45年の「過疎法」施行以来初めてのことになります。 人口減少は様々な社会基盤の前提に影響を及ぼします。特に水道関連では、従量制で水道料金

文系的知識習得の勧め

戸塚奈津子 論説委員 アジア開発銀行 中央・西アジア局 20数年間、途上国の開発援助のインフラ業務に携わる中で、土木技術者が経済、国際情勢、法律、社会学、歴史などのエンジニアリング以外の情報に広く目を向け、文系の知識、興味を持つことの重要性を強く感じてきた。社会配慮は言うまでもなく、インフラ整備は経済との関係無しに論ずることはできないし、開発援助の動向は世界経済と政治に影響されることもある。判断を誤らぬよう、「PPP」と小さな政府、「質の高いインフラ」と援助新興国の動向、な